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安倍総理の嘘がまた一つ暴かれた「不都合なアフガン」

安倍総理の嘘がまた暴かれた。数年前の安倍総理に変な肉の模型の説明が嘘だということがわかってしまった。あの母子の漫画が入ったフリップによると、邦人の安全は安倍総理が断固守り抜くはずだった。今回、アフガニスタンから自衛隊が取り戻すことができた邦人はたった一名だった。政府にやる気は感じられず、前面に立って勇敢に邦人保護の指揮をとる菅総理の姿もみることもできなかった。

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安倍総理の約束が嘘になった理由は二つある。まずアメリカ軍の行動があまりにもずさんだった。さらにアフガニスタン政府がすでに崩壊していて集団的自衛権の行使ができなかった。

安倍総理が憲法解釈を蹂躙してまで欲しかったのは「圧倒的に強いアメリカ軍の作戦に参加して得られるかもしれない勝ち組」の地位だった。おそらく安倍総理は「アメリカがここまで弱体化する」とは思っていなかったのだろう。安倍総理がしがみついていたのは第二次世界大戦直後の圧倒的に強かったアメリカ軍のイメージである。

自爆テロはカブール空港のゲートとアメリカ人が宿泊しているホテルで起きたそうだ。犠牲者の数は今でも増えていて確定していない。アメリカ軍の司令官は「このような悲劇が起こることは予想されていた」とした上で「タリバンの警備の甘さ」を非難した。だがタリバンのカブール警備には第三者が関与していて裏ではISともつながっているようである。BBCの報道によるとハッカニーネットワークというそうである。

バイデン大統領はアメリカ軍人を殺した犯人には必ず復讐すると主張した。だが、タリバンすら抑えきれなかったバイデン大統領にできることはおそらく何もないだろう。バイデン大統領の稚拙な計画は新しいアメリカ軍人の犠牲者を生み新しい遺族を作っただけで支持率が急降下している。おそらく彼の歩く後にはこれからもこのような敵意の振り替えが起こるだろう。

安倍総理の嘘で最も罪深いのは「邦人保護」を情緒的に利用したという点だろう。実は上級国民である大使館員はすでに逃げている。だから、当初外務省は自衛隊機の派遣を防衛省に依頼していなかった。

そればかりか政府は被害の矮小化を始めた。自衛隊機派遣を決めた時の記事にこう書いてある。国際機関に勤務する邦人のほか、日本大使館などの現地スタッフのうち希望者が対象になる。すでに邦人職員は大使館から退避しているが、国際機関で働く邦人数十人がアフガン国内に残留しているという。だが、作戦が失敗に終わろうとしている今政府から情報はごく少数の邦人に変わっている。

邦人保護は新安保法制を通す時の国民向けの説明であり、実は政府には国民保護の意思がないということが露骨にわかってしまう。結局、JICAの職員と協力者が取り残されることになった。「上級国民」である邦人職員はすでに英国の飛行機で逃げ出しているので政府としてやることは終わっている。後に残った人たちは「自力で逃げてこい」というつもりだったのだろう。

G7が飛行機を派遣したということで足並みを揃えるために自衛隊機を派遣した。加藤官房長官はアフガニスタン政府の救援要請が降りていないことを気にしていて誰からも聞かれていないのに「新安保法制によるものではない」と釈明していた。そしてカブール空港の安全は確保されていると法律上の形にこだわり続けた。

オリンピックを強行したときの数々の言動と比べるとそのやり方には天と地ほどの違いがある。オリンピックでは形式にとらわれることなく特例措置をとった。なぜそれができないのか。

おそらくアフガニスタンに入った邦人たちは「アフガニスタン開発に乗り遅れるな」という政府の思惑によって現地に派遣された人たちだ。政府には彼らを救援する義務があり現在の状況を総括する説明責任もあるはずだが、菅総理の声が聞かれることはない。

こうした思惑とは全く関係なくアフガニスタン情勢は悪化し続けている。ISがパキスタン・アフガニスタンに残っていることがわかってしまった。バグダーディーを殺したことで終わったはずのテロ組織がいまだに生きていることが再認識されてしまったのである。

「ISのホラサン州」はタリバンに不満を持ったパキスタンやアフガニスタンの勢力がバグダーディーに忠誠を誓って生まれた組織だそうだ。タリバンが支配するアフガニスタンでは完全に地下化したと見られている。そこに武器や弾薬が供給されタリバンというテロリストが作った国家の中のテロリストになっている。さらにアメリカ人が関与するネットワークがありタリバンとISの間には相互連絡がある。アフガニスタンにはもはや国際承認された国家というものは存在し得ない。あるのは純粋な混乱だけである。

おそらく、今後この問題は一人逃げてきた邦人のインタビューや「JICA職員家族の懇願に菅総理が耳を傾ける」というように情緒的に捉えられて消費されるのであろう。だが実際にはアメリカ合衆国が弱体化していてそもそも「国家という枠組みだけでは世界情勢が語れなくなっている」という不都合な真実を我々に突きつけている。

おそらく本物の安保法制はこうした変化に対応するものでなければならないはずだが長年安全毛布のようなアメリカと核の傘に守られてきた日本人には耐えられない議論なのではないかと思う。たとえ幻想であったとしても我々は強いアメリカや万全な核武装というイメージを手放すことができないのだ。

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