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維新が国会で「日本が停滞しているのはバブル世代のせい」とほのめかす

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最近Quoraでは政治と党派性について話している。政治が問題解決をせず党派論争に埋没しているという嘆きである。これに賛成する人はいるのだがそれでも「左派政党に得点を稼がせるわけにはいかない」という人はあとをたたない。

維新の登場で実際の国会論争はその先にゆきつつある。この日は岬麻紀さんという妙に滑舌がいい議員が奇妙な主張をしていた。「若者が仕事を見つけられないのは労働市場が流動化していないからだ」というのだ。

維新はこうして議席獲得を狙っているのだなと妙に感心した。

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維新について見る前にまず自民党と立憲民主党のじゃれあいについて見てみよう。アベノマスクについての応酬があったそうだ。記事になっている。厚生労働省の官僚が雑作業に追われるだろうと指摘している。

小川氏は、厚労省の担当課約30人で審査件数を割れば、1人当たり1万件を超える作業になるとして「国政上の意味があるか」と批判。アベノマスクを雑巾や野菜の苗床などに活用することも取り沙汰されていると指摘し、「有効な使い方か」とただした。

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それに対する政府の対応も漫画のようなものだった。「後藤茂之厚労相は「適切であるかというと有用とは少し違う」と苦しい答弁。」だったそうだ。意味がわからない。

さらにトリガー条項についても論戦が交わされたと書かれている。こちらは実際の議論を聞いていたのだが政府は「4月にどんな状況になっているかわからないから仮定の質問には答えられない」と言っていた。「予算なのですべて仮定というか予想なんだよなあ」と思った。

とにかく立憲民主党に得点を取らせたくないという気持ちなのだろう。そしてそれを応援する人がたくさんいるわけだ。ただ政府は対応に苦慮していて総理大臣の指示のもと関係閣僚会議をやるそうである。

これまでの立憲民主党は「国民はNHKしか見ていないのだからNHKが出ている国会中継で政府の間違いを指摘する」というゲームをやっていた。ところが維新は少し違う作戦に出た。「続きはウェブで」作戦である。

岬議員はまずリカレント教育について聞いていた。一応、就職氷河期対策ということになっているのだが、政府にやる気がないのは明らかだ。「やっている間」を演出するためだけの政策なのだろう。岸田総理も「3年のプログラムなので引き続き頑張ります」と対応していた。

だがこれは実は論戦ではなかった。岸田総理を「泳がせた」だけなのである。

岬さんは立憲民主党のように「政府の失策」を責めることはしなかった。代わりに「立憲民主党は労働流動性の確保をしないと若者が活躍できるようにならないと考えています。そのための政策は持っていますが、難しいのでここでは紹介できません!」と宣言していた。

これが「続きはウェブで」作戦である。もちろんバブル世代のせいで日本が停滞したなどと岬さんは言っていない。だがこの「流動化」の標的にされやすいにはバブル世代の余剰人材であることは間違いがない。こうして誰もが漠然と思っていることに形さえ与えてやれば後は自然に人々がロジックを組み立ててくれる。

立憲民主党の失敗は二つある。準備不足のまま国政に出て失敗したこととその後の政府の失敗を国会で証明しようとしたことだ。維新はそこを変えている。国政に出ずに地方にいる分には最終的な失敗をすることはない。だが地方行政は握っているのでそれなりの組織と発信手段がある。

テレビで成功した立憲民主党は広報でも自前のプラットフォームを作れなかった。だからNHKしか見ない高齢者にアピールするためには国会中継で自民党の失敗を証明しそれを新聞に見出しにしてもらわなければならない。

おそらく維新は自分たちのコミュニケーションチャンネルを持っているのだろう。例えば関西のテレビに出てくる松井大阪市長・吉村大阪府知事、今は私人ということになっている名コメンテーター橋下徹さん、YouTubeチャンネルなどである。地方にネットワークを作りウェブを通じた独自のチャンネル作りに成功しているので、国会中継に頼る必要がないのだ。

では彼らが持っているチャンネルはいいチャンネルなのだろうか。

「労働市場の流動化」は確かに労働市場の活性化に結びつく可能性がある。だがそれは日本のジョブ型の労働が成立しなければならない。ただそれよりも「バブル世代が居座っているからあなたたちにチャンスがないのです」と主張だけをしたほうが若者を引きつけやすい。問題解決には役に立たないが集票動機になる。

地道に問題解決を説くのではなく国民同士の競争意識を煽った方が手っ取り早く票が稼げることに気が付いた人が維新では生き残るのだろう。候補者同士の票獲得競争が選抜になっているものと思われる。

つまり、国民の感情に直に訴えかけるポピュリズム的なやり方が一歩進んだことになる。

菅直人元総理大臣もそのために利用されている。場外でケンカが起これば見物客が大勢やってくる。これが集客になっているのである。維新は最初からそうして成功してきた政党なのだ。

岬さんというのはどういう人なのか?と思い調べて見た。滑舌がいいのはフリーアナウンサーだからだそうだ。もともとは、大阪系ではなく河村名古屋市長と近い人らしい。リコール騒動で裁判中の田中孝博さんに代わり愛知県から立候補したとのことである。あの「あいトレ」騒ぎも党派性の議論を利用した政争だったのだと感じた。つまり「あいトレ」の人たちはみな集客に利用されていたことになる。

表現の自由などという難しい問題は解決しない。だが「おもしろキャラ」は記憶に残り、ちょっと投票してみようかということになる。

社会が成長している時には「お互いに助け合えばもっと社会が豊かになれる」という前提が通る。だが低成長社会は「お互いに点数を与えないようにし、誰かが何かを盗んだと指摘して自分の利得を増やす」という作戦の方が有効になるということだ。「維新はポピュリズム進化系だ」という言い方が悪ければ「低成長を前提とした新しい広報戦略」ということになる。

これについてQuoraで書いた。Quoraではポピュリズムのついては書かなかったのだが、二つの入り混じった気持ちがあった。まず「こんなことを繰り返していては日本の議会政治はボロボロになるだろう」と思った。だが「見世物としては面白い」とも感じた。危険な誘惑だがおそらく惹きつけられる人はずっと多いだろうなと思う。最初から政治に問題解決など期待していない人には単純なエンターティンメントだといえる。

現在「橋下徹さんをヒトラーと例えることが適切かどうか」という議論が進行中である。だがこれも実は単なる広報活動の一環である。あとは適度に裁判を展開したりして集客を増やしてゆく。維新の支持者たちがステルスで集まってくるのはそのためだろう。気がついたら維新が席巻していたということになる。するとテレビがそれを捉え後は勝手に盛り上がって前に進んでゆく。

低成長を背景に協力する文化が溶解しつつあるのであろう。だがその行き着く先は万人の万人に対する闘争状態だ。持っている人を指差して「あの人が奪った」と叫び別の人から別の何かを奪いというのがその作戦の基本だからである。

つまり、かなり危険なことが進行しているのだろうなと思う。

正義のためにという理由でTwitterで戦っている闘士の人たちを止めるつもりはない。だがおそらくその闘争で正義の主張が浸透することはなく相手の集票に利用されるだけだろう。

周りの人たちはただおもしろがってそれを見ていてその闘争は政治を問題解決のための装置から単なる「おもしろけんかばこ」に変えてしまう。

何か投稿する前に一瞬そのことについて考えてみるべきだろう。

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