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中国がコロナのどさくさに紛れインドから領土を奪おうとして撃退される

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中国が力による現状変更を狙っているという指摘は常日頃からあった。東シナ海・南シナ海の現状はよく報道されるのだが伝わってこないニュースもある。それがインドと中国の「紛争」である。インド側から見れば自衛のための戦いだが長年膠着しているため「お互い様の紛争」とみなされることも多い。中国の貪欲な領土よくがわかる事例である。

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1962年の紛争以来、中印国境では小さな衝突が度々起きていたようだ。だがこれが近年エスカレートしている。

2017年8月両国の軍隊がヒマラヤ地方の係争地で小競り合いを起こした。場所はラダック地方のパンゴン湖である。中国軍兵士が投石のうえインド領内に侵入しようとした。ジャムカシミール地方の警察当局によるとこれは「比較的よくあること」なのだそうだ。

当時のNewsweekの記事によると一帯一路でパキスタンへの出口を求めている中国にとってこの地域は重要だという説明がある。確かにそうなのかもしれないのだがかなり複雑な連鎖反応を起こし最終的にはインド側がアグニという大陸弾道弾を準備するという事態に発展した。

明らかに過大なコストなので「仲良くした方がよっぽど建設的なのではないか」と思えるが、この戦いが終わる気配はない。

2020年にも殴り合いや投石があった。この時はこの時はインド側にも中国側でも死者が出た。中国側が一方的に進出しようとしていたようだ。中国軍が実効支配線をまたいでインド側に侵入しインド軍のパトロール活動を妨害したり野営地や集落を設置していたそうだ。6月16日の記事である。

6月17日のBBCの記事ではインド兵の死者は20名以上だったことがわかった。当初将校1名と他2名の合計3名がなくなり、続いて17名が死亡した。双方とも「銃弾は使っていない」と主張しておりこれが本当であれば素手と投石で20名の死者が出たことになる。

中国も武力行使が事態をエスカレートさせかねないことはわかっている。このため領土紛争には別の手段を使うことが多い。中印国境の事例ではそれは「投石による挑発」だったわけだ。

だが背後では軍事力の展開が始まっている。新型コロナウイルスが蔓延している間に中国は6万人の兵力を集めてインド側に圧力をかけ始めた。

Newsweekによるとインドは中国への経済依存を止める政策に出た。また欧米との連携を深める戦略を取った。ロシアとの関係を維持しつつインドがクワッドにも傾倒してゆくのはこうした理由による。ラダックの軍備も強化された。空軍はミグ29・スホイ30・ミラージュ2000などの最新戦闘機を配備した。その後2021年6月のBloombergの記事によるとインド側も5万人の増員した。国境の警備は増強されており40%増えて20万人になっているそうだ。

Bloombergの記事には「攻撃防御」というキーワードが出てくる。これは日本が今議論している敵地攻撃能力に似た概念である。中国がインドを一方的に侵略していたのだがこれからはインドも中国を攻撃したり拠点を占拠できるようになるという戦略変更だ。今後、中国の出方によっては核兵器保有国同士での長期的な緊張関係がエスカレートする可能性がある。

緊張は今も続いてる。ウクライナ侵攻が始まる前の1月の時事通信の記事は「パンゴン湖には中国の橋の建設が進んでいる」と伝えていた。また、インドの実効支配地域に中国風の名前をつけたり集落を作ったりしているそうだ。橋が作られると向こう岸に攻め込むことがより容易になり中国が攻めてくるかもしれない。インド側は警戒している。

なぜ中国がインドに攻め込むのかはわからないが、結果的にはインドの対中国感情は悪化している。インドはロシアや欧米との関係を深め「中国包囲網」を形成しつつ自分たちも大陸弾道ミサイルを準備するという事態になっている。一部には一帯一路の一環でこの地域が重要なのだという人もいるのだが、ダライ・ラマがインドに逃げたことに足しする報復から意地になっているだけと見たほうが自然なように思える。

いずれにせよ欧米中心の支配体制が崩れれば各地でバランスの変化が起こり紛争が同時多発的に広がる可能性がある。世界が二つの陣営に別れて戦う第三次世界大戦とはまた違った「バトルロワイヤル」的な戦争が始まる可能性があるわけだ。

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