総裁選挙の概要が決まった。地方票を入れた選挙にするそうだ。満を持して岸田文雄前政調会長が総裁選への出馬を宣言した。あとは菅総理とガチンコ対決になるか誰か第三者を立てて「仲良し政策論争ごっこ」を演出するのかということになる。おそらく口下手な菅総理と岸田前政調会長のガチンコ対決では対話が成立しないだろう。岸田前政調会長はリモートの質問も受け付ける会見を自力で行ったのだが、菅総理にそんな側近はいない。さらにご本人もリモートワークとオンライン会議の区別がついていなかったということが話題になった。官僚が書いたものを興味なさそうに棒読みすることしかできない総理大臣が政策論争をすればするほど国民は不安に突き落とされるだろう。ダミーでもいいから誰か第三の候補者を立てたほうがいい。
菅総理の総裁選での一挙手一投足は「一体、菅幹事長・菅総理とは何だったのか」ということを考え直す良いきっかけになるだろう。これまでの総裁選挙は夢を振りまくために開催されていた。だからこそ自民党の再起爆剤としての意味合いがあった。だが今回の争点は「菅総理が一年をどう総括するか」である。もちろん総括できればの話なのだが。
岸田前政調会長の記者との質疑応答は1時間半以上行われた。小さなノートを取り出し「一年間地道に現場の聞き取りをしてきた」と訴え記者の質問にも丁寧に答えていた。一年前の岸田さんは宏池会の領袖としてお神輿に乗せられているような感じだった。今回はそこを改め現場の声を聞き丁寧に対話する新しい岸田像を打ち出そうとしていたようである。つまり菅対岸田ではなく過去の岸田対現在の岸田というのが本当の争点なのかもしれないと感じた。
自民党の側に突きつけられているのは一年間菅総理でやって見て「派閥均衡で国民の声を聞かない政党」のままで本当に良かったのか、あるいは心を入れ替えて新しくやってゆくのかという選択ではないかと思う。
つまり過去を振り返ってみて未来を決めるという修正型の総裁選挙になる可能性がある。
アフガニスタンでは日本人の退避が進んでいない。それどころかタリバンは日本人にいてほしいと考えているようである。戦争に明け暮れるタリバンはいわば武士のようなものである。だが実際に国のインフラを動かしているのはアフガニスタンで殺害された中村哲さんのような外国からの支援者だ。タリバンはそれに気が付き始めている。
タリバンは外国の軍隊にはいて欲しくないが技術者には残って欲しい。だがそのためには国内の治安を維持する必要がある。アメリカから国を奪ったのは良かった。「本当の戦いはここから始まる」ということに彼らは気が付き始めている。
中村さんはパキスタン国境に近いジャララバードで農業インフラを整備していた。中村さんを殺した犯人はタリバンではなくTTPと呼ばれるパキスタン側のタリバンのようだ。タリバンといってもアフガニスタン側とパキスタン側の二つの運動は分かれている。さらにタリバンも必ずしも統制が取れた組織ではない。つまりまず自分たちの組織を統制しないと外国人にいてもらうことすらできないのである。
ただ極めて厳しい道のりになりそうだ。パンジシール渓谷では交渉が進みつつある。だが、カブールの空港で自爆テロが起きアメリカ人を含む大勢が殺された。アメリカ当局もイギリスの情報機関もIS-Kという集団の犯行を疑っているようだ。タリバンが国内を統一することは当面ないだろう。別のテロ集団が動き始めているからだ。
カブール陥落は日本側も過去の見直しを迫る機会になるだろうと思う。新安保法制を野党の反対を押し切ってまで整備するべきだったのかという問題がある。
自衛隊機をイスラマバードに入れたものの自力で空港に行き着いた日本人はいなかったそうである。このため初日の救出活動は行われなかった。安全確保された地域以外に自衛隊を派遣することはできないので「なんとかして空港まで来てください」ということしかできない。くわて空港でテロ事件が起き米兵が殺されてしまったので「安全確保」という前提も崩れてしまった。
そもそも当事国の大統領が逃げたしているので当事国の要請は得られないのだから限定的集団的自衛権という枠は使えない。すると安全が確保されているところにしか自衛隊は送れないので結局邦人が救出できない。押し切った与党も反対一辺倒だった野党も「本当にこれでよかったんですか?」ということになる。いいはずはない。
活動できる期間は8月末までと限られている。安全確保という前提が崩れてしまったためヨーロッパはとりあえず助けた人だけを救出して撤退するようだ。
日頃からニュースを扱っていると、ついつい「先読み」や「未来予測」ばかりをしたくなる。だがおそらく現在は一旦起こってしまった動きについて「あれは良かったのか?」ということを考え直す時期のようだ。こうした動きは9月いっぱい、あるいは10月初旬まで続くのではないか。