ロシアのウクライナ侵攻による制裁を受けているロシアのデフォルトが確定した。
記事を読むとロシア国債のデフォルトではなく「ロシアそのものについて評価しない」という宣言になっているようだ。ロシアを国際金融市場から締め出し容易に戻って来ることができなくする効果があるという。つまり、これはロシアが人為的デフォルトと呼ぶ経済制裁活動の一環でもある。軍費の調達を難しくし攻撃を抑止するという効果が期待されているのだろう。
アメリカ合衆国は例外的に利子のドル払いを容認してきた。だが、キーウ郊外ブチャの惨劇の後でロシアを非難する世論が沸騰したためさらなる制裁に踏み切った。
当初は5月25日がデッドラインだと言われてきたのだが国際的には契約違反とみなされるルーブル払いの時期が早まった形になる。
さらにロシアの国際人権理事会離脱に前後してウクライナ東部の駅がミサイルで爆破された。ロシア軍が民間人を50名以上殺害したという疑惑が持たれておりさらなる制裁は避けられない情勢だった。EU委員長やイギリスのジョンソン首相がキーウ(キエフ)を訪れウクライナへの連帯を表明しさらなる制裁と大型兵器を含む軍事支援を表明している。
すでにお伝えしている通り当初は「格付けそのものがおこなわれない」ためデフォルトの判断が出されないだろうという予測があった。ところがS&Pはロシアが「選択的デフォルト」であると判断したのち「もはや格付けそのものができない」とし格付けそのものを停止した。ロイターはソブリン・デフォルトと表現している。
Soveringenは最高の・至高のという意味を持つラテン語由来の言葉である。もともと国家の統治権限を意味し現在では国家主権などと訳されたりする。ソブリン・デフォルトというのはその国家主権が信用できないという極めて強い宣言である。ルーブル払いから30日間は猶予期間のはずだが度重なる経済制裁から「もはや進展は望めそうにない」と考えていることになる。
読売新聞とNHKによると「格付けがなければ資金調達が難しくなる」ためEUからの要請を受けた制裁措置の一つでもあるそうだ。
「選択的デフォルト」であるためテクニカルには「デフォルトしていない債権」もあるはずだが格付けそのものが撤回されたためS&Pはこれ以上の判断はしないものと思われる。
ロシアは1917年の革命以来対外債務の債務不履行状態を避けていたがプーチン大統領の無謀な軍事行動によって革命以来初の国家デフォルトという状態に陥ったことになる。他の格付け会社はすでに撤退していたためS&Pを最後に大手の格付けそのものが全て失われたことになるのだそうだ。
ただし「ソブリンリスク」は西側の経済制裁によるものであり米ドルに換金できないことが根拠になっている。つまり経済制裁の一環である。西側がその気になればある国の経済を国際的に締め出すことができるという証明になっている。もちろん、こうした西側のドル支配体制を快く思わない国もある。このため人民元やルーブルを使った国際的なな金融ネットワークが作られる可能性も出てきている。
すでに原油や石炭などの取引でこうした金融ネットワークの萌芽がある。中華人民共和国、サウジアラビア、インドなどの大国の名前が出てくる。ロシアは天然資源を豊富に持っているためこのデフォルトが直ちにロシアの経済崩壊を意味するわけではない。むしろ国際金融が単一の市場から緩やかに分解し始めるきっかけになる可能性もある。