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国産鶏肉を使用するローソンの「からあげクン」の様子見値上げ

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ローソンのからあげクンが5月31日から値上げされる。1986年4月15日に発売されてから初の値上げだそうだ。値上げ幅は200円から220円と20円の値上げ(税抜き)になる。食料を輸入に頼る日本で食料品価格が上がるのは当たり前だと思われるかもしれないのだが実はローソンのからあげクンは2014年から国産の鶏胸肉を使っているそうだ。これまで値上げできなかったものを「様子見」で値上げしようとしているのかもしれないと感じた。これが成功すれば追随する動きも出てくるかもしれないが人件費がかかる商売にはネガティブな影響が出るだろう。例えば町の弁当屋などがそれに当たる。

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このニュースを見た時は漠然と「輸入品や食料品の価格が上がるとは悲しいことだ」と感じた。だが読んでゆくうちにそれだけではない事情もあるかもしれないなと考えるようになった。「唐揚げ」の需要が近年高まっているからだ。ちなみにからあげクンはニチレイがローソンに提供している。

からあげクンが値上げになる前にも冷凍鶏肉製品の値段は上がっていた。2021年11月には2022年2月から冷凍唐揚げの値段が上がるというニュースがあった。味の素食品は昨今の原材料費、エネルギー費、包材費などの製造コスト、物流費の上昇により、一部製品の当社出荷価格と容量改定を実施せざるを得ない状況 になったと説明していた。これはウクライナ危機前の発表だった。

ローソンの発表も梱包材や輸送コストの値上げを吸収できなくなったとしており同じような理由で説明されている。ただしその中身についての詳細は明らかになっていない。ローソンのからあげクンは円安の影響は受けないはずだ。なぜならば鶏肉も小麦粉も国産品を使っているからである。しかし「諸事情」により値段が上がる。

例えば国産鶏肉の価格について食品産業新聞社の4月の予測を調べてみた。国内の需要は増えもせず減りもせずという状況のようだ。気候によって増体(ニワトリの成長のことだろう)に影響があったとは書かれているがそれほど顕著というわけでもない。ただ輸入品の供給は先細っているらしい。鶏肉の需要が世界的に増しており生産地は価格に対して強気の態度を取っているようだ。

輸入品の値上がりが続くと「その不足分を国産で」ということになる。そこで国産品の需要が増えるというような背景もあるようである。このように輸入品の価格などが複雑に絡むため外からどの値段が適正なのかを見極めるのは非常に難しい。

ただし唐揚げは需要が伸びており「儲けられるチャンスがある」商品でもある。値上げも仕方がないという風潮があるならついでに上げてしまいたいと考えても不思議がない。

外食ができなくなった分だけ料理需要は増えるわけだが急に料理ができる人が増えるわけでもない。そこで頼りになるのが冷凍食品なのだ。冷凍唐揚げの需要はコロナ禍前よりも8%上がっているという調査を見つけた。これが2022年1月の情報だ。日経POS情報が出している数字なので流通の数字である。

2020年10月には「コロナの影響で内色・中食の需要が増えた」という調査があり唐揚げはその代表的なメニューになっていた。これはニチレイの調査だ。全国のから揚げ消費個数の推計も示した。2020年度は年間換算で約400億個以上のから揚げが消費される見込みだ。これは2019年の消費量推計値の250億個と比較して67%増に当たる。とされている。67%というのはかなりの変化である。

こうした需要の拡大をメーカーが見逃すはずはない。日本人はとにかく値上げには厳しい目を向ける。裏切られたと感じる消費者が多いからだ。からあげクンが30年も値上げできなかったというのもその一つの証拠になる。

ネタトピという媒体にからあげクンの値上げのニュースが出ているのだが値上げのニュースに見せた宣伝になっている。「商品本部長が泣いた」というエピソードを織り交ぜつつ「値上げ前に一個増量セールをやります」と言っている。本当に苦渋の決断であればこのようなプロモーションを混ぜ込むとは思えない。

からあげクンの値上げにどのような理由があるかはよくわからない。ただ「戦争などで値上げはやむを得ない」という風潮に紛れて様々な商品が値上げされるという動きは今後も出てくるのかもしれない。周りが価格を維持している中で自分たちが値段を上げればおそらく離反されるだろうがみんなも上げているということになれば値段も上げやすくなる。

ただしこうした動きには当然副作用もある。

2021年のNHKの取材によると唐揚げ弁当店やスーパーなどで安く仕入れられる鶏肉は減っていたという。ここにもニチレイの名前は出てくる。ニチレイのような加工業者がタイから鶏肉を仕入れている。ニチレイにしてみれば弁当業者に唐揚げを作らせるより自分たちが加工して売った方がより大きな利益が確保できる。メーカーが自分たちの利益を最大化させようとすると弁当を作って売っている小さな会社がしわ寄せを受けることになる。

弁当も上がった、コンビニの唐揚げも上がった、さらに冷凍食品も上がった、でも給料は上がらないとなると消費者は何かを諦めることになるだろう。おそらく外食を減らしたり弁当を買うのをやめて唐揚げとおにぎりとビールというような人たちも増えてくるはずだ。給料さえ上がればこうした悩みはなくなるのだろうが今のところ日本にはそのような兆候はない。

どのような変化が起きるのかを調べるのに複雑なマーケティング調査はいらない。最近の値上げで自分が何を諦めたのかを考えてみれば意外とそれが正確な予想になっているのではないかと思う。おそらく最初に諦めるのは「弁当を他人に詰めてもらう手間」すなわち人件費ではないだろうか。

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