長妻昭議員が「3回目の接種もワクチンは選べるのか?」と質問していた。答えはノーなのだがワクチン分配担当の堀内大臣はこの質問にうまく答えられない。代わりに厚生労働大臣が出てきて何やら説明をしていたが要領を得ない。
1回目・2回目の接種では同じものを接種しなければならないということになっていた。結果的には地方自治体で接種を受けた人が多くファイザー製が多く使われた。ところが第3回目の割り当ては、ファイザーが6割でモデルナが4割という割合になるようだ。このためファイザー接種者にモデルナを割り当てる事例が増えてゆくことがわかっている。堀内大臣はモデルナ接種者もファイザーを受けてほしいと呼びかけている。
管政権と岸政権ではワクチン調達の担当者が違ってしまっているのだからワクチンの調達数に違いが出るのは仕方がない。政府はメッセンジャーRNAワクチンにはほとんど違いがないというような広報を盛んにやっている。
だがおそらく岸田政権は「選べない」という情報が見出しに使われて炎上することを恐れているのだろう。「選べない」という言葉を使いたくないあまりに却ってなんらかの不都合を隠しているのではないかという印象を与えてしまっていた。堀内さんはご希望に添えない場合も出てきますがファイザーを接種した人がモデルナを接種しても安全ですと説明すべきだった。
今回も政府の失言を誘う姿勢が目立つ立憲民主党だが、さすがに厚生労働大臣まで経験した長妻議員はこれを失策と決めつけるようなことはしなかった。代わりに「条件が複雑すぎるので地方自治体にきちんと広報してほしい」と注文するにとどめた。
失言を恐れるという気持ちもあるのだろうが答弁を聞いていて岸田内閣は嫌われたくない内閣だったんだなと思った。さらにいえば有権者を信頼できないのだろう。説明してもどうせわかってもらえないと感じているのである。
同じような姿勢は10万円給付にも現れていた。最初のうちはクーポンにこだわっていた。松井大阪市長・維新代表が「10万円一括給付をしたい」と言った時には要求をはねのけている。だが、応援する声が広がると一転して「無条件で」10万円給付を容認した。これもできるだけ嫌われたくないという気持ちの表れだろう。理由があって分割支給を決めたのならそれを合理的に説明すべきだったのだろうが、もともと「お金でも配らないと支持者はついてこないだろう」と考えて始めた政策なので正面から合理的な説明はできない。
ここが維新の上手なところだ。立憲民主党は「合理性なんかないですよね」と執拗に切り崩しを図っていたのだが、維新は「ぶっちゃけ今欲しいんです」と要求する作戦に出た。
大阪市の松井市長が「一括給付」をこの時期に求めていたのは8日頃までに決めないと年内給付の準備ができないからだったそうだ。つまり今更「やってもいい」と言われても準備は間に合わないがそれは政府のせいだと主張するつもりだった。だが政府が方針を変えたため松井市長は「なんとか年内支給が間に合った」と説明したようだ。
これまで頑なに失敗を認めない政権と執拗に認めさせようとする立憲民主党という構図だったのだが、政府の無能ぶりをほのめかす維新とそれに振り回される政権というように構図が全く変わってしまった。
この給付金の経緯を聞いていて「日本人はせっかちになった」と思う。もともと参議院選挙前の選挙対策だった18歳未満への支給だが「一部をできるだけ早く届けられないか」ということになり使っていない予算を振り向けることにした。ところが「今配れるならなぜ全部よこさないのか!」という声が維新<方面>から上がるとそれに追随する声が出てきた。つまり国民も政府を信頼していない。頼れるのは預金通帳の残高だけである。
だがこの徹底的な不信感を植え付けたのは誰なのか?と考えるとそれは安倍政権である。政府を信頼していればトリクルダウンという魔法が起きて国民生活は豊かになりますよと言っていたがそれは実現しなかった。岸田政権はこの嘘を総括せずに否定するという戦略に出たのだが、おそらくそれは失敗だったのだろう。維新はそれがわかっていて政府に対する不信感を利用して「政府の上に立つ」ことに成功したわけだ。
国民は政府の少子化対策などまるで信用していない。岸田政権の看板政策だったこども庁は早々に先送りが決まった。省庁間の縄張り争いが整理できなかったからだ。だが守備範囲は決まらないのに「子供ではなく親に支給すべきだ」ということになったようである。保守派に配慮して名前がこども家庭庁に変わるのだという。そのまま「こども家庭バラマキ庁」にすればいいのにと思う。
人の話をよく聞きましょうというのは学校の道徳の時間に習う徳目の一つである。だが学校は「人の話を聞いて話をまとめるためには相互信頼が必要だ」という大前提条件は教えない。
岸田政権はそれほど間違ったことをやっているわけではないのだろうが、おそらく日本のはもうこのような信頼関係は残っていないのだろう。そんなものは全て安倍菅政権で使い果たしてしまったからだ。
Comments
“嫌われたくない岸田政権が野党に振り回される” への1件のコメント
この首相日本をつぶすのでは!