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バイデン大統領に会えない – 岸田総理の焦り

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日本の外交力の低下を思わせるニュースがあった。日本がアメリカの直轄支店ではなくアジア支店の一営業所に格下げになっていることがよくわかる。今後、バイデン大統領は「エマニュエル司令官」を通じて日本に指示を飛ばすことになるのだろう。岸田総理はバイデン大統領に会ってもらえないそうだ。「俺がトップセールスをやる」と意気込んで見せたはいいがなかなか営業のアポが取れない社長みたいな感じである。

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毎日のニュースを整理していて「岸田総理がNPT会議に参加する」という読売新聞の記事を見つけた。これは今まで例のないことなのだそうである。読売新聞の【独自】は政府広報なのでこの記事の後で岸田総理がNPT会議に参加するという発表をするのであろうと感じた。これが25日の朝だった。朝刊に間に合わせるように書かせたとしたら24日の夜ごろに読売に伝えたことになる。

だがその記事はすぐにNHKによって打ち消されてしまう。記事の日付を見て驚いた。26日の朝の4時である。わずか1日で訂正に追い込まれたわけだ。官邸の慌てぶりがわかる。

無情にもNHKはこう書いている。

岸田総理大臣としては、早期にアメリカを訪問し、バイデン大統領との首脳会談を行いたいとして調整を進めていますが、アメリカ国内の政治情勢や感染拡大の影響で調整は難航しています。

岸田首相 核拡散防止条約の再検討会議 出席見送りへ

つまりNHKの関心事は核問題ではなく岸田総理がバイデン大統領に会わせてもらえないことなのである。

改めて読売新聞の記事を読むと「広島選出の岸田総理がライフワークである核不拡散に向けてこれまでよりも踏み込んだリーダーシップを発揮しようとしている」ように読める。これは最近読売新聞で展開されているリーダーシップのある岸田総理像の演出だ。

ただこの時点でもバイデン大統領との会談はセットできなかったと書いてある。ここからも実は日本側の関心はバイデン大統領・岸田階段なのだということがわかる。

首相は当初、再検討会議に合わせ、ワシントンも訪問し、バイデン米大統領と初の正式な会談を行うことも模索したが、米側と調整がつかなかった。

首相がNPT再検討会議に出席検討…1月開催、「核なき世界」実現構想を演説

NHKの報道を見ると「バイデン大統領は会ってもくれないし唯一の戦争被爆国である日本が演説をすることも望んでいない」ということになる。最終的な報道は「ビデオ演説」だった。まあ、ビデオで演説させてもらえるだけでも「成果」なのかもしれない。

NPTは核兵器保有国が特権を持ったままで非特権国の核保有を排除しようという仕組みだ。だが実際には朝鮮民主主義人民共和国が確保優位成功している上に非核保有国は「核兵器の保有は非合法にされるべきである」と考えていて別の条約を立ち上げた。ドイツがここにオブザーバーとして参加することになると各国に「ドイツに追随しないでくれ」という要請が行われた。人権で中国を囲い込もうとしているアメリカは自分たちが同じように囲い込まれることを警戒しているのだろう。

ドイツはアメリカ合衆国と核兵器を共有していて日本よりも踏み込んだ状態にある。この体制は維持するといっている。だがいつまでも世界が核を持つ状態を容認しているわけではない。

一方で日本は核兵器禁止条約に極めて後ろ向きな姿勢だ。今検索すると出てくるのは「長崎の被爆者が怒っている」という記事だ。ドイツはオブザーバー参加を決めたのに日本政府は何をやっているのだと書かれている。日本は最大限アメリカに配慮している。だがバイデン大統領はそれを一顧だにせず「別に直接来てくれなくてもいい」という冷たい態度だ。

日本側は何とかアメリカに忖度して関係を良好に保ちたい。だがバイデン政権は日本を優先度が低い格下の国と考えている。逆に広島出身の総理大臣が現場に乗り込んできて「核兵器のない明日」などと演説すすればアメリカの損になりかねない。だから今まで通りのプレゼンスでも構わない。

地位低下の焦りがあり一旦出した政府広報的な新聞記事がわずか1日で否定されてしまうという事態になっている。

会議は1月4日に予定されているそうだ。バイデン大統領は核兵器が主力である時代は終わったと宣言し「先制攻撃を封印」するようだと伝えられている。バイデン流の交渉術でアメリカの優位性を保ちつつその役割を小さく見せようとしているのだろう。だがそもそもこのニュースはあまり大きく取り上げられていない。

さらにバイデン大統領の交渉術はすでに見透かされている。年明けには米露の二国間協議が決まったそうだがこれを受けてプーチン大統領は1万人の兵力をウクライナ近辺から撤退させたそうだ。表向きは予定の演習が終わったと言っている。ちょっと「働きかければ」交渉に乗ってくる大統領だということがわかっていてアメリカを揺さぶっているのだろう。国内でも民主党の議員が造反し予算案の成立は難航しているそうだ。

軽く見た相手の優先順位を下げて顧みないという姿勢が「だったら強気に出て揺さぶってやろう」という人たちを誘発している。バイデン大統領はこうした強気の人たちとの交渉にかかりきりになりますますおとなしい人たちの優先順位が下がってしまうわけである。

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