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ロシアの脅威を背景にスウェーデンとフィンランドがNATO加盟に向けた協議を開始する

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スウェーデンとフィンランドがNATO入りに向けて協議を開始したとCNNが伝えている。前向きなフィンランドとあまり乗り気ではないスウェーデンという温度差があるのだが、スウェーデンにはそれでも協議をやらなければならない事情がある。いずれにせよこの動きがロシアを刺激することは間違いがない。地域の緊張度合いはさらに高まるだろう。

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フィンランドはもともとロシア帝国の領域だったのだがソ連成立に前後してロシア帝国を離脱した。カレリア地方の一部を失ったがバルト三国のようにソ連には飲み込まれなかったので西側の一員という印象がある。だが、言語はヨーロッパ系ではない。

歴史的にロシアに近いため最後までロシアと直接鉄道で結ばれていた。両国友好の証だったこのアレグロという鉄道も3月27日で運休になった。最後までロシアを脱出するロシア人などで満席だったそうだ。

歴史的背景やロシアに領土の一部を奪われた経験があるためロシアを刺激せず中立を貫いてきたフィンランドだが、ロシアの度重なる暴挙を目の前で見せられついに「数週間以内に協議を進め夏までに結論を出す」と表明するまでに追い込まれた。

ウクライナが長い間NATOに入れてもらっていないのにフィンランドがファース・トレーン(優先窓口)なのはこれまでフィンランドがNATOに協力してきたからである。ウクライナもジョージアも庇護を求めてNATO加盟を希望しているのだがNATOは相互協力の枠組みだ。だから過去の実績が評価されるのだろう。

一方のスウェーデンは少し状況が異なる。もともと左派のアンデション首相はNATO入りという選択肢はないと表明していた。これが2022年3月のことである。ところがなぜか意見を変え「加盟について否定しなくなった」とCNNは書いている。フィンランドとの比較ではかなり後ろ向きに思えるのだが実は「態度が大きく変わった」のはスウェーデンの方かもしれない。

背景を調べてみた。スウェーデンは2022年9月に総選挙がある。選挙を新しい顔で戦おうとしたのだろう。2021年11月にローベン首相がアンデション首相に首相の座を禅定したのだ。2014年から首相だったのだがコロナ対策の失敗(インタビューで国王がコロナ対策の失敗を認める異例の政権批判を行なった)や経済対策などから野党の離反を招いていた。組閣はかなり難航したが野党側がまとまることができなかったため辛くも続投したという経緯がある。

ローベン首相はコロナ対策の行き詰まりを政権の顔を変えることで乗り切ろうとしたことになる。その時点では非常に合理的な判断だった。だが、程なくしてロシアのウクライナへの侵攻が始まると状況は一変する。当初はNATO入りに否定的だったアンデション首相もついには「協議に応じる」と言及せざるを得なくなった。ブチャやクラマトルスクの惨劇がヨーロッパに大きな動揺を与えていることが想像できる。今後アンデション首相は党の内外をまとめ上げる難しい選択を迫られることになる。前のめりなフィンランドと違っていて5月までに内容をまとめると言っている。

これまでのロシア高官の発言を見ていると「自分たちの陣地と相手の陣地」に境界をつくり、その境界を挟んで状況を均衡させておきたいと考える傾向が強いことがわかる。最近では日本が南クリル(北方領土)を盗もうとするなら我々は北海道が領有できると主張するまでだという左派のミロノフ党首の発言が話題になったがそれも「均衡思考」の現れだといえるだろう。さらに緊張が最高潮に達すると言葉による挑発合戦だけでは不安になりつい手が出てしまうのである。

今回のフィンランドとスウェーデンのNATO加盟問題がロシアを刺激することは間違いがない。彼らはおそらく線の向こう側で緊張が高まったから自分たちも何かをしなければならないと思うはずだ。ロシアの極端な軍事行動がヨーロッパを刺激し、それがさらにロシアに極端な行動を取らせるという自動機械のような構図ができている。

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