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人を怒らせる天才のバイデン大統領になぜアメリカのエスタブリッシュは期待したのか?

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ロシアのウクライナ侵攻について考えるとき「もし大統領がバイデンでなくトランプだったら」と考える人は多い。バイデン大統領が外交で失敗を重ねているからである。色々なエピソードを紐解くとこの人は周りを怒らせてて問題を作り出す天才だということがわかる。

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最近、怒らせたエピソードを二つ紹介する。

アメリカは再三原油価格調整についてアラブ産油国に協力を要請したのだが、産油国は協力を拒否し続けてきた。この原因はバイデン大統領のコミュニケーション能力の欠如にあるようだとロイターが分析している。

UAEの駐米大使が増産支持を表明すると価格が下がりOPECプラスの拡大会合で正反対の主張をすると価格がまた上がった。UAEの一言ひとことが石油の価格に大きな影響力があることを市場とアメリカ合衆国に見せつけたわけである。

この背景にあるのはサウジアラビアとUAEのアメリカに対する不信感なのだとロイターは書いてい。だが、記事を読んでもなぜサウジアラビアとUAEが怒っているのかがよくわからない。ハイコンテクストなアラブ圏らしい分かりにくい怒り方なのだ。

ロイターが伝える表向きの理由はフーシ派がアブダビを攻撃した直後にバイデン氏から電話がなかったことにUAEの実質的な指導者であるムハンマド皇太子が腹を立てているというものだ。電話をしてきたのが3週間後だったというのだ。

しかしお互いの話は微妙に食い違っている。何か行きちがいがあったのは間違いがないのだが一体何が気に入らないのかはよくわからない。結果としてとにかく何か怒っているということだけが伝わってくる。

もう一つのエピソードは内政に関するものである。

ビルド・バック・ベター法案が難航している。基本的なインフラ整備策はまとまったのだがその後の法案を民主党のマンチン議員が反対したため実現の見通しが立っていない。マンチン議員はその詳しい内容は明らかにしていないのだがバイデン大統領ではなく「強引なスタッフ」による行きちがいが原因だとしている。だが、その後議員とバイデン大統領はコミュニケーションを取り続けている。行きちがいならとうの昔に改善しているはずである。やはり議員は大統領のやり方に怒っているのだろう。

失言癖があるといわれるバイデン大統領だが、おそらく大統領の問題は失言ではなく失言の裏側にあるひととなりにあるのではないかと思う。

ではバイデン大統領が候補者時代にはどういう伝えられ方をしたのか。気になって調べてみた。BBCの記事がバイデン氏が民主党の候補者になった時のことを伝えている。支持者の中には民主党から出た元大統領のビル・クリントン氏とジミー・カーター氏だけでなく共和党ブッシュ政権の国務長官だったコリン・パウエル将軍などが含まれている。共和党側の推薦者は反トランプで結集した人たちである。

人々は口々に「バイデン氏が内政だけでなく外交や軍事政策についても経験豊かで諸外国から信頼されている」と褒め称えたそうだ。現在わかっている大統領のプロファイルとは全く一致しない。

トランプ大統領のようにコントロールできない大統領は困る。かといって左派的な政策を取り先行きが読めないサンダース候補も不安だという人たちが「バイデン氏の外交手腕」を褒め称えたのである。

一方で、NHKはバイデン候補の失言癖にも言及していた。どうやらかなり決めつけが激しい人物でセクハラ疑惑もあったようだ。失言は黒人、障害者などに向けられている。セクハラ疑惑も入れると見下している人を軽視する傾向があることがわかる。彼が彼の価値観で見下している人に協力を求めても「あの時バカにしていただろう」というわだかまりが残ってしまうのだろう。だから、なかなか協力者が集められないのだ。

彼が嫌われる原因はそれだけではない。彼の策略の浅はかさもバイデン大統領に人望が集まらない理由になっている。これに憤っている人がいる。普段は中国共産党に厳しいことを書いている遠藤誉さんだ。

バイデン大統領は副大統領時代にもウクライナをそそのかしている。普段は中国批判に忙しい遠藤誉さんがかなり興奮した調子で「バイデン大統領がウクライナを見捨てた」と指摘する。

息子を引き連れて度々ウクライナを訪問し、当時のポロシェンコ大統領をそそのかし、ウクライナ憲法に「NATO加盟」を努力義務とすることを入れさせた。さらにプーチン大統領が刺激されることがわかっていてウクライナに180基の対戦車ミサイルシステム(シャベリン)を配備したのだという。

ところが、プーチン大統領が怒り出すと今度は一転してウクライナには派兵しないと宣言してしまう。策略家ではあるがうまくいかないと逃げ出してしまう。これが対トランプ・対サンダーズとしてアメリカのエスタブリッシュメントたちが持ち上げたバイデン氏の実情だった。もはやこういう人しか残っていないという状態だったのだろう。

アメリカは先の読めないトランプ大統領に疲れ果てた結果、おそらく全く人望がなく人を怒らせる才能を持った政治家を国のリーダーに選んでしまったことになる。

現在のロシア・ウクライナ問題の原因の多くはもちろんプーチン大統領にあるのだが、おそらくはアメリカの副大統領・大統領がバイデンでなければ問題はここまで大きくならなかったのではないかと思う。ただそれは、2014年に始まるクリミア侵攻時代から始まっていた。すでに種がまかれていたのだろう。今は単にその収穫をやっているだけなのだ。

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