中華人民共和国が崩壊すると全てが丸く収まるのか?

先日はカザフスタンを例に専制主義・独裁主義の国の最後について書いた。独裁や専制主義はいい時はいいのだが、一旦つまづくと「政府対民衆」という構図ができてしまう。カザフスタンの場合は事態収拾を急いだ大統領が外国の侵略を理由にロシア軍を招き入れた。現在は専制主義陣営に傾きつつあり民主主義を攻撃している。警告なしで市民を発砲していいという命令が下されており通りには遺体が放置されているという。今後さらなる混乱が予想される。




おそらく日本人にとって気になるのはこうした権威主義体制の崩壊がどれくらい中華人民共和国に当てはまるのかということだと思う。

中国は今習近平国家主席の独裁化に向けて準備を進めている。北京オリンピックも新型コロナ対策もこの延長線上にあると言って良い。独裁という言い方が気に入らないなら「習近平体制の永続化」と言っても良い。

この体制は経済がうまく行っているあいだは機能するだろう。ただ100点を取り続けられる人はいない。いったんうまくゆかなくなると政府は強権的な手段に傾くことになる。中国では今興味深いことが起きている。コロナ対策で失敗を恐れた末端の役人たちが市民への締め付けを強めているとBBCが伝えている。トップダウン政治にはある種の強引さがつきものなのである。

西側の民主主義国には中国のような押さえ込みはできない。そこで様々な対策を試し失敗から学びつつも何とか対応策を試行錯誤してきた。中国は「うまく行っていた」が故にそのような経験の蓄積がない。

オミクロン株は感染力は強いが症状はそれほど重くないようだ。こうなると政府の押さえ込み政策はうまくゆかなくなる。習近平国家主席は対応を変えようとするかもしれないが、理屈ではなく体で何をすべきかを覚えてきた地方レベルの意識は変わらない。

「上から睨まれる」ことを恐れた末端の人たちは「自分たちの地域から感染者が出たら大変なことになる」とびくびくとしている。ついにはPCR検査を受けていないという理由で妊婦が受診させてもらえず死産になった。氷点下の環境に放置され大量に出血したと親戚がSNSに書き込み騒動になっているそうだ。市当局がルールを変えて「処分されない」とわかって初めて誰でも受診ができるようになったという。

恐れによる支配はこれまではうまく機能してきた。だがおそらくこの状態は長くは続かないだろう。

イアン・ブレマー率いるユーラシアグループも「2022年の最大のリスク」として中国のコロナ政策の失敗を挙げている。中国のコロナ対策はうまく行っていたが故に失敗しようとしているということになる。

妊婦の話は氷山の一角に過ぎない。経済を止めてまでコロナ抑制をしようとしているのになぜか感染者が止まらない。処分を恐れた人たちが強い政策をとれば取るほど食糧不足などの問題が起こる。ロックダウンの前のスーパーマーケットでは大混乱が起きた。

一部では略奪騒ぎまで起きている。人が殺到したためお金の精算が追いつかなかったため「だったら無料で持ち帰ろう」という人が増えたようだ。店は結果的に略奪されてしまった。

専制主義国家は常に強権によって上から押さえつけられているのだから人々は強権を恐れて行動を変えない。一方統治される人々も「罰せられないなら何をやってもいいのだ」と考えるようになる。

ついに西安市の当局は政策がうまく行っていないことを認め始めたが末端の職員たちは依然厳しいストレスにさらされている。自分たちの受け持ち地域で感染者が出ればどんな処分をされるのかわからない。ついに一部の職員たちが気に入らない市民に暴行をしている。おそらく例外的な話なのだろうがこれがまたSNSで拡散する。

カザフスタンの例を見てもわかるように住民の抗議活動は海外からの扇動だと説明されることが多い。ところが西安の状況を見ると「食べ物が足りない」といった情報が市民たちから国内向けのSNSに向けて発信されている。こんな状態でデモを呼びかける投稿が広がっても政府は国内向けのSNSをバンできない。ネットの遮断などすれば大騒ぎになることはわかりきっているし、外国から扇動されているわけではないことは明らかだ。

中国にはカザフスタンに対するロシアに当たるような国がないのでこうした状況を自力で解決するしかない。暴動が起きたとしても「外国のせいだ」とは言えない。さらに日本と違って中国の人たちはそれほど大人しくないようだ。日本でもスーパーから物がなくなることはあるが略奪騒ぎは起こらない。

こうなると「中国が崩壊あるいは自滅してくれるのではないか?」などと感じてしまうのだが、おそらくそうはならないだろう。日本はアメリカ合衆国を頼みにしているが、アメリカはアメリカで内政上の問題を抱えている。あまり注目されていないがイアン・ブレマーらユーラシアグループの第3位のリスクは中間選挙での共和党の勝利である。イアン・ブレマーはトランプ大統領の勝利の可能性にまで言及している。

バイデン大統領は名前こそ出さなかったものの「前大統領」のトランプ大統領を厳しく非難するテレビスピーチを行った。議会襲撃という民主主義にとってはトラウマチックな出来事だったからだという説明もあるのだが、やはり中間選挙を巡ってかなり焦りがあるとみたほうがいいだろう。演説の途中でロシアや中国のような専制主義国の話が出てくる。暗に共和党と専制主義を結び付けようとしており共和党からは激しく非難されることとなった。

おそらく多くの人はなんとなく「中国が負ければアメリカが勝つ」と思っているのだと思う。だがおそらく「どちらも内政上の問題で身動きができなくなる」可能性が高い。カザフスタンの無警告射撃には自制を求めたが具体的なアクションについては言及しなかった。

カザフスタンはロシアが出てきて事態を収めたわけだが中国にはそのような後ろ盾はない。アメリカの実行力も落ちているため、もし中国が混乱すれば日本は直接大きな脅威にさらされることになるだろう。

サイト内Google検索


Google Recommendation Advertisement



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です