ラブロフ外相が画策する「新しい世界秩序」とは

ウクライナで停戦構想が進む中、ラブロフ外務大臣が「新しい世界秩序」構築に向けて外交活動を活発化させている。中国とインドもこれに呼応する動きを見せており、必ずしも西側の報道で伝えられるロシアの孤立化が起きているわけではないようだ。






まずラブロフ外務大臣は中国の王毅外相と会談した。多極的な新しい世界秩序の構築に向けて話し合いをしたということだ。ラブロフ外相はこのために個別に訪中したわけではなくアメリカが事実上放棄したアフガニスタン情勢について話し合う会合だったそうだ。アメリカが去ったことで日本では「終わった問題」扱いされているアフガニスタン情勢も国境を接する中露にとってはいまだに継続中の問題なのだということがわかる。

ラブロフ外相はこの新しい中露関係を「多極的で公正かつ民主的な世界秩序」と呼んでいる。つまり今の西側主導の関係は「構成でも民主的でもない」と言っていることになる。民主主義の捉え方が欧米と中露では違ってきていることがわかる。

ラブロフ外相はウクライナ問題については引き続き交渉に応じる姿勢を見せ「西側は一方的に関係を切ることができない」ということを表明した。事実停戦交渉は継続中であり一定の譲歩を見せてている。

一方でインドとの間ではルピー・ルーブルの直接取引の枠組みを作ろうとしている。インドの地元紙が伝えBloombergがそれを受けた記事を書いている。両国の当局者はロシア産原油のインドへの販売や、国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワーク外で石油などの購入代金をルピー・ルーブルで支払う方法に関して協議する見込みとのことである。インドはロシアの経済制裁には反対の立場であり緊密な連携をしている。パキスタンや中国と対峙するためにロシア製の武器を大量購入したという関係もある。

「インドはかなりロシアの原油を買い叩くのではないか」という観測もあるようだ。朝日新聞は政府高官の話として「政府高官の1人は「ロシアは非常に安い価格で原油や他のコモディティーを売ると持ち掛けてきている。われわれは喜んで応じるだろう」と語った」と伝えている。朝日新聞を読む限り「原油価格が高騰しているところにロシアからのオファーがあった」ということだからこのルーブル・ルピーの取引は意外と上手くゆくかもしれない。

この石油買い叩きは中国もやっているようだが「経済制裁逃れ幇助」という批判を恐れて極秘で行われているようである。おおっぴらには元・ルーブルという枠組みは作られないのだろうが、ルーブル・ルピー市場ができれば「ではうちも」となる可能性も否定できない。このように意識して探してみると「制裁網をかいくぐる動き」を見つけるのはそれほど難しくない。

スリランカでは経済危機が起こり計画停電が始まっているという。この計画停電が長引けば「安いエネルギー」に魅力を感じるようになるかもしれない。アメリカは自国で石油が増産できるようになるまで備蓄を放出すると言っているが、できるだけ高い価格で石油を維持したいOPECプラスは小幅な増産にとどめている。このような経済環境は確実に格安の「ディスカウントエネルギー」をより魅力的なものにするものと思われる。

半導体についても中国がロシアに提供するのではないかという議論がある。中国が過度にロシアに接近するのは好ましくないという点までは一致したようだが「ではどうすれば接近が阻止できるのか」はよくわからないという状態になっているようだ。

日本のマスコミには「正義のウクライナ対悪のロシア」という対立軸がある。ロシアは技術的経済的に遅れた国という侮りもある。このため「新しい経済圏を作ろうとしても戦前の日本が作ろうとした大東亜共和圏のようなものにしかならない」という観測が一般的のようだ。

この観測だとせいぜい中国とロシアの間にブロック経済のようなものが作られて終わりという感じがする。だが実際にラブロフ外相の動きを見ていると「多極的」な動きが始まっていることも確かだ。例えば中国はロシアとの関係を切ってはいないがかといって西側諸国と経済関係を断絶させるというようなことは行っていない。

そうなると「西側」と「東側」というブロックが作られそうなものだが、例えばインドと中国の間には領土問題があり関係性は良好ではない。外相会談も行われているようだが「やはり領土問題は無視できない」ということになったようである。トルコもNATO加盟国として西側との連携を保っているが、ロシアとの関係は必ずしも悪いものではない。ロシアとは比較的良い関係なのだが敵対するアゼルバイジャン=アルメニア問題という微妙な問題も抱えている。

つまり世界はわかりやすい極構造ではなくまさに多極化に向けて進んでいるのだろうということになる。

このように「いわゆる西側」の支配する経済が唯一の経済という時代は終わりつつある。地域大国がそれぞれに是々非々の関係を抱えておりそれぞれの国益を最大化しようとして動いているという状態である。ウクライナ危機はこうした状況の始まりの一歩として記憶されることになるのかもしれない。こうなると、安い材料を海外から買い付けて高付加価値・高品質のものを作って世界に売るという日本の経済もかなりの影響を受けることになるだろう。

ロシアはエネルギー資源を豊富に生産しているためロシア経済を完全にシャットダウンすることは誰にもできないのだから、一概に「ロシアが経済制裁されたから貧しくなる」とは言い切れないということになる。IMFの高官も対ロシア制裁でドルの一極支配がすぐに終わることはないだろうがドル支配を弱める方向に作用するだろうと予想している。

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