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韓国国家情報院(国情院)と櫻井よしこの関係

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タイトルこそちょっと煽り気味なのだが「櫻井よしこさんは韓国のスパイだ」などという話を書くつもりはない。韓国MBCのPD手帳が「韓国情報院が日本の保守系団体に情報を流していたようだ」という調査報道を流した。これを聯合ニュースが伝えたことから「おそらく韓国保守系に都合の悪い話なのだろうなあ」と思った。だが韓国語での検索能力がなく韓国政治のあらましがわからない人にはそもそも何の話をしているのかすらわからないかもしれない。

結局、櫻井さんは韓国のスパイだ云々というよくわからない話に落ち着いてインターネットのよくあるあぶくの一つのように盛り上がって消えていった。

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国情院はもともとKCIAと呼ばれていた組織が前身になっている。韓国は戦後軍政を経験しており市民を抑圧していた組織が形を変えて残っている。これをまず理解しなければならない。

その上で聯合ニュースの記事を見てゆく。「極右」と書いてあるのだがこのあたりはあまり気にしなくてもいいと思う。そもそも聯合ニュースは革新系のメディアだし日本の保守系団体につける敬称くらいの意味合いなのだろう。

ただ短い記事の中に櫻井よしこさんの名前が入っていたことで日本では注目された。櫻井よしこさんの側は即座に否定し「名誉毀損に当たる」と抗議している。

PD手帳は韓国語バージョンを見ることができるのだが韓国語がわからないとそもそも検索ができない。タイトルは国家情報院が日本の極右団体と違法な取引をしているというものである。WowKoreaがあらすじを書いているがだいたいその通りなのだろうなと思う。ただ、その関係はあくまでも関節的だ。国情院はおそらく日本の公安に情報を流しそれを櫻井さんらが使っているということなのだろう。

櫻井よしこさんの名前は10分近辺に出てくる。だがあくまでも正体不明の内部告発者からの情報であり「確かな情報」とまでは言い切れない。政権に近い「極右のマドンナ」という表現や安倍総理との親密な関係も出てくるのだが国情院が安倍総理に近いという印象を与えるために櫻井さんの名前を使っているような印象も受ける。つまり本当に使いたかったのは安倍総理の写真なのだろう。

いずれにせよ番組の後半は国情院の問題というよりは櫻井さんを取り上げたような内容になっている。MBCは櫻井さんにも突撃取材したようだが櫻井さんが取材を受けることはなかった。この「櫻井よしこ推し」の内容は実際に見て見ないとわからないのだが30分以上の動画なので韓国語ができないと見ていて面白くはないだろうなあと思う。

韓国は8月15日に向けて光復節の盛り上がる季節だ。放送日程にもなんらかの意味があるだろう。

国家情報院はもともと安企部と言われていた。朝日新聞は次のように書いている。保守が韓国の革新系を弾圧するために使って来た歴史がある。つまり、光復節の盛り上がりを背景に市民団体を弾圧する可能性のある組織が日本の危ない人たちと組んでいるという印象を作りたのだと思われる。

韓国大統領直属の情報機関。米国の中央情報局(CIA)に似た情報収集・謀略・秘密工作をするためKCIAといわれてきた。1961年に故朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が創設した韓国中央情報部が母体。73年8月の金大中(キム・デジュン)氏拉致事件に関与。79年に全斗煥(チョン・ドゥファン)政権が名称を国家安全企画部(安企部)と変更。金大中政権下(1998-2003)で、現在の名称に変え、経済情報や外国動向を重視するなど、性格を若干変えてきた。

朝日新聞

逆に保守系の朝鮮日報は「北朝鮮からの団体が韓国で宣伝活動を行なっていてそれを国情院が防いでいる」というようなニュースを流している。韓国は2022年に大統領選を控えており検察やその他の勢力が勢力争いを繰り広げている。集団主義の韓国には「一体になった政府」は存在せず大統領派や反大統領派がいる。

おそらく櫻井さんらの保守団体は公安からの情報を使ってきたのだろうし従前から国情院と公安のつながりはあったはずである。その意味では日本で保守運動を支援する人たちは知らないうちに韓国の勢力争いの協力者になっていたということがわかる。おそらく彼らは「韓国人」を攻撃しているつもりになっているのだろうが実は構造の一部になっていたということである。

あとは櫻井さんらがこれを知っていたかということだけが問題なのだが、それは当人たちが総括すればいいことなのだろう。一旦知ってしまった以上、今後も使い続けるのだろうか?という疑問はあるが「あれはでっち上げだった」と説明すればいいわけだから大した問題にはならないのかもしれない。

ちなみにMBCは民間放送として出発したが言論統制の一環で公営化されたという歴史があり言論的な中立性には疑問がある。ただ放送局そのものも一枚岩ではない。政府と放送の関係についてはこの記事によくまとまっている。KBSは放送法、MBCは放送文化振興法という別の法律で政府の関与を受けているそうだ。

MBCもKBSも政府から介入された歴史があり労組運動が起きている。MBCでは労組運動の結果社長が解任されたこともあるそうだ。この記事にもPD手帳の名前が出てくる。世論に訴えかけてロウソクデモの流れを作ったのはPD手帳なのだそうである。

また、身近なところではProduce X 101の不正投票問題を取り上げてプロデューサの逮捕につなげたという実績もある。世情に訴えかけるポピュリズムの国という見方をする人もいるが庶民感情に敏感な国情という言い方もできる。

日本だとTBSの報道特集と同じようなテイストだが庶民支持の有無が大きく異なっている。

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