榊原英資氏の「日本はいずれ円高になる」発言

モーニングショーを見ていたらミスター円と呼ばれた榊原英資さんが出ていた。榊原さんは日本は円安になるだろうが黒田総裁が交代すれば円高に振れますよと豪語していた。本当なのかなと思いながら話を聞いた。予想なのかそうなるべきだということなのかが判然としないからだ。






榊原英資さんは

  • 金利差が原因であり国力の差ではない
  • 黒田総裁の後任は現在の副総裁ということに大方決まっている
  • 総裁が変われば金利が上がり日本は円高傾向になるだろう
  • 金利が上がれば国債費も上がるがそれは財務省が心配しているだけで問題はない
  • 日本人は円高を歓迎しなければならない


と主張していた。

玉川透氏は「やはり国力の差なのでは?」と食い下がっていたのだが経済にはあまり詳しくないようでそれ以上詰め寄ることはできなかった。ただ榊原さんは「日本は成熟国なので弱くなったとは思わない」とあくまでも主観的な説明に徹していた。

この線でゆくと現在ドルを買っておいて黒田総裁の任期が終わり「榊原さんが指名した」総裁が就任した後にドルを売ればいいのではないかと思える。例えば一ドル128円で買って150円で売れば22円の「儲け」になる。手数料がかかるのでまるまる儲けにはならないが「片道1円」くらいの手数料であれば大した額ではないだろう。この状態では円の価値が毀損しているとも言えるので一概には喜べない。だがここで円は再び上昇を始めれば最終的には円預金の価値も毀損せず「大儲け」ができることになる。

この話が本当なのかなと疑問に思うのは榊原さんの言動には独特のクセがあるからだ。以前にも後継日銀総裁人事を「発令」した前歴がある。

2017年にも黒田さんは任期の途中で退任して雨宮副総裁にバトンタッチすればいいのではないかと言う独特の見解を表明していた。なんらかの理由で黒田さんを好ましくないと考えており雨宮さんを推したいのだろう。この記事を書いたブルームバーグは「市場にはそんな声は広がっていない」とわざわざ付け加えている。つまり予測というよりは政治的な発言だ。

榊原さんはなんらかの理由でリフレ派の黒田さんよりも雨宮副総裁の方を好ましいと考えているようだ。だから「総裁は雨宮さんであるべきだ」という代わりに「いずれ総裁は雨宮さんになるだろう」と言っているのである。

玉川徹さんは榊原さんを論破できなかったがIMFは違う見解を出している。IMFは先進国の中で日本だけファンダメンタルズ(基礎条件)が違っているので日銀は現在の政策を続けるべきだと言っている。ファンダメンタルズの中身への言及はない。つまり、基礎国力はあるが活力が下がっていることを言っているのか、経済的な意味での国力が下がっていると言っているのかはわからない。

いずれにせよIMFの見解に従うと金利差は縮小せず、したがって円安はこのまま進むことになる。ファンダメンタルズが自動的に金融政策で調整されることはない。これを動かすのはむしろ政策の方だがアベノミクスの三本の矢は金融政策以外は機能しなかった。また岸田政権も補正予算を組むことにしたのだが「産業構造を転換する」というような大胆なものではなく低所得者対策のような限定的なものになりそうである。つまりIMFの指摘するファンダメンタルズはこのまま推移することになる可能性が高い。

では市場はどう予測しているのか。ロイターに観測記事があった。市場関係者の見立てでは「現在130円近辺で方向性が失われた」ということのようだ。だいたい現在の諸条件は全て織り込まれてしまっている。中にはレジームチェンジ(完全に潮目が変わったという意味なのだろう)なので次の方向が決まるまではただ漂うだけだし方向が決まれば一気にどちらかに動くだろうということを言う人もいる。おそらくこのレジームチェンジは日本ではなく欧米の動向で決まるのだろう。世界情勢が悪化すれば景気は減速し「日本にとっての危機」は遠ざかる。

日本の国力が低下したと感じるのはおそらく海外と比較した時だろう。つまりワイドショーを見ている人たちにはあまり関係がない。だから榊原さんが「大丈夫なのだ」といえば「ああよかった」と安心ができる。榊原さんは普段から日本は円高になるべきだと考えているようだ。だがそれを主張ではなく予測として表現してしまう。つまり「〜べきだ」ではなく「〜だろう」と言ってしまうのだ。黒田総裁はリフレ派に推される形で日銀総裁になった。当然積極的な財政支出は円安方向へのドライバーになる。だが榊原さんは日本は円高になるべきだと主張している。つまり最初から黒田総裁に共感する立場ではなかったのではないかと思う。

市場関係者の思惑や国民・企業の動向とは関係なく金融政策の議論が進んでいることは確かだが、その意図はよくわからない。おそらく岸田政権は岸田政権で何かを考えているのだろう。日銀審議委員の構成は徐々に変わり始めている。

こうした関係者の思惑が錯綜する中でキャピタルフライトを心配する声がある。ロイターの記事なのだがタイトルが「コラム:本当の円安危機、1000兆円の家計が外貨買いに走る時に到来か=佐々木融氏」と刺激的なためついつい「眉唾記事だろう」と思ってしまう。だが言っていることは真っ当だ。

かつては片道3円の手数料でドルを買わなければならなかったのだが現在はドル調達コストが下がっている。実際に調べてみるとわかるが都市銀行でもネットで外貨を購入すると割安になることがある。地銀などは依然「片道3円」の手数料を取ることが多いのだがそうでないところも増えているのだ。このドルは預金保護の対象にはなっていないが円を経由せずにそのままドルで引き出すこともできる。

ただしこうした知識は今の所「YouTubeなどで細々と伝えられるだけ」で多くの国民は郵便局にお金を預けておけば大丈夫だと考えている。このためキャピタルフライトが起こりにくいのである。佐々木さんはこう書いている。

今は深夜でもスマートフォーンを使って簡単に、かつかなりの低コストでドルや他の外貨を買うことができる。外国株投資もオンラインでいつでも可能だ。「ガソリンや食料価格の高騰をヘッジするため、あるいは海外旅行に行くため、外貨の保有を増やしておいた方が良い」という発想が広まった時、家計が行動を起こす時のハードルは、以前に比べるとかなり低くなっている。そうした行動を取るように「推奨」するユーチューバーは既に数多く存在する。

コラム:本当の円安危機、1000兆円の家計が外貨買いに走る時に到来か=佐々木融氏

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“榊原英資氏の「日本はいずれ円高になる」発言” への1件の返信

  1. なぜドル高でドルを買いドル安でドルを売ればいいのか より:

    榊原英資さんは

    金利差が原因であり国力の差ではない
    黒田総裁の後任は現在の副総裁ということに大方決まっている
    総裁が変われば金利が上がり日本は円高傾向になるだろう
    金利が上がれば国債費も上がるがそれは財務省が心配しているだけで問題はない
    日本人は円高を歓迎しなければならない

    と主張していた。

    玉川透氏は「やはり国力の差なのでは?」と食い下がっていたのだが経済にはあまり詳しくないようでそれ以上詰め寄ることはできなかった。ただ榊原さんは「日本は成熟国なので弱くなったとは思わない」とあくまでも主観的な説明に徹していた。

    この線でゆくと現在ドルを買っておいて黒田総裁の任期が終わり「榊原さんが指名した」総裁が就任した後にドルを売ればいいのではないかと思える。

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