ウクライナは第二の朝鮮半島になるかもしれない

ロシアがウクライナ付近に兵力を集結しているというニュースがあった。2022年の年始には17万5000人の兵力を集めるかもしれないとアメリカの情報機関は見ているそうだ。現在でも10万人近くの兵力が駐留していると言われている。このウクライナへの兵力集中には二つの見方がある。

一つ目の見方は「アメリカ合衆国が退潮しているのでロシアが勢力拡大を目論んでいるのだ」というアメリカ退潮論である。もう一つはロシア側が囲い込まれることを恐れているのではないかというアメリカ脅威論だ。

こうしたグラグラした状態を解決するためには双方の意思に沿ってウクライナを分割するしかない。つまりウクライナは朝鮮半島と同じ道をたどる可能性があると感じた。






ロシアは現在プーチン大統領への集権化が進んでいる。プーチン大統領の世代は過去にソビエト崩壊を経験しており「一瞬にして国がなくなる」体験をしているそうだ。失業したプーチン氏は闇タクシーの運転手などをして糊口を凌いだのだという。囲い込まれる恐怖を感じたとしても不思議ではない。

実際にアメリカ合衆国は同盟国と協調して中国の囲い込みをしている。中国から見れば経済的な出口を塞がれるかもしれない緊急事態だ。

大陸国家の中国は周りを同心円状の構造で囲っておきたい。中央には北京がありそれを中華民族が囲んでいる。全ての中華民族は同一言語を話し北京共産党に忠誠を尽くしている。さらにその外には中国に恭順の意を示す外国がある。これが中国が理想とする「安定した」姿である。

ところが清の末期になると諸外国が香港や上海などを蚕食した。こうした通路を通って外敵がやってくるという恐怖心は彼らにとってトラウマになっている。共産党政府が香港の民主化を抑圧し台湾統一にこだわるのは民主主義を通じて親米国家が作られ米軍基地が置かれることを恐れているからだろう。

北朝鮮は彼らにとって危険極まりない米軍基地のある大韓民国との間の貴重なバッファゾーンなのだ。

ロシアも同じようなメンタリティを持っているようである。モスクワの外側にはロシアがありその外にはベラルーシ・ウクライナなどとの同盟世界が広がっているという同心円状的世界観である。

だが、ベラルーシ・ウクライナは歴史的に複雑な背景を持っている。ベラルーシとウクライナ西半分はまずリトアニアの領土になる。リトアニアはポーランドに侵攻され実質的にポーランドの領域になった。

だが、言語的・宗教的にはポーランドとベラルーシ・ウクライナは決定的に異なっていた。ポーランドは早くからロシア語圏ではなくなり独自の西スラブ語を形成した。また宗教的にもローマン・カトリックの勢力圏だった。一方でベラルーシ・ウクライナ・ロシアは同じ東スラブ語圏を形成しておりギリシャの影響を受けた正教圏である。東西ローマ帝国時代の影響がいまだに生きている。

宗教的には西側であるポーランドは西ヨーロッパに接近しウクライナにまでその影響が広がっている。このためプーチン大統領はウクライナとジョージア(グルジア)をNATOに組み込まないようにアメリカに提案している。さらに東ヨーロッパで軍事行動を展開しないことを要求している。このNATO拡張計画は実は2008年の確約が元になっているそうだ。モスクワ政体の安定が目的だとすれば全面戦争という選択肢はないだろう。

ただ2008年提案はいまだに実施されていない。つまりNATOの側も外交カードとしてウクライナを利用してはいるが実際にウクライナをNATOに引き入れるかどうかを決めているわけではなさそうだ。このぐらついた状態がプーチン大統領をイラつかせる。

ウクライナは西側がポーランドの支配下にあり東側がロシアの支配下にあったという歴史がある。このため選挙結果が東と西で全く異なる。歴史的にもウクライナには分裂要素がある。

2004年の大統領選挙でも国を二分する対立がおきた。当初は親ロシアのヤヌコビッチと親欧米のユシチェンコが対立しヤヌコビッチが大統領になった。ユシチェンコがダイオキシン中毒になりハンサムだった顔がアバタだらけになったのを記憶している人も多いことだろう。政敵に毒を盛られたのだという噂が広がった。

だが、ヤヌコビッチが大統領になるとこれに反対するオレンジ革命が起こりユシチェンコ大統領が誕生した。そうしてNATOとEUへの接近が始まる。しかしながら次の選挙ではヤヌコビッチが勝つ。EUとNATOへの接近戦略にはブレーキがかかるが2014年に騒乱が起きてヤヌコビッチは失脚させられてしまう。

ヤヌコビッチが失脚するとクーデターを非難するロシアが介入した。ロシアにとっては国会の出口になるクリミア半島が編入されたのはこのころだ。それに対抗したのがアメリカ合衆国のオバマ大統領である。アメリカはその後ウクライナへの介入を深めてゆく。

つまりアメリカの介入はごく最近になってはじまったことになる。実際にバイデン大統領がどの程度この問題に関心を持っているのかはわからない。

さらにトランプ大統領時代になると「アメリカがウクライナに巻き込まれたのはバイデンの息子がウクライナでビジネスをやっているからだ」と宣伝するようになる。攻撃されたハンター・バイデン氏はウクライナのガス会社役員をやっていたのは確かである。こうしてトランプ大統領はウクライナに軽蔑的な態度をと取り始める。

現在もウクライナの大統領であるゼレンスキー氏は政治経験のないコメディアンだった。トランプ大統領は民主党への攻撃材料になるとゼレンスキー大統領に電話をかけウクライナへの支援をほのめかして「何かスキャンダルはないか」と持ちかけた。

つまりこの時点でウクライナ問題はアメリカの内政問題になってしまったのだ。

ゼレンスキー大統領は東側(ロシア圏地域)で高い支持得たのだがトランプ大統領からも支援を受けNATO・EU接近戦略を放棄していない。2021年6月には「具体的にNATOに加盟するおつもりはあるのですか?」とバイデン大統領に迫っている。2021年11月には「ロシア人とウクライナ人がクーデターを計画している」と突如発表し大騒ぎになった。

アメリカのコミットメントにもどこか怪しさが漂うがぜレンスキー大統領もどこまで本気で西側に接近しているのかがわからない。NATOがウクライナを編入するとNATO領域に親ロシア派が多い地域を抱えることになる。この地域は実はずっと戦争状態にある。つまり局地的な戦争はすでに始まっていてNATOがこれに全面的に巻き込まれる可能性があるのだ。

そう考えると最も可能性の高いのは東西分裂かもしれない。つまりこの地域にとっての「安定」とは第二の朝鮮半島になってしまうということである。ただそうなると東側と西側の間には鉄条網が作られて国境のすぐそばにロシアを狙ったミサイル基地が作られることになってしまう。おそらく東ウクライナは経済的に困窮するだろう。

このため両者はにらみ合いを続けたまま何年もの間小競り合いを続けているのである。

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