ざっくり解説 時々深掘り

ワクチンで国民を振り回し続ける河野行革担当大臣

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

この数日間「ワクチンが足りなくなった」理由を探した。最終的には当たり前のところに着地するので面白くもなんともないのだが、とりあえず書いてみたい。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






最初の仮説は時間差二倍仮説だった。最初の人たちが終わると二回目接種が入るので扱う人数が二倍になる。また、二回目接種のための将来在庫も確保しなければならない。ここで要求量がサージしたのではないかと思った。

だが実際のところそんなことにはなっていない。Quoraで質問したところダッシュボードで現在の接種スピードがわかりますよと教えてもらった。Quoraにはニュースをきちんと見ている人が多く冷静なインプットをもらえることも多い。

https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard

サージ仮説は棄却された。次に考えたのは強欲医者仮説だった。NHKが5月に末にこんな記事を書いている。100回以上接種してくれた医療機関の報酬を倍にするという。在庫を確保すればするほど儲かるわけだから医者たちはこぞってワクチン在庫を確保するのではないかと思った。

だが、この仮説だとプランが発表になってからワクチン接種が加速度的に増えてゆくはずである。だが実際にはそうなっていない。つまりこれも仮説としては正しくなさそうだ。お医者さんを疑って悪かったなあと思った。

ワクチン接種のスケジュールは加速度的には増えておらず一定の傾きで増えている。だが増えない物が二つある。ワクチンの供給量と国の管理体制だ。つまりここがボトルネックになる。

このシステムは加速装置はついているがブレーキはない。止めるとしたら全体を止めるしかない。実際には6月21日あたりがピークになっている。

この辺りは自分がワクチンの予約をした時期なのでよく覚えている。

近所の病院ではなぜかワクチン接種を受けてもらえた。大規模に接種ができないにせよ受け入れればお金にはなるので「誰でも受け入れてあげよう」という病院が出てきたのかもしれない。そこに運良くあたり予約ができた。これが6月21日だった。6月23日に河野大臣がTBSのひるおびに出演しワクチン接種計画は順調であると宣伝した。

現在は若者にどう働きかけをして打ってもらうかという最後の三つ目の山にきている」というのがその時の発言だ。

順調に推移しているんだなと安心した。これで夏ごろまでにはワクチン接種が進み「あの夏が一番苦しかった」ということになるだろうと思ったものだった。

ところがそのすぐ後にワクチンが足りないという話が河野大臣から出てきた。テレビに出演した日の夜に自治体の大規模接種も含めて予約受付を止めてしまったのである。

新型コロナウイルスワクチンの自治体の大規模接種と職域接種をめぐり、河野規制改革担当大臣は、モデルナのワクチンの配送が追いついていないうえ、今後、供給できる量を上回るおそれがあるとして、大規模接種は23日で、職域接種は25日の午後5時で、新規の申請の受け付けを一時休止すると発表しました。

自治体の大規模接種と職域接種 新規受け付け一時休止 河野大臣

この記事はスピードを落とさないようにやってゆきたいという河野大臣の言葉で結ばれているのだが、実際にはみるみるうちに速度が落ちている。

自治体も医療機関もこれまで在庫を意識することなく椀子そば方式でやってきた。だがブレーキのない装置だったために河野大臣は全体を止めるしかなかった。おそらくこの段階でシステムが緊急停止してしまったのだろう。一瞬そう思った。

だがよく考えてみると河野発言を受けて医者の手がぱたっと止まるとは思えない。兆候を探して見た。いくつかあった。

例えば19日の知事会では佐竹知事が7月のワクチン供給量が足りなくなるらしいという話をしている。このあたりから「うちは足りない」「どうなっているんだ」とパニックになり国への要望が続いた。さらに田村厚生労働大臣もかなり在庫が溜まっているらしいという発言をしている。これが22日である。

のちにTBSが「個別接種中心のところはVRSへの入力が遅れていて消化率が見かけ上悪くなっているようだ」と報道していた。検索したところ「成績が悪い」と名指しされた大阪府が反発している記事が見つかった。やはりVRSへの入力が面倒だと嘆いている。おそらくこれが「在庫」が溜まっている真相だったのだろう。逆に集団接種が進んでいる地域は分業ができていていかけの成績が良くなる。

この時点で供給体制に問題が出始めていたのだろう。統計になって上がってくるのには少しタイムラグがある。だが河野大臣は「自分が追いつかないからごめんなさい」とは言えなかった。そこであんな説明になってしまったのかもしれない。大混乱を招いた後も謝罪はせず「自治体に最適化をお願いしたい」と司令官気取りである。ご要望にお答えできませんとは言わず、早く打ち過ぎたらワクチンがなくなってあなたたちが困るでしょというような言い方になっている。

おそらく高齢者枠の次に非高齢者枠を全部開けたのもまずかった。単位時間当たりに供給できるワクチン量は減るわけだからペースはゆっくりにならなければならない。人口構成を見ると75歳以上は1,300万人、74歳から65歳まで1,500万人、15歳以上65歳未満が8,000万人だそうだ。改めて考えるまでもなくライバルは多くワクチン量が少ないとなれば最初はそこに殺到するに決まっている。2,800万人に打つのに二ヶ月かかったのだとするとワクチン供給が6割になると規定すれば8000万人を打ち終わるのにかかる期間は自ずと出てくる。色々な見積もりはできるだろうが。いずれにせよ今年中にはワクチン接種を終えることなどできない。

すでにワクチン接種体制は整っておりなおかつインセンティブもついている。さらにテレビは毎日のようにワクチンの「宣伝」をしていて期待が高まっている。

結局、ブレーキのない自転車で飛び出して怖くなってブレーキを踏んだら前のめりでこけた程度の話なのかもしれない。だがこけたとは言いたくないのであれこれ言い訳をしているという状態である。

いろいろなところで細かいことはこれから検証しなければならないなどと書いたのだが、仮説を潰してゆくと当たり前のところに行き着く。最初から在庫不足もなければ欲深い医者もいなかった。単にプライドが高いだけで実務処理能力のない司令官がいただけである。

世襲だから、お父さんの名前を知っているからという理由で投票してきた我々有権者は猛省しなければならないのではないかと思った。改めていうまでもないことだが、選挙は重要なんだなあと思った。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで