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経済浮揚に具体策を打ち出せなかったバイデン大統領

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アメリカでバイデン大統領初の一般教書演説が行われた。バイデン大統領はウクライナへの支援策では賞賛を得たが具体的な経済政策は示すことができなかった。ある意味プーチン大統領に救われた格好だ。

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まず政権に近いとされるCNNの記事を読む。ウクライナでの総立ちの拍手について触れる一方で、もともと演説の柱になった「生活費の高騰を抑える政策」が後ろに隠れてしまったと言っている。

バイデン大統領は困窮する労働者世帯への共感は示しつつ「多くの国民が実感していない経済回復については多くを語らない慎重さを見せた」と書いている。批判的な人たちであれば具体策がないと書いていたところだ。

民主党擁護の姿勢が目立つ。バイデン大統領の演説が民主党議員にとっていかに有利なものであるのかということが延々と書いてある。問題解決ではなく選挙というゲームが政治として語られるようになってしまった国の報道機関の末路という気がする。

専門家が多く読むであろうブルームバーグは事前予測として「気候関連法案の復活を呼びかける手はずになっていた」としている。だが大統領は具体的な政策には触れず「新しいパッケージは家計への節約になるだろう」とメリットのみ訴える予定にしていたそうだ。いろいろやってみて何かが当たったらそれを成果として喧伝する以外になくなっているのだが、そもそも色々やらせてもらえない状況になっている。まさに手詰まりといったところだ。

CNNは去年インフラ関連法案が成立したと書いてはいるのだが、ブルームバーグは「ビルド・バック・ベター」は議会で行き詰っていると書いている。通せるものを通してしまったためかえって総合パッケージが打ち出せなくなっているのかもしれない。政府がインフラに支出するところまでは合意が取れたが未来の投資にまでは予算が確保できていないということになる。

アメリカ合衆国は古くなったインフラの再構築に手一杯で未来にまではとても手が回らないのだろうということがわかる。

ロイターはまた別の書き方をしている。インフレからインフラへというフレーズが出たそうだ。この言葉遊びには一種の絶望感さえ感じる。

  1. インフレと戦うためには賃金を上げなければならない
  2. そのためにはアメリカで製造する自動車や半導体の製造コストを下げる。
  3. コストを下げるためにはインフラ投資と技術革新を拡大しなければならない。
  4. そのための投資がビルド・バック・ベターである
  5. 我々はインフレの議論をやめてインフラの時代(インフラディケード)を迎えなければならない。
  6. 具体的な政策はEV充電ステーション、水道管の交換、すべてのアメリカ人に安価で高速なインターネット回線を提供することである。

バラバラの経済政策を「ビルド・バック・ベター」に向けて無理やりに再構築しようとしている様子がわかる。これでは共和党はおろか民主党の中でバイデン大統領に懐疑的な人々を説得することもできなかったのだろうなということがわかる。

オバマ大統領は夢を語りなんとなく「ああ乗ってみてもいいかな」と思わせる力があったがのだがバイデン大統領にはオバマ大統領のようなカリスマがない。これが行き詰まりの原因なのだろう。爽やかなオバマと古めかしい昔ながらの老練な政治家バイデン大統領のキャラクターの違いである。

おそらく、プーチン大統領という悪役が存在しなければアメリカの議会はさらに分断を深めていたであろう。新疆ウイグル自治区の問題を持ち出したとしてもそれは到底カバーできない。しかしプーチン大統領はわかりやすい悪役であり実際に戦争犯罪で提訴されてもいる。これくらいわかりやすい敵キャラがなければおそらく単に手詰まり感が漂うだけの一般教書演説になっていただろう。

カリスマのないバイデンはプーチンに救われたのである。

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