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バイデン大統領が核の限定使用宣言を断念

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バイデン大統領が核の限定使用宣言を諦めたそうだ。具体的には「先制利用放棄」の先送りである。今回の核使用限定宣言見送りには一体どのような意味があるのだろうかと考えてみた。

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第一に今回の発表はアメリカの政府関係者のリークだったようだ。つまり未だに政府から公式の見解は出ていないことになる。したがってその意図は不明だ。

表向きには日本とフランスが反対したからと説明されているようだが、おそらく実際にはロシアに対して極端な選択肢を温存したものと思われる。さらにその意図を隠すことによってロシアに対して抑止力を働かせようとしたのだろう。

識者の中には「生物化学兵器利用」などの報復として核兵器使用のオプションを担保したものだと見る人がいる。つまり実際の利用を想定しているというのである。いずれにせよ、ロシアに対しては恫喝しか有効な抑止力がないという危険な状態に陥っていることもわかる。

つまりこれは今回のウクライナ戦争の開始の経緯を反省したものと考えられる。国内世論を気にするバイデン大統領はアメリカはNATOが攻撃されない限りウクライナの戦争には参加しないと事前に表明してしまった。これがプーチン大統領には「アメリカはウクライナを単独攻撃しない限り戦争に介入しない」という保証だと受け止められてしまった。

もし仮にここでアメリカが「自国かNATOが核兵器で攻撃されない限り自分から核兵器は使いませんよ」と宣言してしまえば「それ以外のことは何をやってもOKですよ」と言ったことになってしまうというというわけである。

中国を事実上の仮想敵とする日本にとってもこれは非常に重大な方針変更になるかもしれなかった。おそらくかなり重大な懸念を表明していたのだろうがウクライナがなければバイデン大統領はこの宣言を出していたかもしれない。「日本とフランスが反対したから」というのは単なる口実だった可能性もあるがいずれにせよ日本にとっては重大な決定が先送りされたことになる。

だが、アメリカが核兵器の身元引き受け人という地位を降りたがっているのは事実だ。各国の戦争に巻き込まれる可能性があるからである。この「各国」の中には日本も含まれる。仮に日本のリーダーが近隣諸国に挑発的な言動を繰り返してもアメリカはそれを抑制できない。そればかりか今の状態ではアメリカが戦争に巻き込まれる危険性が出てくる。それをアメリカは避けたがっている。

いずれにせよ日本人も単に「核兵器はいらない」とか「日米同盟があるから大丈夫だ」と言っていられない世界に突入しつつあるということがわかる。これはその鏡の向こうにいる「面倒な戦争はアメリカが全部やってくれるから自分たちは第9条擁護だけしていればいい」という護憲運動の崩壊も意味する。これまで以上に外交に力を入れるか軍拡に走るかについておそらく日本国内にコンセンサスはない。

ロシアのテレビでは「NATOがウクライナに介入してきたときはロシアに対する宣戦布告とみなす」というような番組が流されているそうだ。核兵器の使用をほのめかしてNATOのウクライナ介入を警戒している。つまり我々は核の使用を具体的に想定する時代に入ってしまった。

NATOとロシアはお互いに威しあうことでかろうじて核兵器や生物化学兵器の使用を牽制しあっている。原因は「不信感」なので合理的に解決できる問題ではない。プーチン大統領は常々「ロシアが地上からなくなるのであれば世界が滅びてもやむを得ない」というようなことを言っており、いよいよ「核兵器を使った拡大自殺」が現実のものになりかねないところまで状況は悪化していることになる。

実際に核戦争が始まるとどんなことになるのか。核兵器の保有状況についてCNNBBCの資料を見つけた。現在核兵器の多くはアメリカとロシアが持っている。さらにアメリカの核兵器はNATOとシェアされている。つまり、ヨーロッパを挟んでアメリカとロシアの間で核兵器の打ち合いになる可能性が高い。他の国も核兵器開発を成功させた今となっては核兵器保有には何の優位性もないのだが、核兵器保有の重荷から解放されることはほぼ不可能という状態になっている。

十分多い気もするが実は核弾頭数のピークは1990年ごろでありずいぶん減らしてこの数なのだそうである。

ロシア側の警戒感の強さは、おそらく我々の想像の範囲を超えている。

例えばロシアの飛び地カリーニングラードにも核兵器が置かれているのではないかという懸念がある。カリーニングラードはワルシャワやベルリンに近い。つまりドイツ、ポーランド、バルト三国、スウェーデン、デンマークなどはロシアの短距離核の脅威にさらされている。2016年ごろにカリーニングラードの核兵器問題が話題になっていた。イスカンデルというミサイルが整備されている。NATO攻撃の野望の表れとも言えるしロシアの怯えの表現だとも考えられる。また2018年には核兵器貯蔵施設の修復をしているようだというニュースも報道されている。

だが、このカリーニングラードの核の意味がわからない。ロシアの核兵器使用はアメリカとNATOの報復を招く。それはロシアの終わりを意味する。つまり先制使用を前提としたものではないのだろう。

例えて言えば、両方とも返り血を浴びることがわかっているのにナイフを隠し持って相手と会話をしているような状態だったことになる。少なくともロシアは今までもそのようなメンタリティで西側と接していたのだ。

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