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EUがハンガリーに予算停止措置

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EUがハンガリーに対して予算配分しない決定をした。直接の原因とされているのはハンガリーの汚職体質だが、おそらくオルバン首相のプーチン大統領よりの発言が問題視されているのだろう。EUはポーランドにも予算配分を停止するのではないかという話が出ていたのだが執行されたのはハンガリーが初めてだそうだ。

ウクライナ侵攻は西側対ロシアという構図で語られることが多いがEUも一枚岩ではないということがよくわかる。

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オルバーン・ヴィクトル首相は1998年から2002年まで首相を務め2010年から再度首相を務めている。極めて長期にわたって政権を独占していることになる。もともとは社会主義打倒運動で有名になり「民主化の旗手」として有名だった。だが政権が長期化するにつれ汚職の噂も広がるようになる。だが、検察も政権と癒着していると考えられており、まともな捜査は行われておこなかったようだ。

ハンガリー人はオーストリア・ハンガリー帝国では支配階層だった。このため広い地域にハンガリー系住民を抱えている。オーストリア帝国はウクライナ西部にまで及んでいたためウクライナ西部にもハンガリー系住民が多く住んでいるそうだ。またルーマニアのトランシルバニア地方ももともとはハンガリー領だった。ハンガリーはこの地域について領土的野心を表明しないことが「お約束」になっている。オルバーン首相はウクライナなどに住んでいる在外ハンガリー人にも選挙権を認めるという主張をしており民族主義的な野心も垣間見える。こうした主張は同じようにロシア拡大主義を唱えてきたプーチン大統領と非常に良く似ている。

このようにハンガリーは市場統合を目指してEUに組み込まれたものの民族主義や汚職体質という問題を抱えている。さらにエネルギーもロシアに依存する。ハンガリーが透明性を求める西側を嫌いロシアや中国へ接近しているのはそのためと思われる。非民主主義国は政治の透明性をあまり問題視しないからである。選挙戦はプーチン大統領に逆風が吹く中で行われたため「ゼレンスキー大統領がライバル(対戦相手だった)」と漏らす場面もあったそうだ。

一方でEUにも変化が見られた。東側地域を「飲み込んだ」ものの民主主義をあまり重視しない国が多い。2021年3月にEU委員長が「EU復興基金」と「予算配分停止」措置を決定できる権限が与えられた。当時の記事では「主に将来配分される予定の資金を停止する」という措置になるものとみられていた。

このEU復興基金はコロナパンデミックで経済が痛んだ国を救済するための資金で東ヨーロッパの国だけではなく南ヨーロッパの国からの期待も高い。

初めてこれが執行されるのではないかとされたのはポーランドだった。10月のJETROのビジネス短信が見つかった。欧州議会がポーランドの状況を監視していないとして裁判に提訴する準備を進めていた。議会が求めたのはポーランドに対する予算配分停止である。モラビエツキ首相は「EU法はあくまでもポーランド憲法の下位である」と違憲判断を擁護したことから対立が高まっていた。

問題になったのは「政府が判事を懲戒できる」という法律である。西ヨーロッパの政治的常識のもとでは司法と行政は独立しているべきだ。だが、ポーランドはそうは考えなかったのだろう。

欧州司法裁判所はポーランドが命令に従うまで1日に100万ユーロ(約1億3000万円)の制裁金を課すという制裁を与えた。また新型コロナウイルスからの回復基金570億ユーロの支払いを棚上げするとしていた。EUの中枢はポーランドの決定をEUの秩序に対する挑戦と捉え、ポーランド側は制裁は補助金を使った「恫喝」としてポーランド政府から反発を受けていた。

ところが初の予算停止措置が発動されたのはポーランドではなくハンガリーだった。背景に何があったのかはわからないがロシアのウクライナ侵攻があったことから「親ロシア派」への制裁措置だったのかもしれないと思う。

一度は矢面に立ったポーランドはウクライナの移民を積極的に受け入れている。ロシアとの対立を深めるEUがポーランドに対して厳しい措置を取るのは難しくなるだろう。

イギリスはEUから押し付けられる規制に反抗してEUを出て行った。だが、ポーランドはEUに止まりつつEUに反抗する道を選んだ。ハンガリーは西ヨーロッパが期待するEUの結束に反抗しており域内の価値観は急速に崩れつつある。

ロシア対西側という構図で語られることが多いロシアのウクライナ侵攻だがEUの足並みの乱れは我々が考える以上に深刻であることがわかる。

参考資料


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