GoToトラベルを止めるか止めないかで議論が続いている。そんな週末、小池百合子東京都知事と西村担当大臣が会談していたというニュースが流れていた。東京を除外するかどうかで会議しているのだという。「これはパフォーマンスだ」と思った。わざわざ「話し合いの中で苦渋の決断であった」ことを印象付けたいのだろう。結局、月曜日になって年末年始は全国で止めるという決断が下された。東京・大阪・名古屋・北海道は目的地としては即時受付停止となり出発の自粛も求めるようである。旅行業者は週末の間、錯綜する情報に振り回されたことだろう。
すでに何回も分析しているように周囲の配慮で決まった経済対策であるGoToトラベルを政府は止めたくない。政府が止めてしまうと約束を違えたことになってしまうからだ。そのため東京都がお願いしたから国が渋々認めてあげたことにしたい。だが小池都知事はこの提案に乗らずパフォーマンスを続けた。菅総理がニコ生で「停止は考えていない」と宣言したこともあり、テレビのワイドショーは大騒ぎになった。
選挙をにらんだ壮大なお芝居が続く。この時点ではまだ喜劇的な要素がある。春の緊急事態宣言が結果的に大したことなく済んでいるからである。だが感染が拡大すれば、後から振り返って「あの時にちゃんとしていれば」となってしまうのかもしれない。先のことは読めないのだから今あるデータで最善の判断をすべきだが政府の姿勢からはそれが見えてこない。
では具体的に誰が相手のお芝居なのだろうか。間接的にわかる日経新聞のニュースがある。公明代表「GoTo、GWまで延長」政府に提言へである。中小零細企業を支持者に抱える公明党にには観光業の人たちも大勢いるのだろう。菅義偉総理大臣は公明党や創価学会と個別のパイプがあることで知られているし小池都知事と公明党の関係も良好である。「これを潰した」人たちは公明党を裏切ったことになってしまう。実は二階派にだけ配慮をしているのではないのである。
今回の感染拡大のうち少なくとも都内では高齢者は施設と家庭で感染が拡大していることがすでにわかっている。また、東京では人の流れが止まっていない。実際に止めるべきは無症状の若年層の移動であってGoToトラベルと感染拡大には(あったとしても)弱い相関しかないのかもしれない。また高齢者を隔離するために施設を区分して管理することが可能なのかもしれない。だが、これまでもさんざん統計や資料をないがしろにしてきた政治にはもはやこの問題を冷静に扱えない。
あとは官邸主導で総理大臣が一人悪者にならざるを得ない。自分たちが官邸主導といってきたのだから後始末もしなければならないわけで皮肉な話である。
政治家たちはこれまで結果責任は取ってこなかった。そればかりか支持者たちの機嫌を損ねる意思決定はしたくない。損しそうなことは誰かに押し付けたい。そのために無駄な時間を儀式的に取ることが増えた。苦悩を演出するためにテレビを使って芝居を続けている。
細かい条件闘争をしつつ「苦悩する」芝居を続けているのだがそのことはだんだん支持者にも伝わりつつある。この分では菅総理の支持率はさらに原因のわからないまま下がってゆくだろう。
政治は問題解決の手段であるべきなのだが、どうやら人気取りと自己承認のための舞台になっているようだ。誰も社会に貢献しようとは思わず相手を利用したい人ばかりが群がってくる。
「これは大変な危機である」と気が付いた北海道では人の流れは止まりつつあるようだが、東京は止まっていない。すっかり他人事になっているのだろう。人の流れをもとに機械的に感染者を予測するGoogleのモデルでは東京はかなり多くの数の感染者をだすことになっていて、それが首都圏に拡大する予測になっている。
もちろんこのモデルが直接当たることはないのだろうが首都圏で年末年始の移動を計画している人は情報を適宜アップデートしつつ柔軟に計画を立てたほうがいいと思う。世論調査や感染者数によって数日で状況が変わってしまうこと。これからもこうしたことが度々起こるはずである。自分の身は自分で守るしかない。