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いつの間にか言論の自由をなくし貧困化に向けて歩み始めたベラルーシ

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民主主義はなくなって初めてありがたみがわかるという話がある。その事例の一つがベラルーシである。独裁者を排除できないでいるうちに集会の自由が奪われ貧困化が進行している。

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ベラルーシはロシア・ウクライナと並んでソ連の中核国だった。ソ連が崩壊するとロシアは高いインフレに陥るのだがウクライナと並んでベラルーシもインフレを経験することになる。ロシア経済への依存が強かったからである。このため欧米に接近を始めるという意味ではウクライナと同じだったのだが、最終的にはロシアに対する対応が真逆になってしまった。ベラルーシとウクライナには2つの違いがある。

ウクライナは東部の工業地帯を除くと農業と天然ガスのパイプラインが主要産業だが、ベラルーシはロシアから仕入れた原料を加工する石油製品の輸出、肥料となるカリウムをヨーロッパに売っていた。またソ連時代からの工業が残っていてトラクターなどの産業があった。つまり国民の労働力が必要だった。このため一人当たりのGDPを見るとベラルーシよりも豊かでロシアより貧しいという経済状態になっている。ウクライナの天然ガスのパイプラインに大きな労働力は必要とされない。このため一部の企業(国営を含む)の利益が国民に還元されないのである。

ウクライナではクチマ大統領が潔く権力を手放しその後親ロシア派と親欧米派が争うことになる。それに比べてルカシェンコ大統領は権力を手放さなかった。

ベラルーシもまたロシアからの併合という圧力を受ける。その結果一度はヨーロッパ側に接近した。これが押し戻された理由はウクライナのクチマ大統領に似ている。長期政権の腐敗をヨーロッパが許さなかったのだ。

2020年8月の選挙では有力な反体制派を排除して公平性が疑問視される選挙を行った。最後まで残ったのツィハノウスカヤ候補も敗北しリトアニアに逃れた。デモは収まらず警察の取り締まりは次第にエスカレートしてゆく。

つまりつい最近まで独裁国家といえどもデモの自由はあった。これが急速に奪われてゆく。

2021年5月にベラルーシ領空を飛行していた飛行機が強制着陸させられ反体制メディアの記者が逮捕されるという事件が起こる。飛行機はギリシャからリトアニアに向けて飛行している途中だった。ベラルーシ政府側は「飛行機に爆弾があるかもしれないという通報を受けた」と抗弁した。危険物は見つからなかった。さらにデモの報道が禁止された。

この後、イギリスやEUではルカシェンコ大統領を追い詰めるための経済制裁が行われる。ベラルーシが貧困化に向けて歩み出す最初の一歩だった。

TBSの報道特集でベラルーシ市民に金平キャスターがインタビューをしていた。市民たちは政治に対する話はできないと怒ったり悲しげに「我々にはもうなにもできないのです」と言っていた。中には逮捕覚悟で戦争には反対だという人もいたが、それも今では個人の意見に過ぎない。集会の自由や表現の自由というものがどれだけ大切かがわかる事例だ。

これに対してルカシェンコ大統領は「私も戦争に反対なのだから戦争に反対する人を逮捕するはずがない」と余裕で対応する場面が報道特集には出てくる。これだけを見てもよくわからないのだが、すでに集会が禁止されているためルカシェンコ大統領には余裕があるということがわかる。

だが、ベラルーシの未来は明るくない。

朝日新聞の2021年6月の記事によるとEUはベラルーシの基幹産業に制裁を加えている。カリウム肥料、石油製品、タバコ製造の機会などが制裁対象になる。イギリスは金融・貿易・航空産業で制裁が科され、ルカシェンコ体制への圧力を強めている。これは8月の日経新聞の記事である。アメリカ合衆国も大統領や関係者への圧力をかけ続けていると東京新聞が8月の記事で伝えている

この制裁が発動してからもベラルーシは干上がっていない。つまり欧米の制裁は効果を上げてはいない。だが、財政は確実に厳しくなっている。ベラルーシはすでにIMFからの借り入れがあるのだがIMFは「欧米から制裁されているのだから歳出削減をするべきだ」と言っている。ウクライナ侵攻が起こる前の記事なので状況がさらに悪化する可能性が高い。

こうなるとベラルーシは貧しくなったままでロシアに飲み込まれる確率が高くなってしまう。すでに連合国家創設のための条約があり経済や軍事面での統合が進んでいる。

ウクライナは民主主義を選んだせいで戦争に巻き込まれベラルーシは独裁を選んだせいでロシアに飲み込まれる。選択肢は違ったがロシアに近いという理由で両国民とも悲惨な運命を選択させられることになる。ロシア人は辛抱強く経済制裁に耐える、ベラルーシ人は忍耐強く独裁化を受け入れる、ウクライナ人は過酷な運命に自分たちの人生をかけて立ち向かっている。

プーチン大統領一人が引き起こしたことではあるのだが多くの人々が犠牲になっている。そして国際社会も国連もそれを止めることはできない。

ルカシェンコ大統領は筋金入りの独裁者であり今までもロシアとヨーロッパの間をうまく泳いできたという実績がある。ロシアの核を自国に置かせるような憲法改正を行い自国領をロシアの軍隊が通過するのを容認したりしている。だが、一方で自国の軍がロシアとともに軍事行動をすることはない。

欧米が期待するのはベラルーシの国民がルカシェンコ大統領を排除してくれることなのだろうが、集会の自由はなく選挙も操作されておりルカシェンコ大統領がいなくなる確率は限りなくゼロにちかい。こうなると「軍事的に介入する」という戦争オプションしか残らない。だが戦争オプションは確実に核兵器という報復を誘発するだろう。今、ベラルーシを含むヨーロッパはそういう状態になっている。

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