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クラマトルスク駅の衝撃とロシアの白黒思考

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ロシアが国連人権理事会を出て行った。国際社会は「ロシアが反省すれば戻ってきても良い」という配慮をしていたのだがロシアは各国に「賛成したらタダではおかない」と脅すような文章を回したそうだ。さらにその後でウクライナ東部のクラマトルスク駅が襲撃され多くの民間人がなくなった。ロシアは関与を否定しておりウクライナの自作自演だと非難している。

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一連の動きをみると、国連の常任理事国の一つが実は国際社会に対して強い恨みを抱えていたということがわかる。第二次世界大戦の反省から「武力ではなく話し合いによる解決」を目指してきた国連の機能不全が露呈したと言ってよいだろう。特権的な資格を持つ国が進んで世界の安全保障に責任を持つというのが国連の理念なのだがその理念が根底から覆されてしまったことになる。

国際社会は今回の件についてかなり遠慮がちだったようだ。朝日新聞によると決議は最終的なものではなく定期的に見直されることになっていたようだ。つまり、ロシアに再考を促す内容だったと言って良い。

だがロシアは各国に対して「棄権すら敵対行為とみなす」と対決姿勢をあらわにした。結果的に賛成93・反対24・棄権58で決議が採決されるとロシアは「やめさせられるくらいなら自分でやめる」と席を蹴って出て行ってしまった。

潜在的な不満を抱えた人が「敵か味方か」という白黒の思想にとらわれ周囲との間に絶望的な距離を作り出してゆくことはよくあるのだがこれは核兵器を持ち豊富な天然資源と1億人を超える人口を持つ大国の振る舞いだ。

こうした思考は白黒思考とか二極思考などと言われる。これが社会との間に軋轢を引き起こすようになると境界性パーソナル障害とか人格障害などと言われカウンセリングの対象になる。

当初、プーチン大統領が一人でこうした二極思考に支配されているのだと思っていたのだが、むしろプーチン大統領の支持率は上がっているそうである。NHKが関連する記事を書いている。NHKが社会学者のレフ・グドゥコフ氏にインタビューを行っている。

このインタビューによると「アメリカがロシアを脅かしている」という政府の主張が始まるとそれに乗る人が増え世論が一変したそうだ。グドゥコフ氏は次のように説明する。

軍の司令部などと手を組みおそれられる強力な国家を夢みている。怖いからこそ尊敬される国家だ。『恐怖による支配』こそが国家を形成すると信じていて『核兵器を保持している』ことが世界から尊敬される理由になると考えている

ロシアにはテレビだけで情報を取っている層が大勢いるため政府の主張が浸透しやすかったものと思われる。これがSNSが発展していて「いやまてよ」と考えるチャンスを持つ西側との決定的な違いだろう。

言論空間の多様性がない社会の危険性が感じられる。

ただしいったん二極思考に陥った人を踏みとどまらせることはできない。説得をしようにも全てが悪意的に捉えられてしまうからだ。我々ができることはもうほとんどないと言って良いだろう。

こういう思考に陥った人はしばしばすぐ露見するような嘘を平気でつくようになる。この辞任劇に前後してクラマトルスクの駅にミサイルが打ち込まれた。どのような種類のミサイルなのかはよくわかっていないようだが「子供達のために」と書かれていたという。これは憎悪のメッセージである。子供を含む50名が一瞬にして命を失ったほか生涯癒えることがない大きな傷を負った人もいるようである。EUのフォン・デア・ライエン委員長やイギリスのジョンソン首相などがキーウ(キエフ)を訪れウクライナへの連帯を示した。さらに格付け機関は格付けから撤退しロシアの国家デフォルトが確定した。これは1917年以来守ってきた国家の信頼がプーチン大統領の決断によって失われてしまったことを意味する。

このミサイルが「従わない者は何度でもひどい目に合わせる」というメッセージであることは間違いがない。子供達にはミサイルがふさわしいということだから「お前達に未来はない」という意味だろう。ウクライナはロシアを非難しているがロシアは「ウクライナの自作自演だ」と主張しているそうだ。

もちろん誰が何の目的で発車したものかはわからないのだが「子供達のために」というメッセージだけSNSに乗って世界中に拡散している。おそらく世界中の人たちはロシアに恫喝国家というイメージを持つだろうが、実はロシア人は「こうすれば尊敬してもらえる」と思い込んでいるようだ。

皮肉なことに我々が一連のニュースに反応すればするほどロシアの行動がエスカレートしウクライナ人の命が犠牲になるといういたたまれない状態が作られていることになる。

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