連日お伝えしているようにスリランカやパキスタンの外貨不足がかなり深刻な政情不安を引き起こしている。今回はスリランカのデフォルトが確定しそうだというニュースが飛び込んできた。スリランカのデフォルトが日本に与える影響は極めて限定的だ。今後の注目点は「第二・第三のスリランカ」がどれくらいあるのか?という点に移ってくるようだ。
経緯を軽くおさらいする。インフラ整備で借金を重ねてきたスリランカは徐々に借金返済が滞るようになった。中国への債務を完済するのに400年程度かかるであろうという観測もあり中国が港を差し押さえたりしてきた。かろうじて借金を返済してきたスリランカだったが徐々に情勢が悪化する。新型コロナウイルスの蔓延で観光業が行き詰まると外貨獲得の道も閉ざされた。そのあと食料や燃料の調達が難しくなりついに首相を除く閣僚全員と中央銀行総裁が辞任するという騒ぎになっていた。
各所から細かい借金をしていたのだろう。AFPは次のように表現する。収拾がつかなくなったために「IMFと相談して目処が立つまで」の時限措置として返済を「公平に」一時ストップしたのである。
経済危機に直面しているスリランカは12日、総額510億ドル(約6兆4000億円)の対外債務について、返済を一時停止すると発表した。必需品の購入に必要な外貨が払底したのを受けた緊急措置としている。
スリランカ、対外債務返済を一時停止
このため一部の債権がデフォルト状態となっている。ただしデフォルトそのものは信用の裏打ちになっている格付け会社が決めるため記事は「デフォルトへ」とか「デフォルトか」となっている。ロシアの例でも実際に契約不履行のニュースが流れてから1日程度経ってから「格付け会社がデフォルトを宣言した」と表現されていた。
ロシアの場合は経済制裁による懲罰的な色彩の強いデフォルトだが、スリランカの場合はまだ「国家全体が破綻した」とはみなされていない。このため「一部デフォルトか?」という書き方になっている。
「デフォルトか?」という表現で分析している金融アナリストの久保田博幸さんによるとスリランカの日本への影響はそれほど大きくないものとみられている。ただ新型コロナウイルスの蔓延とウクライナ危機による食料価格の高騰は世界的な動向である。スリランカほど経済状態が悪くなかったパキスタンでもIMFの救済を求める動きが出ていることから「今後どの程度このような国が出てくるのか」については懸念がある。