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鈴木財務大臣の「日本経済はもはやデフレではないがデフレから脱却した状態でもない」と発言

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ごく小さなニュースだが鈴木財務大臣の発言がロイターに取り上げられていた。正確に引用すると「鈴木俊一財務相は14日の参院財政金融委員会で、日本経済の現状はデフレではないとしつつも、デフレから脱却したという状況ではないとの認識を示した」という表現になっている。結果的に125円の線で落ち着くかに見えていた円ドル相場は再び126円を伺う動きになっている。一方でユーロも2年ぶりの安値に沈んだそうだ。米ドルが先行するという状態が生まれていることもわかる。

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鈴木大臣の発言はみんなの党の浜田聡氏の質問を受けたものだ。ロイターはどのような趣旨の質問なのかという点には触れていないので質問自体はあまり重要ではないということなのだろう。それよりも金融市場は鈴木財務大臣がどのような状況認識でどう日銀と連携するのかという点に注目が集まっているということになる。

安倍政権のアベノミクスの継承と発展的展開を標榜する岸田政権は「アベノミクスはもはやデフレではない状態を作り出した」と積極的な評価をしている。一方で日銀が目標とする2%の物価上昇が実現すると日銀は金融政策を緩和すると約束している。日銀の政策がデフレからの脱却を目標としているからである。だから「デフレからは脱却できていない」という表現になる。

ただ我々はこうした状況を知らないために単に国語的に評価して「これでは何も言っていないではないか」と感じてしまう。

岸田政権はアベノミクスを積極的に評価しつつ少なくとも日銀総裁が任期を終えるまで金融政策を積極的に変えないという時期にある。さらにこの安全運転で高い支持率を維持している。このため少なくとも参議院選挙が終わるまでは世論を刺激するような思い切った展開はできないものと思われる。

時事の世論調査によると国民が岸田政権を支持する理由は次の通りだ。特に不利益になることが起きていないのでとりあえずこのままでいいのではないかというのが岸田政権が支持される理由になっているのである。

  • 「他に適当な人がいない」21.9%
  • 「首相を信頼する」13.9%
  • 「印象が良い」11.7%

鈴木財務大臣のわかりにくい表現はその状態をよく表している。浜田氏の質問の意図が何であったかは置いておいて「とりあえず現状のままでできる対策を取ってゆく」という発言が市場にどう受け取られるのかという点が今後の注目点になる。少なくとも今の為替相場の動きを見るとアメリカの金利差に追随する動きは取らないのだろうなというメッセージだと受け取られているようで1ドル126円台が視野に入ってきた。

ただし、こうした動きは何も円に限ったものではないようだ。ECBも利上げを急がないという観測が広がってユーロも2年ぶりの安値をつけたそうである。このことから米ドルが「利上げレース」では先頭を走っており円とユーロが追随できていないという状態になっていることがわかる。

ECBは夏までに金融緩和策を終えると言っている。仮にこの通りになればこの時点で円だけが金融緩和策から脱却していないという状態が黒田総裁の任期が終わる2023年春頃まで続くのかもしれない。

このように政策担当者の発言に一喜一憂しつつ為替相場が神経質な動きを見せるという展開になっている。

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