産経新聞に「100万回接種の目標 「菅流」に不満も首相は自信」という記事をみつけた。読んでいてうすら寒くなった。
- 菅総理が65歳以上の高齢者のワクチン接種を7月までに終わらせる目標に執心している。
- ワクチンこそが全てを解決すると信じている。
- このため各都道府県のワクチン接種進捗率などを把握しているそうだ。
- 強い思いを胸に記者会見では100万回に対応できるような体制ができると思うと繰り返し述べた。
この辺りで「総理大臣が自分の掲げた言葉に捕らえられて周りが見えなくなっている」ということがわかる。問題は山積しているのだがワクチン以外は見えていない。大丈夫か?と思うのが普通だ。だがこの辺りから産経新聞の記事は狂ってゆく。
- 周りが無理と思うような高い目標を掲げるのがリーダーシップである。
- 総理大臣は東京の予約状況を毎日チェックして河野大臣にも細かい指令を出している。
- 明確なゴールを設定して総動員を図る手法は総理の政治スタイルであり総理の覚悟の現れである。
司令塔である総理大臣がワクチン一本賭けになって周りが見えなくなっている様子を「これは力強いリーダーシップなのだ」と褒め称えている。この辺りで「もしかして多くの日本人がこの記事に対して共感するのではないか」と考えた。少なくとも産経新聞の読者はそう考えているということなのだろう。総理は俯瞰的立場から状況を把握しなければならないと考えるのはもしかしてジブだけなんだろうか。そう考えるとますます怖くなった。
菅総理大臣はある時期から新型コロナウイルスについて全体を把握することを諦めている。ある記者者意見では尾身茂会長に質疑応答を任せきりだったということが伝えられた。さらに別の記者会見ではついにまともに質問に答えることもなったそうだ。
特に懸念されるのはオリンピックである。「緊急事態宣言下でも五輪開催できる? 菅首相の答えは」という朝日新聞の記事では総理が全く応えてくれなかったということそのものが記事になっている。共同通信も同じ書き方をしている。「首相、宣言下五輪の是非答えず 感染防止策の説明繰り返す」
アメリカの医学雑誌から批判を受けたオリンピック対策だが、菅総理は観客を入れた開催に自信を持っているようだ。読売新聞は総理大臣の主張を「国内の観客を入れた五輪開催、首相「対応できる」と意欲」そのまま流している。そればかりか陰性証明をつけてオリンピックに観客を受け入れるという判断をしているそうだ。これまで偽陰性があるから検査には懐疑的だと言い続けてきたマスコミは自分たちの懸念を反省することはなかった。
さらに選手村ではアルコールもOKだという。実際に大丈夫なのか?と思う一方で、自粛要請を受けて倒産寸前の飲食店はたまらないだろうなあと思う。
これまで検査には抑制的だったのに専門家会議では「積極的に検査しては?」という議論が始まったそうである。オリンピックでも検査を積極的にやるという方針のようである。IOCの委員から国家主権や国民の命を軽視する発言が続く中で菅総理はおそらく自身のメンツのためだけにオリンピックを成功させようとしているのだろうということがわかる。
だからと言って失敗しても責任をとるわけではない。何か問題が起きた時に全く対応ができないのである。そして、自民党の中に体を張ってこれを止めようという人も次も出てこない。
これで絶対に大惨事が起きるとは言い切れないのだが、日本の政治はかなり危ない領域に入ったと言って良いだろう。バスは日本国民を全員乗せたままで暴走し始めたのだと思う。周りを探しているのだが緊急停止ボタンがどこにもないようなのだ。