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ロシアのウクライナ侵攻で予想される最悪のシナリオとは?

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今回のウクライナ侵攻で予想される最悪のシナリオが着々と進行中だ。武力による完全な自由主義の敗北である。これまでは空想上の出来事だったがそれが今まさに起ころうとしている。

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プーチン大統領は「ミンスクに停戦合意団を送る用意がある」と表明した。この件について積極的に書き込みを続けている鈴木一人さんはゼレンスキー大統領はこれに応じるしか選択肢はないだろうと書いている。

ミンスクはロシアの同盟国であるベラルーシの首都だ。また先の停戦合意であるミンスク合意が行われた土地だ。つまりゼレンスキー大統領に「先のミンスク合意は間違いでした」と認めさせる意味合いがあるものと思われる。ウクライナに恥をかかせ彼らを「無駄死にした抵抗勢力だ」と処断するために考えられたセッティングである。プーチン大統領はそれくらいウクライナの西側への離反を恨んでいるのだ。

戦争はいけないのだからこれは良いシナリオだろうと思う人もいると思う。だが、これは自由主義・民主主義陣営にとっては最悪のシナリオである。なぜならば長い間の外交交渉など無意味で武力で脅かすのが一番手っ取り早いという成功事例になってしまうからである。

同時にアメリカ合衆国はロシアを非難する口実をなくす。

  • ウクライナで民主的に選ばれた大統領が自ら決断した

ことになってしまうからだ。西側のメディアの多くが「1989年以降作られてきた世界の崩壊」と解釈するのはそれが理由だ。BBCはプーチン大統領をただのビジネスマンだとして現実から目を背けてきたせいだといっている。確かにその通りかもしれないが今それを言い出してももう遅い。

ウクライナを逃げ出す決断をしたものの国境付近で追い返されてきた人がいる一方で銃を持って戦おうとしている人もいる。だがゼレンスキー大統領が「民主的に」停戦を決断した瞬間に彼らは(死んだ人も含めて)テロリストということになってしまう。つまり反逆者扱いされ裁かれても文句は言えないくなってしまうのだ。

今の所このプーチン大統領のシナリオはうまく進んでいない。ウクライナ軍に対してクーデターを呼びかけているということはまだ戦闘が続いていて制圧の見込みが立っていないということになる。だが西側の支援を失ったウクライナ軍がいつまで持ちこたえられるかは甚だ疑問である。イギリスとEUはプーチン大統領への制裁を決めたようなので外交的な交渉は全て打ち切られたということもわかる。

民主主義陣営の敗北は日本の周辺事態を大きく変える。まず中国はゼレンスキー大統領が「西側は何もしてくれなかった」とする動画を報道しているようだ。特に何も加えることなく淡々と流しているのだが事実であるだけに反論のしようがない。結局色々言っているがアメリカは何もできないと中国人は考えるだろう。誇張はされるだろうが、あながち間違ってもいない。

さらにインドはこの問題について静観の構えだ。核兵器を持って対峙するパキスタンもプーチン大統領を訪問しており南アジア問題について話し合ったという。つまりこの地域についても何もしてくれないアメリカよりもロシアの方が重要だということになりそうだ。

先に書いたようにブダペスト覚書に実行力がないということがわかったために韓国でも核武装の議論が起こりかねない。アメリカは容認しないだろうが中国はわからない。THAADを破棄して弾頭の向きを変えてさえくれれば「あとはよきにはからえ」となる可能性もある。

もちろん日本はアメリカの支配下にある限り中国シフトをあらためロシア方面の軍事力を高める必要が出てくる。つまりに正面の対策を迫られる。いざという時にアメリカは何もしてくれないという不安感があるなかで日米同盟にしがみつくことになるが、おそらく岸田総理には何の対策もない。単に国際社会の流れを読んで失敗のないようにやってゆこうという戦略しか持っていないからである。

共和党はバイデン大統領を非難し続けているが「軍事力を増強し制裁を強めないと次は台湾だ」などと問題をエスカレートさせているだけである。トランプ大統領に至ってはプーチン大統領を軍事の天才だと褒め称えてみたかと思えば一転してプーチン大統領を弱腰だと非難している。言っていることは無茶苦茶だがバイデン批判という筋は通っている。「とにかく凋落したアメリカの現実を認めたくないから全てを民主党の大統領に押し付けてしまえ」と考えていることになる。

つまり、ゼレンスキー大統領が「民主的に停戦合意を決めた」瞬間にベルリンの壁が壊れたのと同じようなインパクトが働くことになる。そして残念ながらそれに向けて徐々に道が作られている。つまり、雪崩を打って自由主義社会が溶解を始めることになるわけだ。先進国が崩壊することはないだろうが周辺の各国では確実に動揺が広がるだろう。

Twitterで「戦争反対」を叫んでいる人たちが自由主義社会の崩壊を望んでいるとは思わないが実際に起きるのはそういうことだ。おそらく彼らに問い詰めても「私は難しいことはわからない」と問題の理解を拒むだけなのであろうとは思う。だが彼らが直視することを拒もうが現実は変わらない。

だがその一方で自由主義を守るためにウクライナ人だけが戦い続けるべきだなどとも言えない。結局我々は何もしないことで自らを敗北に向けて動かしてきたことになる。一旦始まった以上は見つめ続けるしかないわけだ。

これほど辛いことはない。

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