この一年、ロシアが憲法で領土分割の禁止を盛り込んだというニュースをよく取り上げた。主眼はクリミアなど別の地域の保全にありそうだが、事実上北方領土が帰って来る見込みがなくなったということを意味している。戦後日本の外交にとっては敗北だといえる。だが「実は北方領土どころではないな」と思っていた。日本の北海道経営が全くうまく言っていないからである。明治以来の開拓は失敗したと言って良いだろう。
JR北海道を政府が救済することが決まった。乗り物ニュースが「支援額については、JR北海道へ2023年度までに1302億円、JR四国へ2025年度までに1025億円、JR貨物へ2023年度までに138億円が予定されています。」と伝えている。
ただしJR貨物はそれなりの成績を出しているので将来投資という側面があるのかもしれない。
特にJR北海道は構造的な問題を抱えている。人口が過疎であり豪雪という特有の難しさもある。JRが解体した時に基金をもらい自立に役立てるはずだったが低金利が続いていて経営を支えるには至っていないという。JR北海道は路線を廃止してバスに転換するというような思い切った手段を講じなかった。代わりに保守点検の経費を削減して事故を起こしたりしてさらなる鉄道離れも起こった。
このように問題を羅列するとJR北海道の経営が悪いだけに思える。だがはたしてそうなのだろうか。
もともと北海道は大部分が「日本」ではなかった。北海道開拓と経営はロシアの南下を防ぐための防衛的な意味合いが大きい。このようにあけすけに書くと「売国奴」呼ばわりされることだろうが「本当にお金をかけて持ち続けるのがいいのだろうか」と思えてしまう。ただ北方領土の軍事展開も進んでおり実は緊張度合いも増している。
北海道が脆弱になれば北の守りは手薄になるが維持し続けるためにも莫大な金がかかるという状態である。全く答えが見えない状態なのだ。
北海道新聞の記事には「政府がJR北海道を助けるのは最後だろう」とある。とりあえず今回は助かった。2030年まではなんとかなりそうである。だがそのあとの展望が全く見えない。プレジデントオンラインにはJRを再編してJR東日本がJR北海道などを助けてやれというような記事があった。どうやら四国も厳しいようである。東京の通勤電車と新幹線の儲けで地方を助けるということである。
イノベーションを起こしてなんとかするという意見もありそうだ。プレジデントオンラインの記事を見ると観光に期待しているようである。だがプレミアム列車は「座席が取りにくい」から価値があるのであって経営を支えるまでには至らないだろう。ずっとやってダメだったものはダメなのではないかと思える。
日本というたいして広くもない国が国土を維持できなくなっているという非常に厳しい現実が見えてくる。さらに北海道を切り捨てても実は話はそこで終わらない。
地域の路線バスも危機的な状況にあるという。これを表面化させたのは新型コロナだが利用者はじわじわ減っており運転手も高齢化が進んでいたという。もともと成人病があったところに急性症状に襲われたような状態になっている。
あたかもGoToトラベルを復活すれば地方経済はよくなると考えがちだがおそらくそうはならないだろう。コロナは問題を顕在化させただけで実は日本は既にかなり痛んでいる。ここから交通だけではなく水道網などのインフラの話を展開することも可能だ。
「思い切った発想の転換」が必要だが、おそらくそれは発想の転換をして地域を活性化させるというような「転換」にはならないはずである。どこを生かしてどこを切り捨てるかというトリアージ的発想が必要でそのためには強い支持のある政権が必要だった。問題を先送りし「日本は今のままで大丈夫」とか「オリンピックを目標に頑張ろう」などと言い続けた無策の安倍時代が問題をここまで深刻なものにしているのだが、新型コロナと自民党の気の緩みという二つの大きな問題を抱える菅政権には北海道の問題は解決できないだろう。