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今更ながら民主党の劇場型政治「ガソリン国会」についておさらいしてみる

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12月6日から国会が始まる。日経新聞にアジェンダが載っていた。半導体を国内で生産すると優遇する法案がアジェンダに乗っているのが日経らしいなと思ったのだが、載っていないものもあった。それがガソリンである。維新と国民民主党がトリガー条項の解除を要請したが自公政権からは無視された。

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これについては調べるもなくガソリン国会という言葉が飛び交っている。なんでも反対、やりすぎる反対というイメージの源流の一つになっている。ただ具体的にどんなことがあったのかはよく覚えていない。

まず2015年の産経新聞の記事が見つかった。安保法制改正時に産経新聞が民主党の「非道ぶり」を思い出させようと書いたものである。「ガソリン値下げ隊」は衆院本会議の開会を実力で阻止するために笹川堯衆院議院運営委員長や河野洋平衆院議長らを国会内の部屋に幽閉するという凶暴さを見せたと書かれている。

ガソリン国会は自公政権時のできごとだったのだが、こうした曖昧な記憶を織り交ぜつつ「悪夢の民主党政権」という幻影を作り出して来たことがわかる。

ただし民主党の作戦にも問題はあった。

国会が混乱しつなぎ法案が成立しなければガソリン価格が値下がりする。その後に自民党・公明党政権が法案を通せばガソリン代が急激に値上がったことがわかる。すると社会は混乱し民主党に指示が向かうだろうと考えたと書かれている。

一種の社会騒乱を狙ったものでありそのために監禁が利用されたということになるからだ。監禁は再度計画されたが「書棚で隠された秘密通路」があり河野洋平議長はそこから逃れたのだという。忍者屋敷のような話だ。

結局、ガソリンは2008年4月の一ヶ月だけ値下がりし元に戻る4月30日には駆け込み給油もあったそうだ。1リットル当たり20円ほど乱高下したわけだから国民の目にどう映ったのかは明らかである。福田総理大臣は「特定財源でなく一般財源にしますよ」という対案を出したのだが民主党は受け入れなかったそうだ。

ただし、国民の受け止めは冷静だった。朝日新聞によると一般財源化には58%が賛成していていたが、民主党の態度には賛否が別れている。ガソリンの値下げに賛成したのは72%だったそうだが、それはそうだろうなと思う。だが「混乱の責任は自民党・民主党両方にある」というどっちもどっち論をとる人が59%もいた。つまり、なんらかの混乱が生じた時、国民は国会全体がなんとなく揉めていると捉えるのだ。

この話には続きがある。民主党は「民主党政権になればガソリンが下がる」ことも公約に加えて政権を奪取するのだが、結局この公約が実現することはなかったのだという。民主党政権が要求する政策を通すためにはお金が必要だ。だが財務省に聞いたところで予算が出てくるわけではない。こうして一度取った税金を手放すことができなくなってしまったわけである。

だがこの時に値上げがあれば税率を抑える「トリガー条項」が設けられた。仕組みが決まったのが2010年1月だった。160円で発動し130円で解除になる。

ただトリガー条項を凍結したのもまた民主党政権だった。東日本大震災対応だったそうである。民主党政権は国債の発行増には踏み切らず財務省を説得することができる議員もいなかった。このため財源の捻出に苦労し続けた。

あらためて国債依存度が上がったのはいつなのかと思ってみた。時事通信のグラフを見つけた。2020年末のグラフである。歳出が異次元に跳ね上がっていて国債発行額も伸びている。つまりあの安倍政権ですら国債発行は大人しめだったことがわかる。

この前に予算額のギアが上がったのはリーマンショック後だった。2009年の予算を作ったのは麻生政権だろう。

一度作られた予算規模はそのまま上がることはあっても下がることはないことがわかる。税収が落ち込むと予算規模が逆に上がるといういわゆる「ワニの口」である。緊急時対応だからという説明でワニの口が開くのだがそれが閉じられることはない。

これが意外と気がつかれないのは単年度予算主義が事実上破綻していて15ヶ月予算という謎の枠組みが作られているからだ。単年で比較しにくくなっているわけである。同じ頃の日経新聞の記事にこんな解説がある。「財務省は恒久的な制度設計である当初予算は厳しく査定し、一時的な措置である補正は比較的認めやすい」と書かれている。つまり特別なんだから仕方がないというわけだ。

こうして大枠で予算が膨らんでゆく。財務省はこれを敗北と考えているようだ。岸田政権は「財務省に借りを作った」ことになり彼らの「既得権」であるトリガー条項凍結は解除できない。

おそらく国民民主党も維新もそのことがわかっているはずだが、自分たちは政権を取っていないので思う存分斬りつけることができるのだろうなと思う。更に言えばトリガー条項は民主党がガソリン関係の税金を下げられなかったことに対するエクスキューズとして作られ東日本大震災で凍結されている。どちらも民主党政権下のできごとだった。

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