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学者の提言やエビデンスがGoToを止められないたった一つの理由は「やさしさ」にある

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学者たちがGoToトラベルを止めるように繰り返し提言をしているのに菅総理が頑なに停止を認めようとしない。この理由について考えた。理由そのものはすぐに見つかった。決め方に問題があるのだ。だがその先にまたわからない問題が出てきた。

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先日、政治とやさしさについてのわかりやすい事例があった。高齢者の医療費負担を増やすという話があったのだ。実際に痛みが出てくるのは当分先なので当座の選挙には影響がない。ここで奇妙なことがあった。

総理大臣と公明党の間に隔たりがあるという。公明党は240万円以上といい政府側は170万円と言っていた。そうこうしているうちに200万円というキリがいい数字で決着した。スケジュールぎりぎりだったのだがおそらく最初からこの数字だったと思う。おそらくは公明党に見せ場を作るための儀式だったからだろう。公明党が頑張って政府を動かしたということにすればそれを選挙に使える。政府はNHKなどを利用して公明党に見せ場を作ってあげたのである。東京新聞は具体的な試算がなくラインが決まったと言っている。

この優しさの副作用というかデメリットは何だろうか。まず、野党から「この根拠を示せ」と言われても説明はできないだろう。そもそも根拠がない。さらに「これを動かせ」と言われても動かせない。240万円にすれば自民党の顔が潰れるし170万円にすれば公明党の立場がなくなる。つまり論理的に決めたのではないから論理的に説明ができないし変更もできない。それでも身内への優しさを優先してしまうのが日本人である。

さらにNHKによると実施時期にも2022年10月から翌2023年3月までの年度後半と幅がある。選挙があることを想定して幅をもたせているのではないかと思う。「負担が上がった直後は反発が高まるが半年くらいで忘れる」と政権は考えているのだろう。

この高齢者の医療負担の話は公明党の宣伝のために行われた疑いがある。宣伝だからこそ新聞にも掲載された。おそらくこれまでも同じようなことは行われていたのだろうが水面下で交渉が行われているのだろう。おそらくGoToキャンペーンもその一つである。決まったことに意味があるのだからあとになって野党が文句を言ったとか専門家が何かを言ったくらいのことで変えるわけにはいかないのだ。政府が説明しなくなったのは実は政権中枢が単独で決められなくなっていたからだということもわかる。

これを定式化すると次のようになる。

  1. 根拠
  2. 意思決定

の順番だと変えられるが

  1. 思惑や落とし所を頭に入れた上での交渉
  2. 意思決定

としてしまうと後から変えられなくなる。

GoToでは誰と誰が交渉しているのかは知らないが、おそらく「決めた人のメンツ」があるためにさらに変えられなくなってしまうのだろう。GoToは国民の命よりも仲間への配慮を優先して決められている。

観察しているとさらに面白いことがわかる。このGoToトラベルを擁護する人が意外と多いのである。最近聞いた無理筋の擁護論は「東京を停止することで実質的に自粛を促す効果がある」いうものだった。【独自】東京、名古屋市も“一時停止”へ 札幌市、大阪市 GoToトラベル停止延長もというニュースを見ると国と地方自治体が思惑含みで綱引きをしているようである。起点が思惑なので見直しの話し合いになるとさらに複雑な思惑が交錯している。だからメッセージなんか発出しようとはしていない。だが擁護派はそう説明せざるを得ない。

だが、一旦意見を決めてしまった人は自分がお気に入りの政策については継続して擁護したくなってしまうようである。日本人は個人としての意見を持つことを禁止されているために他人の意思決定に癒着させて自分の意見を通そうとする。この半集団主義的が目を曇らせる。

実際には次のようなことが起きている。

  1. 落とし所を頭に入れた上での交渉
  2. 意思決定
  3. 後付けの正当化

もはやこうなると誰も何が正しいのかがわからなくなる。

ところがこの後付けの正当化をする人は大抵アンビバレツな心理状態に置かれている。薄々は無理筋の擁護だということがわかっているのである。だからこうした擁護論を繰り返す人には反論しないでそのまま語らせるのがいい。最終的には演歌的な風情を漂わせ「大人には色々あるんだよ察してくれよ」といいだす。

そこで「ふーんそうなんですね」と言ってやればいい。

新型コロナウイルスが蔓延する以前は自我が脆弱な人たちでも思う存分に権力の優しい嘘に耽溺できた。だが、新型コロナでは「政治の成績」が死者数や感染者数となってデイリーで更新されてゆく。もう政治は優しい嘘はつけないのだが一旦始まったかばい合いの文化は破綻するまで続くだろう。

あとはそれを生暖かい目で見つめるだけである。

菅総理の支持率が下がっているのはおそらく説明不足が原因なのではなく国民に自分を肯定してくれるように懇願しているからだろう。安倍総理は根拠のない楽観で「このままで大丈夫」と言い続けていたが菅総理はネットで「私のことを好きになってくれ」と迫ってくる。これがいいようのない暑苦しさの原因になっている。だが菅総理は安倍総理の真似はできない。医療崩壊が現実の可能性とみなされるようになった今「このままで大丈夫」などと言える人は誰もいない。

さらに菅総理は桜を見る会の検察捜査を見逃すことでで安倍総理が持っていた商品価値を破壊してしまった。日本の政治に必要なことだったとはいえ国民の最後の願いを破壊してしまったことになる。国民もまた現実に目を背けて「今のままで大丈夫なはずだ」と思いたかったのだが新型コロナはこれを吹き飛ばしてしまった。

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