ざっくり解説 時々深掘り

ウクライナにつながるプーチン大統領の深い恨み

ウクライナ状況が不安定化してきた。東部では攻撃が起き始めており双方が相手がたを非難している。最新の情報では東部では総動員体制が敷かれウクライナ軍側は死者が1名出たといっているそうである。どうしてこうなったのか?ということを突き詰めてゆくと「欧米のせい」ということになる。もうすこし深掘りすると欧米の態度に怒ったプーチン大統領が欧米に復讐を始めたのである。つまり根元にはプーチンの恨みがあるのだ。

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今回のウクライナ侵攻の直接の原因はミンスク合意による先延ばしの破綻だ。ヨーロッパはウクライナについて違う相手に違うことを主張してる。これが破綻しかけている。

  • ウクライナがNATOに加盟するかどうかを決めるとロシアには説明している。
  • ゼレンスキー大統領がNATO入りを熱望しているがヨーロッパはそれに答えていない。

さらにミンスク合意でも異なる対応をしている。

  • ロシアの要求を受け入れてまず東部二州に特別の地位を与えようとしてきた。またウクライナ領内でロシア市民権を持った市民を作るという二重国籍も容認しようとしている。
  • だが、ウクライナは「まず国境を画定しウクライナをNATO入りさせるのが前提」だと主張した。国境を画定させロシアに飲み込まれることを防ぎたいのだ。

矛盾した対応が出るのはヨーロッパの安定を基本にしてロシア・ウクライナ情勢を考えているからだ。ヨーロッパ目線なのでウクライナにとってもロシアにとっても満足がゆく解決にはならない。この矛盾がやがて破綻することは明白だったのだがヨーロッパはごまかしながら作業を進めてきた。

この記事は日経新聞のミンスク合意についての記事をもとに作っている。だが日経新聞が新しい記事をリリースした。日経新聞がプーチン大統領の恨みについて書いている。登録が必要なのだが面白いので是非読んでみるべきだ。

プーチン大統領が外交デビューした時、旧東側の領袖としてアメリカと協力して世界平和を守るという方向でアメリカにアプローチした。テロとの戦いで協力を申し入れたがブッシュ大統領は相手にせず有志連合を作ってイラクを攻撃した。これに怒ったプーチン大統領は2007年に方針を転換し「アメリカ一極での世界平和維持などあり得ない」と宣言し国際協定を次々と破り始める。その結果起きたのが2014年のクリミア併合である。

ここまでが日経新聞が書いている筋である。当時まだ勢いがあったアメリカ合衆国はソ連が崩壊しアメリカと西側陣営が勝者となったことで自分たちの能力を過大に評価していた。そこでテロとの戦いでも単独での世界秩序維持に乗り出す。ところが実際にはアメリカの実力は盛りを過ぎていたためにその後テロとの戦いが泥沼化することになった。大量破壊兵器など見つからなかったことからアメリカが同盟国を誘導するために嘘までついていたことがわかる。

しかしアメリカは自分たちの実力を過大評価し続けた。中国を資本主義社会に取り込めばやがて民主化を受け入れるだろうという見込みの元でWHOへの加盟を認めたりしている。結果的にアメリカから中国に仕事が流れた一方で中国は独特のナショナリズムを肥大化させ習近平体制の独裁志向へとつながっていった。

欧米は同じことをロシアに対してもやっている。表向きはパートナーとしてG7に迎え入れたがその扱いは二級市民扱いだった。最初にロシアがG7に参加しG8になった時に先進国首脳会議から主要国首脳会議に名前を変えたそうだ。ロシアは先進国ではないと宣言したのである。

シリア問題でアサド大統領を擁護したプーチン大統領は孤立している。これが2013年のことである。業を煮やしたプーチン大統領は協約を無視しクリミア半島を併合した、この2014年にG7を脱退するのだが「拒絶したのは我々ではなく欧米の方だ」と宣言した。

この記事の中にはプーチン大統領が「(望むなら)喜んでモスクワで会う」と言い放ったと書かれている。確かに今回のウクライナの件で慌てふためいているのは西側先進国の方である。プーチン大統領の言葉通り次々とウクライナをとりなすためにモスクワ入りしている。岸田総理も電話でプーチン大統領に対話を申し入れた。結局会話による解決策を拒否しロシアを侮り続けたのは西側の方であり武力をチラつかせて初めてモスクワにやってきたのである。現在では核兵器の先制使用までほのめかしているという情報もある。

国際政治学者の鈴木一人さんは「プーチン大統領はそんなにウエットな人ではない」と書いている。確かにその通りだが、怒りが頂点に達し「ふと冷静になる」という人がいる。こんな例えを思いついた。

イラついていた妻が急に冷静になる。もう怒っていないのかと思っていたところ歩い日突然荷物がなくなっていた。考えてみれば冷静になった時には離婚を決めていて淡々と準備を進めていたのだろう。

こうなると修復は不可能だ。ロシアの言い分を認めたとしてもプーチン大統領の恨みが消えることはないだろう。国際ルールの乗っ取って淡々と駒を動かすプーチン大統領はイラクのフセイン大統領のように始末できない。戦前の松岡洋右国連全権代表のように怒って席を立ってくれればいいがそれもない。バイデン大統領がキエフ空爆を主張するのもそのためだろう。つまり、ロシアが極端な行動に出ることを期待しているのだ。だがこれは焦った夫側の心理であり冷めきった妻の心理ではない。

プーチン大統領は西側の不遜な態度と武力への恐れという二面性を理解している。そんな彼が話し合いによる妥協をすることはないだろう。G7は来週外相会談を行いプーチン大統領への対応について協議するそうだが、おそらくそれをプーチン大統領が聞き入れる見込みはほぼゼロに近いものと思える。経済制裁が広がればドイツは冬に必要な暖房がまかなえなくなる。これを日本が支えるということは日本にも天然ガスが入ってこなくなるということを意味する。

もちろん「離婚する妻」のプーチン大統領はまだ何の成果も得られていない。大統領が得られて当然と考えているロシアへのリスペクトも得られていなければウクライナが手に入ったわけでもない。単に西側への恨みを募らせ世界を危険な方向に導いているだけだ。

いずれにせよ全体としてかなり危険な状態に入りつつある。脅しの中には全面核戦争も入っていると考えるとそのエスカレートぶりは実は我々が考えているレベルをはるかに超えているのかもしれない。

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