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プーチン大統領が狂人かそうでないのかを論じるのはなぜ大切なのか?

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プーチン大統領は気が狂っているらしいという話が出た時、日本では「精神科医はこうしたラベル貼りには慎重だからこう言う議論はすべきではない」という議論があった。だが、精神分析がラベル貼り(レッテル貼りだ)という決めつけは間違っている。では、この考え方はなぜ間違っているのだろうか。

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現在のプーチン大統領の精神分析についての大枠の議論を見てみよう。プーチン大統領は気が狂っているわけではないが情報がかなり偏っており全体が把握できておらず間違った意思決定をしている可能性があるというのが大方の見方である。視野狭窄に陥っているというのだ。

ではなぜこうした分析が重要なのか。それは情報が限られたなかでプーチン大統領と交渉をしなければならないからである。ここから日本人の議論との違いが見えてくる。

  • 日本人は不確実性を嫌うので物事を固定的にみたがる。そのため自分の固定概念と違ったものを見ると「あれは狂っているのだから気にしなくていい」と考える。これがレッテル貼りだ。
  • だが動的な状況を捉え対応するためには情報がない中でできるだけ類推を働かせて情報の精度を上げる必要がある。

日本人のラベル貼りは意思決定を遅らせるために用いられる。つまり思考停止の道具なのだ。

こうした分析は「交渉当事者がどれだけ正確に情報を把握しているのか」というテストにもなっている。アメリカもイギリスもプーチン大統領と交渉を進めるのか、それとも経済制裁を加えるのかと言う議論になっている。情報は限られているのだができるだけ精度が高い情報を集めて意思決定をする必要がある。そこで議会は現状を聞いて情報分析をしている人がどれくらい準備をしているのかを確かめる。これが議論である。

こうした交渉は不確実性を嫌い意思決定を先延ばししたがる日本人にはなかなか理解しにくい。日本人は「情報が確定するまで意思決定を保留しよう」と考える気持ちが強い。このため「まだ情報が足りない」となかなか意思決定をしない。間違った交渉をして損をするのを恐れる気持ちが強いからである。こうした傾向をまとめて不確実性回避傾向という。

不確実性回避傾向が強い日本人は過去を過度に重要視する傾向もある。相手の理解をせずに自分の思い込みを相手にそのまま押し付けようとする。

  • プーチン大統領は実はいい人のはずだからそんなひどいことをするはずがない。だから交渉を継続すべきだ。
  • プーチン大統領は狂っているからどんな交渉をしても無駄である。

だが対立したからといってどういう意思決定をするかを議論したりはしない。そもそも意思決定が嫌いなので自分たちの思い込みをぶつけあったままで議論のための議論に明け暮れる。そのうち状況が変わって「結局何も決めなかったことが最善だったのだ」という方向に落ち着くことが多い。

こうした言論空間ではプロファイリングは成り立たず単にレッテル貼りになってしまう。プーチン大統領は狂っているから何を言っても無駄と交渉を諦めてしまうか、プーチン大統領は狂っているからアメリカが核爆弾でも打ち込んでやれということになってしまうのだ。

このようなプロファイリングは個人を理解するためにも役に立つのだが、社会全体を見ることもできる。つまり、ロシア人やウクライナ人の全体的な傾向がわかれば彼らが今何を考えこれからどこにゆこうとしているのかということがある程度つかめるはずなのである。

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