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補正予算か予備費の活用かで自民党と公明党の議論が分かれる

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物価高が喫緊の政治課題になりつつある。自民党と公明党の間に「補正予算を組むか予備費を活用するか」という議論があるそうだ。公明党は選挙を見据えた大きな景気刺激策を求めているのだが高市政調会長は新型コロナの予備費を使った対策を提案しているという。

政界には「選挙前に補正予算を組むと選挙に負ける」というジンクスもあり与党内で駆け引きが続いている。

さらに、茂木幹事長ラインと高市早苗政調会長ラインの党内主導権争いという側面もあるようである。

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公明党がこのところ補正予算編成の必要性を盛んに訴えている。3月30日には竹内政調会長が“緊急対策 予備費ではなく補正予算案で”と訴えたという記事をNHKが出している。

日経新聞にも同じような記事がある。政府は原油高対策などの財源として22年度予算の計5兆5000億円の予備費を見込むが、竹内政調会長は「予備費だけではいまの対策を続けることさえ困難になる」と言っている。

山口代表も横浜で記者団に答え「物価高騰に備えを」と補正予算の策定を求めた。参議院選挙後「政治の空白が生じる」と懸念を表明している。党内でも「財源不足なら政権の責任」とかなり強い調子で補正予算の重要性を訴えたそうだ。新型コロナ対策やウクライナ情勢に絡んだ物価高に加え「さらなる災害」まで心配している。

公明党の強い危機感は十分すぎるほど伝わってくるのだがこの提案はすんなり通りそうにない。党内議論を飛ばして幹事長ラインから岸田総理に直接訴えたことがしこりになっているようだ。岸田総理は安全運転に徹しており長期政権の目がある。現時点での一番の懸案材料は党内の混乱だろう。このためわざわざ会合などで「高市政調会長が取りまとめるのが本来の筋である」と強調し事態の収拾を図った。

政府に対して自民党の茂木幹事長と公明党の竹内譲幹事長が選挙前に年金生活者に対して5,000円を給付すべきであるという提案があった。これが「あからさまな選挙対策だ」として非難された。自民党内でも「党内での議論がない」と懸念する声があったようだ。このため、岸田総理が収拾に動き高市早苗政調会長が取りまとめるようにとわざわざ指示を出す事態にまで発展した。

党内の議論はさておき「せっかく景気対策をやるのなら補正でやったほうがいいのではないか」という意見もあるだろう。だがこれはあまり得策ではないようだ。因果関係は定かではないが日経新聞は「参議院選挙の前に補正を組むと負ける」というトラウマについて紹介している。

苦戦の事例には1993年の宮澤政権、1995年の村山政権、1998年の橋本政権、2009年の麻生政権と4回あるそうだ。1990年代の三回は自民党の金権政治批判とバブル崩壊後の経済不安が背景だった。日経新聞は橋本政権の時の原因を「金融不安」としているのだが、これはおそらく北海道拓殖銀行・三洋証券・山一證券の破綻を指しているのだろう。潰れるはずがないものが潰れるという社会には大きなインパクトがある出来事だった。

宮澤政権と麻生政権の後はさらに悲惨だった。党内の混乱が連日マスコミに伝えられた結果自民党が政権を失う事態にまで発展してしまったのだ。

もちろん、補正予算を組んだから負けたのか負けそうだから補正予算を組んだのかという因果関係はよくわからない。参議院選挙前に補正予算を求めるということはかなり選挙に不安を抱えているという意識の裏表になっているのだろう。このため補正予算を求める声の裏には公明党の不安があると考えるのが自然なのかもしれない。

自民党は以前のように不安定な状況にはなく野党が躍進するようだという声も聞かれない。さらに岸田政権の支持率はこのところむしろ上昇傾向にある。このためおそらく今回は補正予算まで組んで公明党に配慮しようということにはならないのではないかと思える。比較的高い支持率があればこのように党内動揺を収拾することもできるのだ。

ただし不安材料も残る。首相をはじめとした党幹部は党内の派閥状況などを配慮しているためか「高市さんを尊重するように」という姿勢を強調しているそうだ。高市政調会長もこれに答えようとする。

ただ、高市氏は衆院選公約で随所に「高市カラー」を盛り込む一方、首相側の修正要求に反発した経緯がある。29日の党会合では5000円支給をゼロベースで議論すると言及し、政策立案に関する主導権をアピール。公明党が訴える2022年度補正予算案の今国会成立も、「現時点で必要とは思わない」と一蹴した。

日本の組織はこうした個人のスタンドプレーを好まないところがある。さらに公明党も「できるだけ強い対策を打ち出してほしい」との姿勢を変えていない。最終的には収まるところに収まるのかもしれないのだが公明党の強い危機感を背景にしばらく景気対策の形についての駆け引きが続くことになりそうだ。

このところ世界経済の先行きには不安定さが増している。結果論として悪い経済指標などが出れば積極的な政策を打ち出さなかかった高市政調会長にアウェイの風が吹くことも予想される。

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