ざっくり解説 時々深掘り

ルーブル払いで心が揺れ動くプーチン大統領

ロシアがルーブル払いしか受け付けないか今まで通りユーロを受け付けるかで迷っているようだ。プーチン大統領の迷走ぶりがわかると同時にヨーロッパの各国でも違いが出ておりお国柄がうかがえる。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






プーチン大統領は天然ガスを買うためにはルーブルで支払わなければならないという法律に署名した。無料で天然ガスを分けてやることはないとも宣言している。つまりこれは「ルーブル支払い義務化」である。つまり国内向けには法律を作って企業を縛っているという姿勢を見せたのである。

だがいくら国内で法律を作っても相手が応じなければなんの意味もない。だが頼れる交渉スタッフもいない。そこでプーチン大統領が直接ヨーロッパに提案をしているようだ。イタリアのドラギ首相に提案をしたというニュースをロイターが伝えていた。ドラギ首相がこの提案にどのように反応したのかということは伝わっていなかった。

だが西側の反発も強かった。ドイツとフランスは「恐喝には屈しない」と強い姿勢でプーチン提案を拒否したとロイターは伝えるAFPは契約書に書いてある条件で取引を継続すると少し抑えたトーンになっている。

すると今度はプーチン大統領から直接ドイツの首相に電話が入る。プーチン大統領提案は意外なものだった。ドイツは今まで通りユーロで支払ってくれればこちら側の銀行でルーブルに両替しますよというのだ。法律は作ったがあくまでも国内向けの体裁でありお客さんは今まで通りでいいという提案である。

ドイツの首相は「口で色々言ってもらってもよくわからないから書面にしてくれ」と伝えて電話を切ったとAFPは書いている。G7でルーブルでの支払いはしないと取り決めたので応じられないとも伝えたそうだ。

一方でドラギ首相は「取引条件は今まで通りだと聞いている」と記者たちに語った。ルーブル支払いの件はあくまでもロシア国内の話であるとして受け流す姿勢だ。ドラギ首相はドイツのように「書面」を求めず「だって相手はそう言っていたし我々もそう決めている」とだけ言っている。書面を求める国、反発する国、平然と受け流して見せる国と、国柄の違いがよく表れている。

企業に例えていうと、いきなり営業部長が契約条件を変えると通告してきたのち社長が直接電話をしてなんだかよくわからない話を延々としているという状態になっている。一体何が起きているのかはさっぱりわからないのだがとにかく相手は混乱しているようだ。

CNNは「結局このスキームはガス代金で獲得したユーロをルーブルに替えてルーブルを買い支えるだけのものである」と理解されているようだと分析する。一方でヨーロッパも「いつ供給を止められるかわからない」というリスクを抱える。

プーチン大統領の心理状態はかなり揺れているのだろうということはわかる。領土問題は相手を恫喝すれば解決する。選挙もおそらく情報戦で動かすことができるだろう。だがビジネスには相手への信頼が必要であり大切なことは書面に残す必要がある。おそらくプーチン大統領はあまり才能のある商売人ではないのだろう。さらにプーチン大統領が直接相手に交渉しなければならないということは信頼できるスタッフがいないということを意味する。最後に国民はルーブルの将来に不安を持っているためなんらかの対策を講じて見せる必要がある。

独裁者というとなんでも好きなことができるように思いがちだが頼れるスタッフもいない中、国家経営をすべて一人でやっているような状態になっている。

ヨーロッパと弱気なビジネス交渉をしながら国内向けメッセージは極めて強気である。EUの首脳やジャーナリストのロシアへの入国禁止を発表した。自分の思い通りにならないヨーロッパに対してかなりのフラストレーションを溜め込んでいることがわかる。さらにプーチン大統領と軍部の間にコミュニケーションギャップがあるという分析も誤解だと反発している。

この両極端な性格が彼をますます謀略と暴力に走らせるのだ。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です