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為替相場の動向を握る次の日銀総裁候補の名前はいつ頃出てくるのか?

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円の価格が落ちている。現在1ドル125円近辺が黒田総裁の防衛ラインだと言われているそうだがさらなる下落を予想する人もいる。悲観論ばかりが飛び交う中で確度の高い予想が欲しいが識者の意見はバラバラだ。その原因になっているのが日銀総裁の任期である。黒田総裁の任期は残り一年なのだそうである。つまり次の人が誰になるかによって動向が変わってしまう。だから予想がしにくいのだ。ではその次の名前はいつ頃に出てくるのか。

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まず2022年3月25日のブルームバーグの記事を見つけた。円は対ドルで6年ぶりの安値圏にある。悲観論は容易に収まりそうにないがこれは過小評価なのだそうだ。この圏内でしばらく膠着すると考えられているがここを突破されると150円台も見えてくるとブルームバーグは書いている。一方で120円台で収まるだろうと書くところもある。ロイターは専門家の間でも意見が異なると書いている。

この文章だけを読むと悲観的に「もう円は終わりなのではないか」などと騒がない方がいいことだけはわかる。ただ何かあった時に動けるようにはしておいた方がよさそうだ。

ただ為替相場は勢いで動くことがある。金融市場とのコミュニケーションは非常に大切なのだから日銀総裁の役割は大きいはずだ。このところのドル円相場は政策担当者の発言にかなり過敏になっている。ロイターの報道によると12日には鈴木財務大臣の「円安牽制」発言一言でドルの価格が一時下がったそうだ。市場も先行きが読めないと感じているのだろう。

悲観的になる材料はいくつもある。例えば円の「実質実効為替レート」は1970年代以来の低い値になっていると時事通信が伝えている。BIS(国際決済銀行)が様々な要素を勘案して作成する実質実効為替レートによると日本の円の実力が最も高かったのはバブルが崩壊し「就職氷河期」と言われていた1995年だったそうだ。

この「実質実効為替レート」で検索すると日経新聞の記事が出てくる。2010年が基準の100になっていてそれよりも3割下がったというような見方をするようだ。

だが重要なのはこれまでどうだったかということではなくこれからがどうなるかであろう。日経新聞に「賃上げ・円安・総裁交代 日銀の政策修正、契機を探る」という記事を見つけたので読んでみた。結論だけを書くと日経新聞は「よくわからない」と言っている。さらに日経新聞は外的な環境も変わり金融政策も変えるべきなのだから黒田総裁の時代は終わったと感じているようである。

  1. 日銀は緩和策を変えないと言っているが「いずれは修正する」という見方が増えている。
  2. みずほ証券の調査では引き締めるべきという回答が85.7%だった。
  3. 日銀の政策には長期金利(10年もの国債:現在は0%)・短期金利(当座預金:現在はマイナス)操作・量的緩和(国債の買い入れ)・質的緩和(株と土地の投資信託)がある。
  4. 日銀は2%の物価上昇を目安にしているがこれが日銀の政策とは関係なく実現してしまう可能性がある。ただし日銀が狙っている経済見通しの好転によるインフレではないため永続性はないものと考えられる。こうなると実際に緩和策が実施されるかどうかわからない。
  5. 参議院選挙が終わると岸田総理はしばらくは選挙から解放されるため経済対策が実行しやすくなる。また2023年4月には黒田総裁の任期が切れる。

日経新聞が先行きを読めないのは政治的な環境が大きく変わりそうだからだ。岸田政権は参議院選挙まで安全運転を心がけており独自政策を出していない。選挙さえ乗り切れば独自色が出てくるのかもしれないという期待はある。政策的な意思決定の中には日銀総裁の任命も含まれている。だから「今の時点ではなんとも言えない」ということになる。

日経新聞がよくわからないと言っているものが庶民にわかるわけもない。ただキーになるタイミングがこれからいくつかある。今後の金融政策を考える上で重要になりそうな新しい日銀総裁候補の名前は参議院選挙後に取りざたされることになりそうだ。その前提になるのは岸田総理の新しい経済対策である。

となると参議院選挙はかなり重要だ。我々が関心を示さなければ政権担当者は「国民はそれなりに満足しているのだろう」と考えて積極的な経済対策はやらないかもしれない。選挙を乗り切ったと安心してしまうからである。仮に惨敗まではいかなかったがかなり負けたということになれば何らかの方針転換もありうる。可能性は低いが政権が存続できないほど負ければおそらく逆に混乱するだろう。

参議院選挙で岸田総理が具体的な経済対策・金融対策を示すことは残念ながらなさそうである。だから金融市場も「探り探り」になっている。つまり我々は何となく岸田総理の政策を予想しながら投票することになるだろう。

参議院選挙が終わった後は大きな選挙がない。つまり、国民が物価高で不満を訴え支持率が下がるようなことになっても思い切った政策転換ができないことになる。これまで金融政策で政府のファイナンス(資金調達)を支えてきた黒田総裁が退任してしまうというシナリオも考えられる。こうなると打ち手がないまま選挙もできずに支持率がどんどん下がってゆくというシナリオも想定される。

ただ政策提示がない以上「選挙が重要そうだ」ということがわかっても「どの政党に入れるべきか」ということは見えてこない。野党も様々な独自案を出しているがあまり評判にはなっていない。選挙の結果次第で今後の経済対策・金融対策は大きく変わるのだろうが有権者に選択肢が示されているとは言えない。今後の経済対策。金融対策は多分に偶然に左右されるということになりそうだ。

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