沖縄県のコロナ感染者の割合が世界最悪になったというショッキングなタイトルを見つけた。まず「沖縄だけが」なぜそうなったのだろうかと思った。次に何を根拠に世界最悪と言っているのかと考えた。調べてみると東京も「世界最悪基準」になっていることがわかる。東京は制御不能と言っている。最終的に「ワクチンが広く行き渡るまで少なくとも感染者ベースのこの騒ぎは続くのだろうなあ」と感じた。
まず「世界最悪レベル」なのだが10万人のうち256人が感染しているということなのだそうだ。200を超えている国は確かにそれほど多くない。ただ東京も207人なので琉球新報が正しければ東京も世界最悪ということになる。
思いついた仮説は二つあった。第一はアメリカ軍が感染源になったという可能性である。だが米軍が感染源になっているならデルタ株以前から大変なことになっていたはずである。原因として全くないとは言えないのだろうがこれがメインの理由である可能性は低そうだ。
次の理由は観光業者が多く対策が遅れたという可能性である。観光に依存する沖縄では最後まで飲食業などが反対していたわけだから、これも理由としてはあるのかもしれない。だが、同じ理由からメインの理由にはならないだろう。ただし2021年6月にデルタ株による感染拡大が始まった当時の市町村別感染者率を見ると嘉手納町や北谷町で100を超えており米軍はおそらく発生源の一つなのだろうなと思う。
いろいろ検索していてわかったのはやはりワクチンだった。
全国で最下位なのだそうである。最下位の理由は複合的である。まず県域に多くの島を抱えていて全県レベルのワクチン接種体制が作りにくい。6月の情報では石垣市や与那国町で200を超えている。隔離されているから安全というわけではなく狭い島でも一度入ってくるとあっという間に拡散してしまうのである。
高齢者のワクチン接種率もやや劣っているのだがこれが決定的に影響を与えるのかどうかはわからない。何よりも大きいのは高齢化が進んでいないという点のようだ。つまり高齢者の数が少ないためにそもそもワクチン接種を受けていないという人が多い。
沖縄タイムスは6月の時点で「職場接種を増やせ」といっている。
6月の時点で「分析を進めるべきだ」と書かれているが8月になっても県の見方は要領を得ない。「県によると、接種率が低い要因として(1)体制構築の遅れ(2)県の高齢化率が低く人口に対して供給量が少ない(3)接種券発行が遅れ、職域別の接種などを受けた人でもワクチン接種記録システム(VRS)に反映されていない(4)ワクチンを希望しない人が一定数いる―などが考えられるという。」というものだったと琉球新報が伝えている。つまりいろいろ理由は考えられるが何が決定打なのかよくわからないということなのだろう。
「高齢者中心の接種政策」のせいで政府からの割り当ては低かったのだろうなと思える。
そして若年人口が多いというのは同じように「世界最悪レベル」の東京にも当てはまるのだろう。おそらく日本で最も人流が活発な都市であり高齢者よりも若者の数が多い。厚生労働省の調べによると神奈川・愛知・東京・沖縄が高齢化が進んでいない地域のトップフォーである。
全国レベルでは高齢者中心にワクチン接種を進めてきたという政策は間違いではなかったのだろう。だが、少なくとも東京と沖縄県はそうではなかったのかもしれない。だから本土でも「制御不能」とか「災害レベル」というような話が飛び交っている。おそらく東京が制御不能なのもワクチン接種が進んでいないからなのだろうなと思える。
ワクチン接種のまだらさがどんな状況を作り出すかを全く違った事例で見てみよう。
職場接種の重要性は伊勢丹の事例を見てもわかる。正規社員は枠地接種を済ませたが出入り業者はそうではない。2021年8月6日の情報では99%の感染者が「取引先の外部社員」だったそうだ。デパ地下は小さなマスに出入りの業者が大勢で出入りしているわけだから換気対策のほかに「外部社員が多い」という理由もあるのかもしれない。
それでもデパート側は営業を続けたいようで大勢の陽性者が出かねないPCR検査には消極的なのだった。週刊ダイヤモンドは新宿伊勢丹が外部社員がPCR検査を受けないように通達を出していたのではないかという記事を出した。この記事が炎上することはなかったのだが、結局自主的にデパ地下を閉める方向で調整を始めたようである。外部業者の出入りが特に激しいデパ地下はワクチンで守られていなかったであろうことが想像できる。
結局、政府の見解ではなく尾身会長らの提言によって世論が沸騰することを恐れて閉めることにしたのではないかと思える。つまり、形だけ誤魔化しても無意味なのである。
今回は沖縄の事例を中心に見た。ワクチンが幅広く行き渡るまで感染者ベースでの騒ぎは収まらないということになるのかもしれない。局所的に防衛しても意味がないのだ。