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軍事力で完全に中国に負けつつある日本が差し出すものは何か?

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BBCが中国が軍拡競争に勝つだろうという予測を読んだ。中国の政府機関紙が書いた記事であれば読み飛ばしたのだろうが「BBCの分析なのか」と感じた。この記事を読む限り、日本が防衛費を二倍にしようが憲法を改正しようが中国にはもう勝てそうにない。新たな対抗策が必要なのだが日本には「場所貸し」以外の選択肢はなさそうである。場所貸しは日本の黄金の負けパターンである上に、かなり危険なオプションになりそうである。このまま無策を貫けば軍事的に中国に飲み込まれてしまうのではないかとすらと感じた。

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まずBBCの記事から読んでゆく。BBCの記事によると「なぜ〜なり得るのか」と書いてある。そうなる可能性があると言っているだけで「絶対にそうなる」とは書いていないのだが確度はかなり高そうだというニュアンスである。

  • 軍事支出を増やしている。公式のもの以外にも非公式の支出もある。
  • 数は確かではないものの核弾頭の数も増やしている。
  • 超音速ミサイルを開発しており「攻撃の被害をかわすことができない標的」が出てくるだろう。
  • サイバー攻撃能力も増している。
  • 海軍力を増強しており「数としては」アメリカを超えた。
  • ただし中国側には拡張の意思はないとしており中国軍は外国での実戦経験がほとんどない。

最後の文章が慰めといえば慰めだがほとんと希望というものがない。これを読むと「日本も軍事力を増強させて中国に向き合うべきなのでは?」と思えるのだが経済がほぼ成長していないため軍事力の増強は国民の貧困化と政府のサービスレベルの低下を招くだけだろう。上り調子にある国と停滞している国の違いである。

こうなると日本はどんな戦略を取るべきなのだろうか?と思い記事をいくつか読んでみた。実は具体的な提案があまりない。

まず、日本は台湾情勢が緊張した時に南西諸島を差し出そうとしているそうだ。共同通信の記事は「台湾有事の際は南西諸島が巻き込まれる可能性がある」と言っているが、そんなことでは済まないかもしれない。中国は核兵器開発を進めているのだから「巻き込まれる」だけではなく標的になるかもしれない。

とはいえ、これまで国民的議論が全くない日本には「中国で何かあった時にすぐに駆けつけることができる日本も拠点があったほうがいいですよね」と米軍を引き止めておく以外に日本を守る手立てがないことも確かだ。つまり沖縄本島と南西諸島を含む地域を「貸し出して」アメリカの気持ちを引き止めておく必要がある。

これは実は日本には大きなリスクだろう。仮に紛争で中国に負けた場合「リスクを恒久的に取り除くために」沖縄を差し出す必要が出てくるからである。つまり日本は本土防衛のために沖縄をアメリカに差し出してるのだから状況が変われば中国に差し出すことになるというわけである。

差し出すとは誇張しすぎなのではないか?と思われるかもしれない。だが、岸田政権の米軍への気の使いようは尋常ではない。

在日米軍でオミクロン株が蔓延している。クリスマスシーズンの基地内で米兵たちが何をやっているのかはわからないがクラスター規模は223名になったそうだ。ところが在日米軍の関係者は日本にフリーパスで入国することができるばかりか自由にゲートを出て沖縄の歓楽街に出かけることができる。出国時の検査もないという。最近では飲酒運転で逮捕される事例も出ているのだが、林外務大臣は「注意してくれ」とか「残念だ」としかいえない。

中国の脅威が増すが自力では防衛できないのだから在日米軍の温情にすがるしかない。もちろん独力で動きたいと言ってもアメリカはそれを許さないだろう。アメリカは日本を抑える瓶の蓋でもあるからだ。

さらには政界のランボーも噂されるラーム・エマニュエル大使もやってくる。国内に問題を多く抱えるアメリカは独力で地域防衛を担えるほどの力を持っていない。つまり「日本がもっとお金を出してアメリカ中心の平和を支えるべきだ」と考えている。アメリカがいないと困るのだからもっと貢献しろと迫るわけである。

おそらく米軍がおらず自力で防衛をしなければならないという切実さがあればもう少しまともな防衛戦略が出てくるのだろう。だが「いざという時は米軍が守ってくれるはずだ」という安心感が議論を妨げる。日米同盟信仰である。現在の憲法改正議論は野党を憲法改正勢力・憲法改正抵抗派に分断し安倍一派に「憲法改正」というオシゴトを与えておくための道具のような扱いになっている。

この件については立憲民主党にも問題は多いように思える。単に憲法議論を先延ばしにするだけでは問題の解決にならない。さらに中国が台頭して国民が焦り始めると感情的な軍拡論に走る可能性が高い。思考停止に陥った憲法第9条信仰を捨て日米同盟信者を納得させる具体的な政策と人脈作りを進めるべきだろう。

「有利な地の利を生かして」「アメリカに防衛を委託し」というのはデパートや本屋といったかつての花形企業がとっていた戦略だった。ところが委託を繰り返しているうちに当事者能力を失ってゆく。デパートや本屋はAmazonのようなインターネット通販に押されて業績が上がらなくなってしまった。

南西諸島がデパートと違っているのは南西諸島はいざという時に脅威に晒される可能性が高いということである。さらに本土にいる日本の政治家にとってみればその土地は彼らのものではない。

だが自分たちで価値を創造できない日本の政治家は他人のもの差し出すギバーになるしかない。思考停止を招くだけでなく自分たちのものでもないものをリスクに晒す罪深い提案だ。

ふとこのエントリーのタイトルを見て誤解が生じるかもしれないと思った。記事のタイトルは日本はアメリカに南西諸島を差し出しているという意味なのだが文中に中国が入っているので中国に何かを差し出すと勘違いする人が出てくる可能性がある。

だが仮に中国と日米の抗争がエスカレートしアメリカが撤退した場合「沖縄に2度と米軍基地が置けないように緩衝国家・自治地域を作れ」と要求される可能性はあるかもしれない。実際にウクライナはそういう状態になりつつあるがアメリカは「経済的に重大な打撃になる」と脅すだけで身を呈してウクライナを守るようなことはしない。

そもそもそれも当然で自分たちの国に対する責任は自分たち負わなければならない。日米同盟信仰も憲法第9条も信仰もどちらも日本を守る盾にはなってくれないということに早く気がつくべきではないかと思う。

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