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立憲民主党の新しい自民党攻撃スタイル

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金曜日に予算委員会がNHKで中継された。野田佳彦さんと階猛さんの質問を見ていたのだが新しい戦略を見つけたと思った。かなり自民党に打撃を与えることができていたと思う。

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第一の戦略は自分たちが攻撃する代わりに自民党内の内部分裂を誘うという戦略である。つまり代わりに誰か別の人に攻撃させようとしている。野田佳彦さんがこの戦略をとっていた。まず岸田総理は官邸に住んでえらいと持ち上げた上で、大平元総理を引き合いに「岸田総理はもっと大きな絵を描くべきだ」と言っていた。これが攻撃になっていることを気がつかない人もいたと思う。

次に弁護士の階猛さんが二之湯国家公安委員長を裁判にかけていた。これはあたかも国民が裁判官になったような気分が味わえる。「判決を下すのはあなたですよ」というわけである。質問というより詰問になっていた。試しにこれをTweetしてみたのだが見ていた人たちにかなりRetweetしてもらえた。支持者たちはこの戦略が気に入ったようだで珍しく140以上ものいいねをもらえた。

フォロワーのいないTwitterアカウントですらこの反応なのだから、おそらく立憲民主党の幹部たちもいずれこのことに気がつくだろう。

二番目の話の構造はわかりやすい。国民は弱者として救済されたいわけではなく上から政治家を裁きたいと思っている。日本人は上下関係を常に意識しており「自分たちは上である」という自己評価を持ちたい。

さらに晒し者として二之湯さんうってつけだ。内閣の一員であり答弁に立たなければならないからである。法的には罪に問うのは難しいので司法による判決はない。すると却っていつまでも擬似裁判に付き合わなければならない。藤井敏彦さんは証人喚問しないと裁判ショーが行えないのだが二之湯さんはいくらでも晒しものにできてしまうということだ。うまいところを見つけたものだと思う。

一方で野田さんの攻撃はわかりにくい。宏池会を引き合いに出すことで清和会や保守が刺激できるという効果がある。岸田さんはアジアでの大きな枠組みの創設には後ろ向きだ。これは中国や韓国と組むことを意味し清和会(安倍派)が嫌がるからである。だが岸田さんが大平元総理の志を継がないと言えば今度は宏池会が動揺する。それがよくわかっているのだ。

自民党の保守派は岸田総理らがロシアとの経済連携を進めようとしていることについて「ちぐはぐだ」岸田総理を攻撃している。さらに甘利元担当大臣は「TPPにアメリカが復帰することはないだろうから新しくアメリカが気にいる経済連携を作りたい」と提唱した。

これまで立憲民主党が失敗してきた理由は簡単だ。立憲民主党の意見は聞き入れられず常に「ルーザー」だという印象を与えてきた。そこで直接攻撃するのをやめて別の方法で弱腰の岸田総理を弱体化させるという方向に切り替えたのだろう。階猛さんのようにわかりやすい方法もあれば野田佳彦さんのように素人にはややわかりにくい方法もある。

ただ、これは戦略ではなく戦術に過ぎない。つまり、これで攻撃に成功しても党内を固めてきちんとした政策が打ち出させなければまた支持者たちを落胆させせることになるだろう。

だが、Twitterでの反応を見ていると、そもそも支持者たちも立憲民主党に責任政党になってもらいたいとまでは思っていないのかもしれないという気がする。つまり、自民党をサンドバッグとして叩くことができ溜飲を下げることができさえすれば自民党が政権に居続けても構わないと考えている人が多いのかもしれない。維新の支持者にも言えることだが誰も国家運営の責任までは担いたくないのだ。

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