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日本の政党政治は韓国型政党政治に近づきつつあるのか?

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今回は日本の政党政治は韓国型政党政治に移行しつつあるかということを考える「韓国型」とは個人の人気に依存した政党が乱立し結果的に誰に投票していいかよくわからなくなるという状態だ。

「そんなことが起こるはずはない」と多くの人が感じるだろうが維新の会や都民ファーストのような政党はそのような状態になりつつある。最近では国民民主党が小池百合子東京都知事の人気にあやかるために都民ファーストに接近している。つまり日本は韓国化しつつある。

ところが違いも見えて来る。日本人には根強い安定思考があり韓国のように何かをするのではなく何もしないことを選ぶ傾向がある。

まず、BBCのレポートを紹介する。日本では自民党が政権を独占してきた。自民党結党以来、例外は戦後たった6年だけだと言っている。近年の民主党政権と少し前の細川政権・羽田政権を指しているのだろう。つまり日本は一貫して変化しないことを選択し続けてきているというのだ。変化を拒絶しているからこそ自民党が磐石であると考えられているということになる。

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自民党は地方に投資してきたので地方の高齢者は自民党を支持し続けている。日本の有権者は都市に移住しているが選挙制度はこれに対応していない。だから自民党政権は盤石であろうと言っている。

BBCのレポートに従えばこれからも自民党政権は盤石なままだろうが日本型民主主義を支える地方には高齢者しかおらず衰退しきっている。変化を拒み続ける人々が自民党政権を支えているがその未来は暗い。

もちろん、地方にも揺れはある。例えば、石川県の県知事選挙は保守分裂になろうとしている。真っ先に出馬を表明した馳浩元文部科学大臣に反発する一部の地方議員たちが山田修路元参院議員を担いだ。一方で地元経済界は山野之義金沢市長を推している。

自民党の中央執行部は外から派手な王様を連れてきて地元をまとめようとしている。自民党党本部は馳浩候補で一本化したかったようで茂木幹事長が保守乱立の騒ぎに不快感を表明した。立憲民主党や社民党は「様子見」なのだそうである。結果的に選ばれた人を担ぎたいために目立った動きを避けている。

混乱の背景にあるのは森元総理大臣だ。地元を抑えているとして権力を誇示したいのだが人脈としてはアテにならない。谷本現知事は独自の人脈を築き森元総理の影響力は限定的だった。こうした地元の状況を把握していない馳浩元文部科学大臣が「自分は谷本後継である」と宣言したために却って地元が反発が起こっているのだそうだ。

おそらく地元の有権者たちは選挙には限定的にしか参加していない。このため利権を持った人たちがそれぞれの権利を主張して抵抗しているのだろう。人気を持った人が利権を築こうとするとスキャンダルになるが既得権益を守り続けているだけではスキャンダルにならない。このため日本の地方選挙は韓国型になりにくい。

おそらくこうした地方の影響は徐々に消えてゆくはずだ。地方からは人々が流出しており10増10減の改革が決まれば東京の影響力がより強くなるだろう。

それでは東京型の選挙とはどんなものなのか。ここで人気を集めたのが小池百合子東京都知事だった。小池都知事は自民党総裁選では泡沫候補の域をでることはなかった。でも、選挙期間が長くない都知事選挙では瞬間的に都民感情を掴み都知事になった。これが韓国の大統領選挙に似ている。既得権を持った人は少数派に過ぎない。だから瞬間的に民意を掴んだスターが政権を掌握できる。

小池都知事は選挙のたびにそれらしい政策を掲げるのだがその政策がその後どうなったのかということは一切言わない。また、石原都政で蓄積した余剰金も使い切ってしまっているが都民はそのような細かいことは気にしない。「宵越しの銭は持たない」とばかりにその日その日を生きているのが東京である。これが「イデオロギーと利権なき」都市型の政治である。

この小池人気にあやかって躍進したのが「都民ファーストの会」だ。その都民ファーストの会が国民民主党との合流を模索している。国民民主党は政党内でスターを作ることに失敗し支持が伸び悩んでいる。イデオロギー的には自民党とも立憲民主党ともさほど違いはない。差別化ができない政党が人気の高い小池百合子東京都知事の名前にあやかろうというのが今回の新党構想だ。これは極めて韓国的である。

韓国的という言葉が嫌いならフランス的と言ってもよい。フランスでは左派政治は全ての人を満足させられないと考えたマクロン大統領がかつての支持者たち切り捨ててきた。その度にデモが起きる。下手をするとやはり旧来の右派政権が良かったと揺り戻しが起きるかもしれない。これはむしろ東京より大阪で起きていることだ。橋下・松井・吉村といったスターたちが敵を作りながら「社会主義的すぎる」大阪の改革を断行するというやり方である。

これまで見たように韓国では「どちらの陣営もあまり代わり映えしないので誰を選んでいいかわからない」という状態になりつつある。フランスはとりあえずどちらかが選ばれるのだがすべての人たちを満足させることはできない。つまり永遠に混乱しているのが大統領型民主主義と言える。

ただし韓国と小池百合子東京都知事には決定的な違いもある。小池百合子東京都知事が破綻しないのは韓国で失敗しているようなことを巧みに避けているからだ。

  • 小池百合子東京都知事は結婚しておらず家族の不祥事がない。安倍政権では「妻案件」が官僚を巻き込む大きな騒動に発展したので日本でも韓国型の不祥事が起きるリスクはあるのだが東京にはそれがない。
  • 友達が不祥事を起こすと「私は関係ないわ」とばかりに隠れてしまう。このため木下富美子都議の不祥事の影響を受けることはなかった。これもおそらく個人的資質によるものだろう。
  • 特に具体的な痛みを伴う決定を避けているので文在寅大統領やマクロン大統領のように一部の反発を生むことはない。その意味では大阪的な軋轢は東京では起こらない。

小池都知事がどの程度利権構築に関心があるのかはよくわからない。むしろ自身の政治的価値を維持することに興味があるように思える。このため韓国ほど派手な問題が起きず小池人気は維持され続けている。その小池百合子東京都知事の人気になんとなくあやかりたい都民ファーストと国民民主党連合も「批判勢力」に止まっているうちはさほどの弊害はないだろうと思われる。

日本で韓国やフランスのような混乱が起きていないように見えるのは実は何も決めていないからである。さらに有権者も地方政治にはあまり興味がない。韓国の大統領選挙の投票率は70%を超えていて2017年のフランスの大統領選挙も75%という投票率だったそうだが2020年の都知事選挙の投票率は55%に過ぎず、住民投票・府知事選・市長選を合わせて「投票率が上がった」という大長府知事選挙も投票率は50%だったという。都市の政治参加率はそれほど高くない。つまり、停滞と無関心こそが日本政治の安定を支えていることになる。

日本人は都市でも地方でもは変化しないことで安定と停滞を選択しているといえるのである。

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