東京都に4回目の緊急事態宣言が出される見通しとなった。日本政府はオリンピックと政権という玉体を守るために観光業や飲食業を犠牲にしようとしているんだなと思った。日本の敗走が始まったのだ。
そもそも動きがかなり唐突だった。東京都議会選挙の結果を受けて菅総理は「ワクチン一本でゆく」という決意を二階幹事長に伝えた。二階幹事長は「政局の存亡はワクチンにあり」という意味の言葉で応じたという。流石にこれはまずいと思ったのか加藤官房長官は「ワクチンと感染防止の二正面作戦だ」とフォローにならないフォローをした。だが菅総理にワクチン以外の策がなくそしてその策も破綻していることは明らかである。
本来なら東京オリンピックを開催してもいいのかという議論があってもいいはずだ。だが、オリンピックはもうすぐに始まる。もはや止められないという時期に来ているのだからもうやるしかないということになっている。だが議論をしないわけにもゆかないので「観客を入れるか入れないか」というところに議論を後退させた。政府としては撤退戦のつもりなのだろう。
緊急事態宣言はオリンピックのようなお祭りをやれば周囲の飲食店に人が流れるだろうという前提があるのだろう。緊急事態宣言はオリンピックのために飲食店の営業機会を奪うということである。オリンピックは良くて他のイベントは何故ダメなのかと聞かれた総理は何も答えられなかった。当然マスコミは「質問に答えていない」と書く。政権批判ではない。不安と諦めの入り混じった気持ちで特別扱いのオリンピックを眺めている。
緊急事態宣言の出し方も不自然だった。まず尾身茂・小池百合子会談が行われた。小池さんは魔女だということになっているので「尾身茂さんと話し合った結果緊急事態宣言だ」などと言われれば「オリンピックを守りたいと思っていた菅総理が緊急事態宣言に追い込まれた」ということになりかねない。五大臣に危機感はあったのだろうがその危機感は東京都民の命が危ないというものではなかったのではないかと思う。政権の面子を守りたかったのだ。
それでは専門家は何を考えているのか。総理会見で尾身茂会長は次のように総括した。短い発言だったが、またしても尾身総理でいいじゃないかと思った。
- これまでの対策は効いてきている。今が正念場だ。ワクチンも高齢者を中心に効果が出ているようだ。
- 一方で環境の変化もある。デルタ株と50代・40代への広がりである。だから人流は引き続き抑えなければならない。
これなら効果が出かけているのに緊急事態宣言が出る事情はわかる。と同時に総理大臣がこれを総括できない理由も明確だ。
50代・40代に広がっているならこの人たちに優先接種すべきではないかという議論はあっていい。また人流を抑制したいならオリンピックは開くべきではない。つまり優先順位をつけて議論を明確にした段階で政府が強行しようとしていることが間違いであるということが露見してしまうのである。
リーダーが総崩れするとその配下の人たちは散り散りバラバラに逃げはじめる。練馬区ではワクチン接種を集団接種に集約しているようだ。7月7日の更新では集団接種センターを集約し医療機関にもすでに予約を取っている人たちに対しては二回目を確保するように呼びかけている。在庫の適正管理という意味ではこれが正しい対応だろう。12歳から15歳にも接種券を配布したそうだ。一方新宿区では集団接種が止まっている。個別接種に関しては何も書いていないので「探せる人は探してください」ということなのだろう。自治体によって対応は様々である。
千葉市に聞きにいったところ「千葉市は医療機関に対してワクチンを余らせるなら非優先枠にも打って欲しいとお願いをした」そうだが「それは医療機関に任されており市が積極的に推進したものではなかった」ということだ。そして市が在庫を把握して案内してしまうと「動きやすい若者が受付をしている医療機関に殺到しかねない」から積極的に在庫の把握はしないつもりだと言っていた。積極的に関わりたくないという気持ちがにじむ。
Quoraで聞いたところ「5月の末の時点で報酬改定が行われた」という情報をもらった。多く接種するとあるラインで報酬が倍になるそうだ。
在庫リスクもなく国が全部買ってくれるような状態だから余力のある医療機関はこぞって参加したことだろう。ワクチンも優先配分されるので儲かるところは儲かり、出遅れたところはさらに出遅れるというループができてしまう。つまり政府の政策で格差が生じるような仕組みになっているのだ。地方でワクチンが不足した理由はおそらくこれで説明ができそうだ。
国が提供するダッシュボードによるとどこかでシステムが壊れたのだろう。6月末で接種スピードが落ちている。7月はさらに再調整で落ち込むはずだ。貴重な一ヶ月がどうして無駄になたのかは後で検証した方がいい。
千葉市では集団接種の新規受付は止まり個別接種も新規の受付は止めてしまった。7月1日の情報では351カ所あった医療機関一覧リストは調整中ということになり閲覧ができなくなっていた。現在、1回目の接種の新規予約の受付を一時停止しています。再開の目途がつきましたら、改めてお知らせしますので、今しばらくお待ちくださいと書かれていた。ようやくお知らせが入り7月末からの再開が決まったそうだ。7月末からは60才代・基礎疾患を持っている人が優先される。尾身会長が懸念する50代・40代への接種は8月からになりそうだ。遅すぎるという気もするが一応目処はたった。この間人流を抑制して混乱を食い止めなければならないという意味ではワクチン敗戦の後始末としての緊急事態宣言という意味合いもあるのかもしれない。
背後には社会主義の失敗もあるのだが、河野行政改革担当大臣は「在庫がある自治体にはワクチンは渡さない」という趣旨のことを言いつづけている。また東京・大阪・北海道は確保している割には摂取が進んでいないようですねと脅すようなことも始まった。能力のない人はどこまでも悲惨だ。もはや自民党という災害と言って良いかもしれない。
おそらく菅内閣は基本的な経済政策も立てられなくなっている。計画経済の罠というまるでソ連末期のような経済運営をしているからだ。優秀な官僚がいなければヴェネズエラ化してもおかしくない。そういう意味で日本はものすごく運がいい国なのかもしれない。
この政権を放置したのは誰かということを考えると「選挙にゆく大切さ」を改めて痛感する。総選挙の時までこのことをみんなが覚えていればいいのだがと切に感じた。
いずれにせよまた息苦しい夏がやってくる。出口は必ずあるものと信じて頑張りたい。