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2つの文春砲は岸田政権を揺るがすか

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岸田政権になって初めて本格的な文春砲が発動したのかもしれないと思った。文春砲の中身は二つある。一つは官僚の副業に不倫が加わったという週刊誌が好みそうな事件で、もう一つは京都府連のマネーロンダリング騒ぎである。どちらも政権には大したインパクトはなさそうだ。ではこれがいいことなのかというのが問題になる。おそらく国民が無反応というのはかなり悪いシグナルだろう。

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一つ目の騒ぎは経済安保法案の責任者・藤井敏彦室長「更迭」である。藤井さんが無届けで勉強会の講師をして謝礼を受け取っていたという話だ。公務員の副業は厳密にいうと禁止されていない。だが、本業に影響することがあってはいけないので届け出をしなければならないことになっている。つまり公務員の副業は制限されているだけだ。

おそらく週刊誌の本当の狙いは朝日新聞記者との不倫報道だろう。これは政権に清廉さを要求する女性有権者に響きそうだ。野党がチクチクと攻撃を続けるとボディーブローのように効いてくる。政権はこれを事前に防いだのではないかと思う。有権者が「筋道」よりも「イメージ」で政権選択していることがわかる。

安倍政権でこの手の問題が政権を揺るがしてきたのは守られる人たちが「総理のお友達」だったからだ。安倍総理は自分に尽くしてくれた人を守ろうとする。ところが岸田政権は学閥で人選するようなことはあっても最後まで官僚を守るということはないのかもしれない。むしろ事前に問題点を潰し国民の関心が自分たちに向かないようにして支持率を維持している。

ところがこの安全運転の姿勢が別のところで逆噴射を起こしている。総理の顔が見えないという理由で知事会や分科会から不満が聞かれるようになった。

第5波は自然収束だったためどの対策が効果的だったのかわからなかった。だから第6波で国民は「ワクチンなど打たなくてもそのうち収束するだろう」と期待しているようだ。この予測が裏切られた時おそらく国民はサンドバッグを探し始めるだろう。表に出てこない岸田政権がサンドバッグになるかあるいは別の人たちが叩かれるのかというのは偶然に決まる。「女性有権者は不倫が嫌い」というようになんとなくの好き嫌いで政治が決まってしまうことになるだろう。つまり政治の不確実性が増しているのだ。

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では次の問題はどうだろうか。内部文書入手 自民党が「1億円選挙買収」を行っていた《国会議員・党職員も証言》である。見出しだけをみると「第二の広島か」とか「自浄作用は働かなかったんだな」と食いつきたくなる。

府連は候補者から寄付をさせ一度府連を還流させてから有力者に配っている。収支報告書などにも正しく記載されているそうである。公表はしていないが隠しているわけでもないのだ。だからこれも大したインパクトはなさそうである。

河井夫妻は県連を通さないから罰せられたのであって組織を通せば合法になってしまう可能性が高い。公職選挙法とはそういう法律なのだ。つまり河井夫妻がやったことがいけないのは「県連を通さなかった」ことだけなのだ。

記事には宮崎謙介元議員の気になる証言が載っていた。宮崎さんはこの寄付に納得できなかったが「みんながやっているんだし」という理由で同意している。そして広島の事件があった時「うちも同じことをやっていたのでは?」と考えている。つまり候補者もよくわからないうちに「昔からこういうやり方をしているしこういうものだろう」と丸め込まれてしまった。

しかしこれは自民党が「自分たちの活動費さえ保障してくれるなら候補者は誰もでいい」と思っているということを意味している。もはや彼らは国政には関心がない。これが各地で保守系候補の乱立を引き起こしている。

これまでの政治地図は「自民党の負けが証明できなければ自民党の勝ち」というゲームだった。だが維新の登場でゲームのルールが変わりつつある。

先日「維新の議員がバブル入社組を指差して悪者にしようとしている」という記事を書いたのだが恐ろしいくらいの閲覧数を記録した。多くの人が世の中の不調を誰かのせいにしたいと考えているのだろうと思う。日本社会は常にピコピコハンマーを持った人たちであふれていて誰かを叩きたい社会になった。人々は携帯電話で叩ける誰かを漁るためにニュースを探している。維新はそこに目をつける。「お金をもらえれば応援できるのは誰でもいい」と考える自民党と常に叩く相手を探している維新との戦いになっている。一般のニーズは維新の方が高い。

普段の生活は成り立っているがどこか先行きに不安感があるという人が大勢いる。そこで「弱者救済」などと言われてもピンとこないという人が多いのかもしれない。立憲民主党は弱者救済に立脚しているため興味関心の対象にならなかった。色々言われているが「今はなんとかなっているから」という理由で誰も政治に問題解決など期待しなくなった。それよりも誰かを叩いてほしいと期待する人が増えている。

維新は「自民党の人たちはお金をもらって候補者を応援しているだけなんですよ」と宣伝するだろう。そして実際はその通りなのだ。おそらく京都府連は「若くて見た目が良い女性に受けそうな候補者」を探してきて「誰のおかげで議員になれたのかわかっていますよね」と言いつつタカるという体質になっている。これが維新に狙われている。つまりこの体質が温存されるということは維新が拡張する余地が増えるということを意味している。

維新の勢いは表面的には見えていない。おそらく今はせいぜい匿名の閲覧数くらいだろう。だが着実に勢いが増していておそらくあまりよくない方向に日本を進ませているように思える。政治は問題解決ではなく憂さ晴らしの道具になろうとしているということだ。

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