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匿名の怒りは渦巻いているがそれがすが政権打倒につながらない理由

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最近、Quoraやこのブログで「日本では実名と匿名で振る舞いが全く違う」と書いている。なんとなく「ふーん」と思う人はいるだろうが、実際には何を言っているのかよくわからないのではないかと思う。そこで仮説を立てて書く内容を工夫してみた。

結果はこの通りだ。ページビューは大したことがないので隠したのだが結果は一目瞭然だった。一週間で火がついた。匿名の怒りは渦巻いているようである。だが、これは現状の改革には繋がらないと思う。今日はそのあたりの理由を整理してゆきたい。

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誰かをさばいて勝ちたい人たち

立てた仮説は極めて単純だった。日本人が考える合理性と他罰・自己責任の組み合わせである。

  • 日本人はとにかく議論に勝ちたがっている。だが勝つならスマートに格好良く勝ちたい。
  • 日本人は誰かを裁きたがっており、不都合は人のせいにしたいと思っている。

基調として政府の新型コロナ対策を批判するタイトルの記事を書く。誰が司令塔なのかはわからないし責任の所在も曖昧だという内容だ。これは他罰的傾向を満たす記事である。それとは別に西村博之さんの名前を出して「議論に勝ちたがる日本人」についての記事を書いた。スマートな勝ち方が書いてあるのではないかと思わせるものだ。

一週間の経緯は次のようなものだった。誰かがTwitterで記事を発見する。フォロワーたちがやってくる。一週間の傾向から「これは他人を罰するブログなんだ」ということが理解され熱心にサイトを巡回し始める。ところが内容は必ずしも誰かを罰するものではないし、そもそも長くて読みにくい。だからブームは続かない。

目の前にある不都合を誰かのせいにしたい。これを「他罰指向」と予防。数十年に渡り閉塞する現代日本は成果分配主義の裏面にある「自己責任と他罰指向」が支配する社会だ。実名では他者抑制が働き集団と匿名の世界では他人を罰したがる方向に動く。日本人は実名と匿名で振る舞いを使い分けているので、分けて考える必要がある。

発見したことをランダムに書いてゆく。第一に、政府の新型コロナ対策には不満が集まっているようだ。安倍政権時代には「あたかもすべてがうまく言っているかのような」説明がなされ、それが満足を集めていたのだが、新型コロナウイルスの感染者数は日次の成績表のようなものであり、政府が基本的に無能であることがわかった。おそらくみな「この無能さ」を説明する理由を探しているに違いない。

だがこれが政権攻撃に向かうことはない。実名世界では大きな権力の側・みんなの側にいると思われたい。さらに有権者が無能だからこういう政権が放置されているとも思いたくない。だから科学的で論理的な説明を別に探すことになる。

実名と匿名では振る舞いが全く異なる。だから「匿名の人たち」が選挙に出かけて票を投じることはない。だから彼らは自力では現状を変えることはできない。これが現在のジレンマである。

むしろ彼らの目的は「政府のいうことなんか聞かなくてもいいのだ」と自分を納得させることだろう。GWの新幹線予約1万席増 宣言でも減らず、JR東日本という記事を見つけた。緊急事態宣言のメッセージ効果はもうない。「とにかく政府のいうことを聞かないといけない」と信じていた2020年春とは様子が違うのだ。

自民党政権は統治はできないが政権には居座ることはできる。国民は協力しないが政権は放任される。極めて日本流の「冷たい民主主義」である。

いわゆる「建設的な提案」は大衆受けしない

立憲民主党が「政権批判の罠」にとらわれる理由がわかった。建設的な提案をしても誰も振り向いてくれない。表向き「立憲民主党は対案を出さない」などと批判されることがあるが、かといって建設的な対案を書いても誰も評価してくれない。

例えば、このブログの例だと「ミニひろゆきくん(西村博之さんの劣化版コピー)」について書けば瞬間の受けはいい。このカウンターはすでに分析した通り「ルール付きの議論を広めること」である。だが、ディベートのやり方について書いても特に反響は集まらない。面倒だからだ。

実際にはとにかく楽して議論に勝ちたい。おそらく「こうやれば議論に勝てる」とか「ご飯論法を封じて相手をグウと言わせる10の方法」などということを書けばレスポンスはよくなるかもしれない。運動しないで痩せる10の方法とか、聞き流しで明日から英語がペラペラとかそういう類の話の方が受けは良いのではないかと思う。

おそらく、物事には合理的で効率的な正解があり、それさえ知れば楽して現状が変えられると思いたい人が多いのだろう。科学的・合理的で効果が実証されているメッソッドを知りたがる人が多い印象がある。実名世界ではそういう書き方をすると高評価が集まる。

ただし、他罰的なので「自分がそれを学ぼう」と考える人はいない。合理的でないやり方をしている「あいつが悪い」ということで納得してしまうのだ。

実名で抗議する人は嫌われるというジレンマ

この匿名性の怒りを引っ張り出してきて政治運動に昇華させることはできるのだろうか。これについては面白い記事がある。朝日新聞のサイトでは途中までしか読めないが(おそらく)期間限定で公開されているヤフーでは全文が読める。

実は抗議する人は逆に嫌われてしまう。

「ちょうど中間」を0として平均点を比べると、「菅義偉」はマイナス0・27、「枝野幸男」がマイナス0・43だった。「自民党」はマイナス0・11に対し、「立憲民主党」はマイナス0・59。「政府に批判的なメディア」はマイナス0・27、「デモで声をあげる市民団体」はマイナス0・66だった。「立憲民主党」と「デモで声をあげる市民団体」の好感度が同じように低かった。

菅首相と枝野氏、好感度がより低いのは… 朝日世論調査

匿名では政府批判に声が集まる。だが実際に行動すると却って嫌われるというジレンマがある。

日本人は匿名では「要領が悪い政府」に反発心を覚えている。だが権利を主張する他者を見ると「それを抑えなければ」という心理状態が働く。彼らのこともまた「要領が悪い抗議者だ」と思っているのではないか。単に声を上げて練り歩くのは単なるエネルギーの無駄遣いでありもっとスマートなやり方があるはずだ。

日本人は格好良くスマートに勝ちたがる。だが訓練は受けていないのでその方法はわからない。

だから必死に「どうやったら議論に勝てるのか」という情報だけを探したがっている。ダイエットできない人がダイエット本を漁ったり、英語を読めない人が英語の教材を買いまくるのと同じことが起きていることになる。

半匿名のネットワークと小さな群れのリーダーを探せ

ここまで読んで「理屈はわかった」という人も多いだろう。ここからわかったことを少し書いてゆく。左が4月初頭の流入グラフである。絶えず新規を求めているがなかなか定着していないという時期だ。だが後半になるに従ってReferralが増えてくる。Twitter発の流入者はSocialではなくReferralに含まれているようだ。

つまり、あまり名前は知られていない小規模のインフルエンサーと呼ばれる人たちがいて、彼らが実際に広めてくれている様子がわかる。おそらく今回火がついたのはバラバラの個人ではなく「もしかしたら会っても顔はわからないかもしれない程度のつながりを持った半匿名の」ネットワークだろう。

この辺りを念頭にファンを探して見るのが良いのかもしれない。

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