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八代英輝は謝らなかった

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TBSのひるおびを見た。八代英輝もTBSも番組も謝らないことを選択したようだ。Twitterには戸惑いと非難の声があふれていた。その日の番組が異様だったなと思うのはこのくだりではなく河野太郎総裁候補に対する周囲の異常な気の使いようである。恵俊彰の言動から「河野さんに気を使って見出しになる発言をいかに引き出すか」というミッションを課せられていることがわかる。TBSのニュースで準特ダネとして独占的に報道できる上にネットメディアなどで使われると番組の宣伝にもなるからだろう。

だが、番組を見ていてもっと異様なことに気がつき「バカなサヨク」はこれからも騙され続けるんだろうなと嘆息した。どうやったらここから抜け出せるのかと考えたのだがいいアイディアが浮かばない。

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今回のポイントは、高学歴で弁護士資格を持つ八代英輝さんが「閣議決定されているから」と説明しそれが謝罪だとみなされてしまったという点である。つまりこの程度の学歴と法律知識を持っていても「政権を取って国家権力を握った勢力」が「正しい」と言えばそれは正しいのだと言って許されてしまう環境があるのだ。

まともな民主主義体制の国では政権は批判と監視の対象である。

日本国憲法には不断の努力と呼ばれる条文(憲法第12条)がある。これを読めば自明ではないかと思ったのだが、実は日本語の条文からはこの「監視」というコンセプトが抜け落ちている。翻訳過程で故意に落としてしまったのかもしれない。

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

Wikipediaによると元の英文はこうなっている。非生物が主語であるという難しさはあるが高校生レベルの英語が読めれば理解はできるはずだ。だがおそらく日本の一般の教育水準はそれほど高くないのだろう。

The freedoms, rights and opportunities enunciated by this Constitution are maintained by the eternal vigilance of the people and involve an obligation on the part of the people to prevent their abuse and to employ them always for the common good.

日本語だと「国民は濫用すべきではない」と読めるのだが、英文は「一部の人々」が濫用することを監視せよと言っている。英文を信頼すると、民主主義社会においてテレビ局などのメディアは権力者などの一部の人が他人の自由・権利・機会を侵害しないように監視していなければならないと読める。もちろんテレビ局が濫用する可能性もある。

日本語の文章を悪解釈すると「一般のわがままな国民が天賦人権を振りかざして他人に迷惑をかけてはいけない」というように読めてしまうのだが、実は元々の設計意図はそうではなかった。

さらにマスコミが「謝罪した」と書いているからという理由で「これくらいの謝罪では足りないのではないのか」というTweetが多く見られた。これも「マスコミが謝罪と言ったら謝罪なのだ」と無批判に受け入れている。これも危険だ。あれは金曜日の出来事に「言及」しているだけであって謝罪とは言えない。

TBSは本来マスメディアが持っているべき崇高な役割を忘れ単なる商業主義に堕しているということができるだろう。だが、おそらく権威主義的な考え方が染み付いた日本人には「権威を疑ってかかる」というのはそもそも難しいのかもしれない。

これは実は政党にも言える。共産党は「敵の出方論は使わないことを決めた」そうだが本当にそうなのかはわからない。有権者向けに説明していないからである。パートナーの立憲民主党にも説明していないので立憲民主党も「他党のことなのでわからない」としか言えない。支持政党の主張に盲従している人もいるようだ。

共産主義はスターリンによる強権政治の影響を受けた時代がある。ソ連はドイツの影響を排除する過程で周辺国を衛星化した。この過程でコミンフォルムという集団が作られ非衛星国にもこの流れを持ち込もうとしたのである。日本共産党もこの時に暴力革命を肯定する綱領を採用したことがある。

この流れが続かなかった理由は二つある。日本では暴力革命が支持されなかった。この流れを受けて22人もいた共産党の議員が全員落選してしまった。この時は自由党も議席を減らしているのだが社会党(左右)が票を伸ばしている。つまり保守主義も離反されていて、保守政党に対抗する政党には需要があった。いかに暴力革命が悪い影響を与えたのかということがわかる。翌年の選挙ではかろうじて一人が当選したのだが、その後党勢を回復するのにかなりの時間がかかっている。

さらにスターリンが死去するとユーゴスラビアと融和する必要がありフルシチョフによりスターリン主義は修正された。こうした事情があり今風の言い方をすると「黒歴史としてなかったこと」にしてしまったわけである。

こうした事情をテレビは全く説明せず、さらに共産党もきちんと総括していないためいつまでたっても暴力革命論が蒸し返されることになってしまう。立憲民主党は「他党のことなので介入しない」という方針のようだが実はきちんと共産党に説明を求め支持者たちにも説明すべきだ。彼らは何を根拠に共産党を信頼しているのか、あるいは信頼していないが選挙の都合上見て見ぬ振りをするのかは部分連合であっても説明すべきだ。

ただ、番組を見ていて嫌なことに気がついてしまった。番組は立憲民主党側の政策をパネルとビデオを使って説明するようになった。おそらく「誰も興味は持たない」ことはわかっていておざなりな説明しかしていない。もしかして野党側から「公平に扱わないと訴えるぞ」という働きかけがあったのかもしれないし、あるいはそうした文句を言われないように事前に忖度したのかもしれない。何があったのかは視聴者の側からはうかがい知ることができない。

つまり関係者同士で話し合っていて(あるいはあうんの呼吸なのかもしれない)視聴者に説明することなく裏で丸く収めようとしているのである。これは談合である。その後は延々と自民党の政治家同士の公開談合の話をしていた。あと二週間、この公開談合の様子を「あたかも民主主義的で立派な次のリーダー選びだ」として見せられるのかと思うと、いささかうんざりさせられる。

この番組が「政治番組を装ったエンターティンメントである」ということは薄々気がついていた人も多いだろうと思うのだが、ここまであけすけに見せられると「ああ日本には民主主義は根付かなかったんだな」ということがわかる。

と思いつつTwitterを見ると「八代英輝を辞めさせろ」と呟いて何かと戦っているように見せているTweetが多数目に入った。「バカなサヨク」と言われると腹がたつだろうが、ここから抜け出さないことには政策的な議論を始めることはできないのではないかと思う。

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