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テドロス・アダノム・ゲブレイェスのおかしなおかしな中国びいき

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主に西側先進国が台湾のオブザーバー招致を求める中テドロス・アダノム・ゲブレイェスWHO事務局長が総会に台湾(中華民国)を招かなかったそうだ。AFPは中華人民共和国に配慮したのであろうと言っているが、テドロス・アダノム・ゲブレイェス事務局長は「関係国と協議した」と説明している。

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台湾の締め出しは国際社会の損失だろう。国際協調主義を掲げて問題解決を重視するなら比較的新型コロナをうまくコントロールすることに成功している台湾の智恵と経験は重要な資産になり得るからである。だがテドロス・アダノム・ゲブレイェス事務局長は政治を優先した。

テドロス・アダノム・ゲブレイェス事務局長の説明は日本人が国会に置いて本音と建前を使い分けるのに似ている。極めて非民主主義国的なやり方だ。すでに政治による問題解決を諦めた日本の政治が意思決定できなくなっているように、国際機関での議論も難しくなるだろう。これではトランプ大統領の自国第一主義を結果的に肯定することになってしまう。

WHOは中華人民共和国の「一つの中国」という体面を重要視し新型コロナ対策よりも優先している。もともと中国共産党と国民党の問題は内戦に過ぎない。民主的に統治者を選べず潜在的な反乱の原因を抱える中国では国共内戦の結果を維持することが何よりも大切なのだろうが国際社会には関係のない話だ。

バイデン新大統領は議会政治家なのでこのあたりの複雑さを処理するのに慣れていることを期待したい。早く国際社会に復帰してWHOの正常化に責任を果たして欲しいと思う。トランプ大統領はWTOでも韓国の候補を推しておりWTOは今だに代表が決められない。複雑さに対処できないトランプ大統領は国際協調には極めて邪魔な大統領だった。

では、このテドロス・アダノム・ゲブレイェスの考える政治がどこから来たのか。彼はティグレ人民解放戦線出身の政治家である。

民族差別問題があるエチオピアでは少数民族のティグレが支配民族だったアムハラと組んで政権を維持して来た。その下で虐げられて来たのが多数派のオロモである。だがオロモが政権を握るとアムハラもオロモ側に転じたようだ。一緒になってティグレ州を攻撃しているようである。エチオピアは内戦状態にあり死者も出ている。

エチオピア帝国が崩れたのは1975年なのでエチオピアの民主主義の歴史は極めて浅く成熟していない。エチオピアの政治状況は部族間の連携と裏切りによって決まる。こうした政治的風土を持つエチオピア出身のテドロス・アダノム・ゲブレイェスと中華人民共和国は同じ土壌を持っている。

これは選挙によって政権を選ぶヨーロッパや日本などの民主主義社会のあり方とは全く異なっており内戦で体制を決めた中国に似ている。中華民国は長い間をかけて国民党が政権を失っても政党としては存続している。中華民国が西側と同じ政治体制に移行した一方で中華人民共和国はここを抜けられなかった。

現在の民主主義社会は「社会」が民族や政治集団の上にくるという想定の元に作られている。おそらく部族社会が土地をめぐる争いを繰り返しているエチオピアや中国共産党という集団が国家に優先する中国はこれとは異なる世界観を生きているのだろう。集団主義的な事情を持ち出して中華民国を排除するという「自然な行動」を取ってしまうのである。

こうした非民主主義国が国際社会の一つの勢力になりつつあるということがわかる。残念ながら、これは事実として受け入れなければならないようだ。

では民主主義社会の側が再び説得力を持つためにはどうしたらいいのだろうか。おそらく民主主義社会の方が豊かで幸せな社会であると信じこませるしかない。だがアメリカ合衆国は白人と非白人に別れて「新しい部族社会」に退化しそうな勢いだった。今でも分断が完全に解消されたわけではない。この分断が解決できるかそれとも他の世界のように集団主義の国家体制に移ってしまうのか、政権移行期のアメリカの民主主義は実は今重要な岐路に立たされているのだろう。

問題解決型の民主主義は今極めて危険な状態にある。これが崩れたら崩れたで日本も対応策を探さなければならない。

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