ざっくり解説 時々深掘り

隠蔽の露呈 – やはり日本政府はコロナ陽性者数を少なく見積もろうと奔走していた

カテゴリー:

隠蔽が露呈した。週刊現代が「田政権が都道府県に「PCR検査を抑えろ」の大号令 交付金差配の内閣府を通じた圧力か」という記事を出している。岸田政権批判で終わらせたくなるが「ああやっぱりな」とも思った。日本政府は安倍政権の頃からPCR検査数を抑制しようとしてきた。今までは疑惑だったがやはりやっていたんだなと思った。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






週刊現代の記事は地方創生臨時交付金を交付する地方創生推進室がPCR検査抑制の通達を出していたから岸田政権が地方自治体に圧力をかけていたと主張している。これを読むと岸田政権批判をしたくなるし逆に「マスコミが煽って新聞を売ろうとしている」という気持ちになる人もいるだろう。

政府の通達を見ているとそこまでの意図はないんだろうなという気がするが結果的には隠蔽になっている。

  • PCR検査キットが足りない。陽性者が爆発的に増えると調整が難しくなり「無料キットが足りない」としてマスコミから非難されるだろう。
  • PCR検査キットを増やせということになれば予算を超過しかねない。あらかじめ需要がわからないと予算の取りようがない。

では何に問題があるのか。なぜ日本政府はコロナ感染者を少なく見積もる必要があったのか。それは政府の失策を隠すためではない。政府が根源的に持っている無能力さと議会の怠慢を意味している。では根源的な無能力とは何か。

日本は第二次世界大戦当時マルクス主義の計画経済を入れ、これが戦後の省庁マネジメントの基礎になった「半社会主義国」である。だがこのやり方が通用するのは生活必需品の製造業レベルまでである。つまり見通しが立つものでなければ対応ができない国なのだ。

これまでなんども指摘してきた通りコロナはすぐ先の予測すら難しい疫病である。だが、官僚組織には1年くらい根回しをしながらコロナの予算編成するというマインドセットが残っている。また議会与党は見通しが立たないのならできるだけ多くの予算を分捕っておいて自由に分配したいという気分が働く。このため政府が持っていた調整スキームが瓦解した。具体的には単年度予算が崩れて長期化し官僚がそれについてゆけなくなった。

だが、話し合いによって問題抽出ができない左派リベラルにもその構造はわからない。そこである人は「政府は陽性者数を隠蔽しようとしている」という極端な主張をする。国民民主党や連合はもう与党に擦寄らないとやってゆけないと感じている。

だがおそらく厚生労働省もこの基本的な構造がよくわかっていない。とにかく需要が読めないものは抑制しないと失敗を指摘され人生が終わってしまうという恐怖心だけが強い。このため強権的な菅政権下ではとんでもない言い訳が横行していた。東京新聞が2020年10月の厚生労働省の言い訳について書いている。政権は検査数を増やすと言っていたのだが官僚の側は「偽陽性となる人が多く病院に殺到して医療崩壊が起こる」と主張していた。

おそらく「予定が狂えば自分の人生が崩壊する」というのが本音だったのだろう。なりふり構わない抵抗をしていたが菅政権はこの言い分をかばっていた。

放任の岸田政権は今回の通達のようなものを(マスコミが騒ぎにしない限りは)放任するのだろう。緊張が解けて弛緩してしまったのではないかと思う。もはや無能力の根源を探る気力もなく次の選挙のことで頭がいっぱいだ。

もちろん与党だけが悪いわけでない。先に述べたように国民民主党は野党という立ち位置を放棄しようとしている。財政的にもはや野党は成り立たない。野党政治家では食っていけないのだ。さらに立憲民主党も長い政権批判を通じてこの構造変化について見抜くことはできなかった。むしろ「菅政権は何か隠蔽しようとしているのですか?」と執拗に攻撃を繰り返し、彼らを硬化させるだけに終わった。おそらく菅政権が検査数を増やそうとしていたのは本当だったのだろう、官僚恫喝内閣だったため官僚の不安を解くことはできなかったというだけの話だ。

おそらくこうした「現状がコントロールできないのなら統計をコントロールしよう」という狂った共産主義者のマインドセットだけが生き続けている。

こうした需要が読めないものには取り組まないという姿勢は割と行政ではよく見かける。この巨不信への対応ができない限り日本の政権はコロナのような危機には対応できない。つまり、おそらく短期で政権が交代し続けるということが頻繁に起こるはずだ。あるいは国民の側がどっちみち政治には問題解決ができないと諦めてしまうのが先かもしれない。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで