本格的な外交ウィークが始まる。プーチン大統領が世界の悪者になり西側は経済制裁を通じて自分たちの力を誇示することになるだろう。だがこれはアメリカ一極支配大勢の終わりの始まりになりそうだ。
バイデン大統領が盛んにプーチンは戦争犯罪人だというキャンペーンをやっている。プーチン大統領はこの批判にかなり苛立っており自身を支援する集会を国営放送に流させた。演説は全て流れたそうだが技術的トラブルで途中中断があったそうだ。サーバートラブルということで外から攻撃された可能性もあるのだが中で抵抗している人がいる可能性もある。中からの犯行であればかなり組織的な抵抗運動が起きているのかもしれない。
これだけを見ると西側の経済制裁が効いているように思える。だが、これとは違った動きも出始めている。すでに伝えたようにサウジアラビアやUAEなどはバイデン大統領にかなり腹を立てているようだ。アメリカの「石油価格を下げてくれ」という申し出に応じなかったのだがこのほど決済の一部を元に移行する。これまで国際通貨としてはドルが使われてきたのだがそれに逆らう動きである。平時であればアメリカも何か手を打ったのだろうが今はそれができない。産油国の協力なしでこの経済封鎖を乗り切ることはできないからである。
経済封鎖が続けばロシアは中国に依存せざるを得なくなる。ロシア経済はそれほど大きくないので中国がそれを救済するのはそれほど難しくない。ただ、現在のドル支配体制で中国とロシアの銀行システムが結びついてもそれほどのインパクトはない。中国元は国際通貨ではないからだ。
ロシアと産油国が結びつくことで中国は長年の待望だった元の国際通貨化に踏み出しすことができる。アラブ圏がこのまま元建て決済を大きくしてゆけば「国際通貨元」の存在感は増してゆくだろう。これに乗る国も出てくるかもしれない。かといって中国依存が高まっているアメリカが報復として中国経済を「切る」ことはできない。
今回のロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍の軍事力が言われているほど強いものではないことはわかった。さらに言われているほど国内統制も強くなさそうだ。西側が恐れているのは核兵器だけである。イラクのように大量破壊兵器を持っていると言いがかりをつけられて攻め滅ぼされる国もあれば既得権として大量破壊兵器を持っていることで助かる国もある。
だが核兵器を持っていてもロシアが国際経済に再デビューするのはほとんど不可能になった。あとは中国の従属経済として生き延びるしかない。
だからといって中国はロシアとブロック経済を組む必要もない。中国はロシアと欧米が争っているのを横目に見つつ漁夫の利を狙えばいい。ロシアを救済することもできるし救済せずに西側に恩を売ることもできる。SWIFTに対抗する形でCIPSを提供するということも考えられる。ロシアには選択肢はない。
日本では今回のロシアのウクライナ侵攻が中国の台湾侵攻につながるのではないかと恐れている人がいる。今、中国が軍事的なリスクを支払ってまで侵攻する必要はない。なかなか美味しいポジションにいるからである。
アメリカの没落という言い方をすると一定数の支持が集まるのだが、中国の勃興というと嫌がる人が多い。同じことを言っているだけなのだが表現の仕方によって評価が変わってしまう。日本人は損得勘定で問題の是非を判断する傾向があり大局的で戦略的な行動ができない。
さらにいえば、中国が台頭したとしても「西側のフォロワー」戦略をとっている日本には対抗策がない。相対的に日本の地位が落ちてゆくのを指をくわえて眺めているしかないということになる。日本人がこの問題を正面から見据えることはないだろう。
アメリカの国際的な地位の低下は何もバイデン大統領のせいではないのかもしれない。だが、彼の傲慢なやり方は反発を生んでいる。今もプーチン大統領を「戦争犯罪人」だと罵り続けている。かなり頭に血が上っているようなので「自分がかなり大きな穴を開けてしまったこと」に気がついていないかもしれない。