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核兵器を持った重宝独裁国家という悪夢

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ロシアのプーチン大統領が粛清を始めたというニュースがあった。核兵器を持った独裁国家という悪夢が現実のものになろうとしていると感じた。さらにロシアは諜報機関が軍を引っ張るという独特の構造がある。謀略が失敗すると軍が介入するという構造があるのだ。

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毎日新聞によると「粛清」は情報・治安機関の露連邦保安庁(FSB)の対外諜報部門のトップが自宅軟禁されたという内容だ。計画の遅れに対して責任を取らされたという見方があるのだそうだ。

だが普通に考えると諜報機関は軍が主導する戦争の手助けをする存在にすぎないはずだ。なぜプーチン大統領は遅れを諜報機関のせいだと考えるのだろうか。

兆候はいくつかあった。まずFSBから内部文書が出ていた。大統領の気持ちは決まっている。それに忖度するために「戦争が始まればロシア軍が簡単にウクライナに侵攻できる」というシナリオを書いて提出した。するとこのシナリオに従って実際に戦争が開始された。経済の専門家は意思決定からは外されていたようだが、軍の幹部は会議に出席している。ではその会議とはどんなものだろうか。BBCが中身を解説しているのだが、諜報機関のトップと軍関係者が集まっている。国防大臣は制服は着ているが軍歴は内容だ。つまり軍はただ言われたことだけを実行する機関のようなのだ。

BBCの分析によるとプーチン大統領を支える3人のうち2人が「情報組織」の現役長官である。ちなみにWikipediaと違いBBCは「局」と訳している。ロシアには二つの情報機関がある。対外的な情報活動を行うロシア対外情報庁(SVR)と国内を担当するロシア連邦保安庁(FSB)である。

  • ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記:1999年から2008年までFSBの長官を務めた
  • アレクサンドル・ボルトニコフ連邦保安局(FSB)長官:現在のFSBの責任者
  • セルゲイ・ナルイシキン対外情報局(SVR)長官:現在のSVRの責任者。プーチン大統領に答えられずイエスかノーかと詰問されたというのはこの人である。

このプーチン大統領に近い諜報機関から悲観的な情報がリークされ粛清者も出たらしいということはプーチン大統領がかなり心理的に追い詰められているということがわかる論拠になる。

さらにここから実は軍がラインからは外されているということもわかる。プーチン大統領が信頼しているのはあくまでも情報機関の人間である。BBCは「ショイグ国防大臣は軍人としての経験がなく制服組のゲラシモフ参謀総長を頼らざるを得ない」と書いている。

今回すでに3名のロシア軍将官が殺害されている。さらにキエフに進軍するロシア兵には十分な食料が与えられていなかったようだ。さらにロシアの戦車は整備されておらずウクライナの春の泥に囚われて前に進めなかったようだという観測がある。つまり諜報機関が主導する戦争に軍が従っているという構造になっているばかりか、かなりの犠牲者が出ているということになる。

情報機関はプーチン大統領に忖度して甘い見通しを提出する。そしてうまくいかなくなると部下に責任が押し付けられる。さらに軍隊は自分たちがどんなに不利な戦況であるということがわかっていてもプーチン大統領やシロビキのメンバーには逆らうことができない。

これだけを見ると「そのうちロシア軍は自滅してしまうのではないか」と思える。ところが実際にはキエフへの進軍は続いており核兵器も持っている。アメリカは生物化学兵器の実験をしていたなどといいだしたが、実際にNATO加盟国であるポーランドを刺激したのはポーランド国境から100km以内にあるリビウという街への攻撃だった。ポーランド大統領はNATOも参戦に向けた議論をすべきかもしれないと言っている。

ロシア人は不確実耐性が低いのだということを考えると自分たちが不利になるとなりふり構わず無茶な作戦に出る可能性がある。ロシア軍は統制が取れなくなるだろう。さらに東部ドンバス地方では義勇兵(とロシアが呼んでいるが実際には傭兵のようなものようだ)がシリアでやっていたような市街戦を実行するようだ。傭兵なので指令系統が乱れれば上官の命令は聞なくなるだろう。

プーチン大統領はおそらく現状が把握できなくなっている。実際にベラルーシの大統領には楽観的な見通しを語っていたようだ。ドイツ首相とフランス大統領もプーチン大統領は戦争を止める気はなさそうだと言っている。

近いうちにロシアが統制の取れない悪夢のような状態に陥る可能性がある。だが西側諸国はプーチン大統領と交渉を続けざるを得ない。我々は核兵器を持っていて誰が意思決定をしているのかさっぱりわからないという悪夢のような国と対峙することになるのかもしれない。

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