ざっくり解説 時々深掘り

竹中平蔵的なものはいかにして日本から奪ったのか?

Xで投稿をシェア

先日、アダム・グラントのギバーとテイカーという概念を見つけた。これを考えていて安倍元総理はギバーなのかテイカーなのかということが気になった。正直「人を主語にするとPVが集まりやすい」上に安倍元総理には引きがあるからだ。

だが実は安倍元総理はテイカーではないと感じた。

それではテイカーとは誰なのかということになる。おそらく安倍元総理の周りには「自分はもらって当然」と考えるテイカーが大勢群がってくるのだろう。例えば竹中平蔵氏などが思い浮かぶ。だが「竹中平蔵氏が日本から奪った」と書くと誹謗中傷になってしまう可能性があるので「竹中平蔵的なもの」というタイトルにした。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






そもそも「竹中平蔵的なもの」とは何だろうか。それはリスクを取らない中間業者である。従来の資本主義では脇役的な存在であるが日本ではなぜか主役になっている。

日本には河野太郎に代表される新自由主義と岸田文雄・宏池会に代表される温情民主主義の二つの政策的流れがあるとされる。だが新自由主義は企業がリスクをとるべきだと言っており、温情民主主義は企業の恩恵を直接労働者や地域に配れと言っているだけだ。実はそれを中抜きしているリスクを取らない中間業者を排除しろと言っているだけである。そう考えると二つの相反する議論は「アウフヘーベン」する。

竹中平蔵的なものの作用は中間業者に攻撃の矛先が向かないように政府との間の調整をしあくまでも「透明な存在」として利益を吸収することなのである。

中間業者は単体では生産力向上には寄与しない。資本の効率的な再配置にも役立たないしイノベーションによって社会を成長させることもない。また労働者のように技能を蓄積しない。単に右から左に人を動かしているだけでリスクを取らずに利益を得ている。

もちろんこれが労働者の再配置を通じて効率な人的資源の配置に虚しているならば、中間業者は社会善であるといえる。

だが、日本のGDPは一人当たりでは2027年に韓国に抜かれ2028年には台湾に抜かれると言われている。経営者が新陳代謝を起こさずDX化が進まないことが原因の一つだと考えられている。つまり結果として中間業者である派遣斡旋業は日本の経済成長には寄与しなかった。

さらに最近では技能実習生の斡旋をする業者で人権侵害の疑いがある事例が増えている。非熟練労働者と非正規雇用は日本人労働力を疲弊させたため「海外からさらに犠牲者を連れてこなければならない」という経済に移行しつつある。

一方で労働者もまたすっかり低成長と非熟練型の疲弊労働に慣れてしまった。正社員はリスクを恐れて動かなくなり非熟練型の労働力の現場監督になった。非熟練型労働者も「社会とはそんなものだ」と考えている。

労働者たちはもはや自分たちが働きかけて社会が動くとは考えていない。また政府主導で経済が成長するところを見たことはない。そのためすっかり成長も環境の改善も諦めてしまった。

代わりに彼らがSNSなどで熱心に展開しているのが他人が権利を獲得することを妨害する動きだ。

住民にまちづくりに参加してもらいたいという素朴で素直な発想も「自分たちが見下している他者に権利を渡したくない」という点だけが注目されるとたちまちヘイトデモのターゲットになる。

彼らはおそらく「もらう」ことは期待していない。自分たちが「もらう」に値する存在だとは考えていないからである。代わりに「誰にもトクをさせてはならぬ」と行動を起こすのだ。

竹中平蔵的なものがこんな社会を作ったわけではもちろんない。単に成長を拒絶した社会に適応しただけである。さらに成長に寄与しない派遣斡旋業者を排除することはできない。単に社会の要請によって肥大化した産業だからである。だがこれは芸者の置屋のようなもので人権侵害の温床となる。おそらく問題なのはこうしたテイカーに対して利益供与し続けるギバーなのであろう。

政治家の一族に生まれ終生コミュニティに与え続けることを宿命づけられている安倍元総理のような世襲のギバーは「終生周りに与え続けるしかない」と覚悟を決めることだろう。

アダム・グラントの議論によると人口のうちの半数程度は周りに合わせるマッチャーという人たちだ。竹中さんのようなテイカーが増えるとマッチャーたちは「与えること」を手控えるようになるだろう。テイカーのもとでいくら一生懸命に働いても疲弊して搾取されるだけだからだ。

アダム・グラントの議論によると社会や組織を良くするためにはテイカーは排除したほうがい。だが合法的な経済活動を行なっているだけのテイカーを排除することはできない。むしろ問題は一部のテイカーに与え続けるだけのギバーだと思う。

世襲のギバーはこういう。

  • あなたがたがもっとがんばって企業を支えればそのうちに企業から恩恵が滴り落ちてくるはずである。
  • 滴りが実感できないのはあなたたちの頑張りが足りないからである。

天国はいずれくるというトリクルダウンセオリーである。実際の利得は全て中間業者が持ってゆきどこかに蓄えてしまうのだからトリクルダウンなど起こるはずがない。東京オリンピックの利益がどこに消えたのかを考えればそんなことはすぐにわかるはずだ。

だが、日本人は極めて辛抱強く権力に従順だ。ある人は頑張ることをやめてしまいまたある人は化学物質の力を借りてでももっと働こうと考える。

繰り返しになるがテイカーが直接意図して彼らを疲弊させているわけではない。おそらく我々の社会を疲弊させているのはテイカーたちに乗せられて「見返りを求めずにもっと与えろ」と扇動する人たちなのだろう。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで