ざっくり解説 時々深掘り

中小企業経営に似て来た自民党の危ない属人人事

ワイドショー的には冷めてしまった話題なのだがQuoraのスペースではいまだに日本学術会議の問題を書いて来る人がいる。共産党陰謀論の一種だ。今回弾かれた6名は杉田和博官房副長官が「一目見て弾いた」のだと説いている。これを読んでいて菅政権が持っている危なさがわかったように思えた。属人管理なのである。

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この主張は「6名が杉田さんが一目見て弾けるほど危ない人たちだった」と推論している。その上で最終的にスパイ防止法がないのがいけないのだと結論づけている。その間の議論が抜けているのだが、おそらくは「学者は中共に支配されている」という頭があるのだろう。

この手の議論はリベラルな人たちから攻撃される。いくつか反論がついた。学者さんをスパイ呼ばわりするのか、証拠はどこにあるのかというわけである。議論は大抵平行線をたどり同じ議論が延々と繰り返される。左右対立は政治議論のブラックホールである。

試しに議論の軸をずらしてみようと思った。一旦この6名をスパイだったと仮定してその危険性を探せばいい。

杉田和博さんという人はもともと警察官僚であり内閣調査室にも携わっていたそうだ。さらに官僚人事選考を一手に引き受けているともいう。安倍内閣・菅内閣の影の要と言っても良いだろう。

中小企業ではよく仕事が一人に集中することがある。安倍内閣・菅内閣では官僚の選抜と管理がある一人の人の手によって属人管理されている。だが杉田さんにはおそらく最終責任者の認識はない。表に出るのは安倍総理であり菅官房長官だったからである。ではこのうち誰が最終的な意思決定をしており誰が最終責任者なのか、というのが次の疑問になる。

杉田さんは影の人なので総理に官房長官に具申するだけである。国会で説明もしないだろう。官房長官もそれを総理に報告する。だが総理大臣は官房長官がそういうならといって一任し、実はその官房長官も杉田さんが決めたことだからと考える。

誰も責任を取らない。集団思考なのだ。集団思考は根拠のない楽観視をうみ、最終的には意思決定を間違える。

よく「総理は説明しない」という話を聞く。実は説明しないのではなくできないのかもしれないと思う。集団思考的な構造ができており「誰かが何とかしてくれるだろう」と考えているからである。責任を感じないし説明もできない。内閣の中に最終判断をしている人が誰もいないという図式である。

もちろん属人管理も集団思考も仮説にしか過ぎない。だが、そう考えて安倍政権のあれこれを見ていると説明できることが多い。嘘をついているなら安倍総理をつつけばいろいろ出て来るはずだが安倍総理は核心になるようなことをご存じないらしい。では官房長官はどうかというと都合の悪いことは何も言わない。その下の人たちは出てきもしない。

傍証もある。「内閣は日本学術会議の推薦にいろいろと文句をつけて来たがどうも一貫性がない」という証言もあった。おそらくは誰かがその場その場の判断をしており後になって説明がつかなくなっているのかもしれない。もちろん非公式のやりとりは記録も残らないから検証もできない。杉田さんには杉田さんの理論があるのかもしれないが集団で共有できなければ単なる気まぐれ人事である。

官僚人事に説明がつかないのだから、おそらく内部の統制はどんどん崩れて行くだろう。総理大臣に擦り寄る人も出て来るのだろうがおそらく不満を持つ人たちの方が多くなるはずである。外国の情報当局がそんなガタガタの組織に大切な秘密を打ち明けるとは思えない。スパイ防止法の目的は機密の保持である。機密の保持の前提は組織として一貫性があり機密が守られることである。だから属人管理と集団思考に冒された組織にはおそらくそれができないだろう。

この筋でコメントを書いたのだが一言「官僚組織は人材育成に優れたノウハウを持っているから大丈夫なのだ」という自信満々なコメントが戻ってきた。おそらく大船に乗ったつもりで集団思考に陥ってしまっているのだろう。おそらくその後も延々と左右陣営に別れた中傷合戦が繰り広げられるはずである。

「これで自民党政権も長くはないのだろうな」という予測を立てて見たのだが、それはそれで外れるかもしれない。岸田文雄さんが得意の外交力を頼りに本を出版したというニュースを見た。非核と平和国家を目指すそうだ。さらに長島昭久議員のグループが政府に提言書を提出した。バックグラウンドを見ると大前研一傘下が二人いて留学経験者も三人いる。長島さんはその交点になっている。かなりアメリカの影響を受けた人たちのようであるが給付金というキャッチーな提案を入れたのは良かった。麻生財務大臣に認知され否定してもらえたのだから大成功だろう。スルーはされなかったわけである。

つまり菅政権はおそらく行き詰まるがそのあとのバックアップになるような人たちは控えているということになる。彼らの言い分がそのまま通ることはないのかもしれないのだが層が厚いこと自体はいいことである。

菅政権がひどければひどいほど次の人たちは出てきやすくなる。つまり菅政権のミッションは属人的な管理で人事や経済に直接介入すると失敗するということをわかりやすく示すことなのかもしれない。

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