麻生太郎副総理兼財務大臣が「台湾が中国から攻撃されたら存立危機事態になる可能性がある」と発言した。問題発言だと書いたところ、普段は政治問題にコメントを入れない人たちから多数コメントをもらった。台湾問題にはなぜか多くの人が興味を持っているようだ。
政治資金パーティーの席でのこの発言はあまり戦略的に練られたものではないと思う。だが練られていない分だけ彼らの本音を知ることできる。コメントの反応も合わせるとアメリカが中国に対する牽制姿勢を強めるなか「アメリカがそっちなら俺たちもこれくらいのことは言ってもいいんだろうな」という気楽な気持ちになっている人が増えているんだろうなという気がする。つまり正解に依存しているのだ。ただし彼らは自分たちで論を組み立てることはできないので反論という形でしか表現が出てこない。
第二次世界大戦に突入する前「陸軍は信頼できる組織であり中国進出こそが日本を救う」という空気があった。それに乗った毎日新聞がよく売れた一方朝日新聞は路線変更を余儀なくされた。おそらく「アメリカ追従」というのは同じような安心感を日本人に与えるのだろう。強いものに心酔し尻馬に乗ろうとするのである。
繁栄する中国と成長から取り残される日本という対比を受け止められない人たちには「一種の無力感」がある。これを直接埋めることはできない。となると視点を変えて「日本には反日勢力がいてそのせいで僕らは弱くさせられている」と考えたい。コメントの中には執拗に「問題発言だと思っているんですよね」と聞いてくる人がいた。おそらく反発したくてウズウズしているのだろう。勝てるゲームが見つけられない人が多いことがわかる。
先日、小池百合子東京都知事が人々を惹きつけるのは「実力のある女性が無理解な男性に邪魔されている」という被害者意識ゆえだろうと分析した。女性特有の問題と考えたのだが、どうやら間違っていたようである。日本には「実力はあるが誰かに邪魔されていて本来の強くて優秀な自分たちになれない」と考えている人がとても多い。演技性人格がもてはやされる裏には「盗まれた意識を持つ人たち」や「去勢された人たち」がいる。
ただ、麻生副総理とそれを支持する人たちが「存立危機事態をどう位置づけるのか」ということが気になった。最初は政府が「我が国と密接な関係を持つ国」を勝手に指定するのだろうと思った。このやり方だと場当たり的に自衛隊を出動させられる。だが、真面目に考えてゆくとかなり矛盾した見解になり最終的に破綻をきたす。例えば麻生太郎副大臣のコメントには不思議な点がある。
- 台湾を「日米共同体」の属領のように扱っている。だがそんな日米共同体はない。アメリカと台湾の間には軍事同盟に準じる法律(台湾関係法TRA)が残っているが日本にはそんなものはない。
- 麻生副総理は中国が台湾を攻撃すると言っている。台湾にも台湾は中華民国の一部であると考えている人たちがいて必ずしも台湾の実感とは合致しない。
どうやら麻生さんの頭の中には「台湾が独立した主体である」という意識はなさそうである。これで論を組み立ててゆくとおそらくすぐに破綻するだろうから防衛官僚や外交官僚は理屈づけに苦労させられるだろうなあと思った。
ただ、これについては沖縄問題をほのめかすコメントを書いてきた人がいた。つまり、共産党中国が台湾を狙うということはすなわち東シナ海の覇権を狙っていてその魔の手はすぐに沖縄に及ぶのだろうと言っている。一般の中国人からすれば迷惑な話だが中国が世界征服を狙っていると考えたい日本人は大勢いる。
検索して見ると麻生総理も台湾の次は沖縄と言っているようだ。
もちろん今そんな主張をすれば笑われるだけだろうが仮に日米の担当者が本気で中国とことを構えようとすれば「悪の独裁者」である習近平共産党総書記(国家主席=プレジデントではない)が周辺覇権を狙っていると世間に印象さえつければいい。大量破壊兵器でさえでっち上げられたのだから世論操作は割とどうにでもなるだろう。
つまり誰かがそういうキャンペーンを始めたら「いよいよ面倒なことになってきたな」と思ったほうがよさそうだ。
臆病な日本人はとにかく何にでも安心安全を追い求めるのだが、ある種「これは絶対に安全だ」と思うものを見つけるとそこに殺到するという極めて悪い癖がある。アメリカの庇護はそれにあたる。だからこそこの話題は誰でも安心して正解が語れる問題になっているわけだ。その勢いはほぼ暴動レベルといってよい。個人で押し留めるのは難しい。
この投稿には中国系二人のコメントがついている。中国=悪の独裁国家という印象が前提になっていて憤懣やるかたない様子だ。気持ちは理解できるが集団主義的傾向が強い中国人は彼らの論理を丸まま飲み込んでやらないと絶対に納得はしない。つまりこちらも妥協はしないのだから話し合いの余地がない。このスペースでは挑発的なことを言うと一発退会になると言うルールがあるのでにらみ合いが続くことになる。
「石橋を叩いて渡った後は猪突猛進」という傾向は明らかに悪い方向に進んでいる。
菅総理はワクチンだけが命綱だと認識しているようだ。二階幹事長に「ワクチン接種をなるべく早く進める。ワクチン一本でいきたい」と語ったそうである。確かに科学的にはそうなのだろうが河野行革大臣の作戦はすでに破綻していて代替案もない。緊急事態宣言下でのオリンピックに破綻したワクチン計画だけを竹槍がわりに突っ込もうとしている。
さらに二階幹事長も「政局全てワクチンだ」と応じたそうだ。秋の総選挙を睨んでいるそうだがそもそも7月8月のめどは立っていない。ギリギリにワクチンが再供給されれば国民は全て忘れてくれるだろうと思っているのかもしれないが振り回された医療機関も自治体も自民党の思惑通りには動かないだろう。
政治老人たちが視野狭窄に陥る中現役世代はワクチンが打てないままで本来は必要のなかった営業自粛に追い込まれている。まさに悪夢の自民党政権だ。