ついに科学的に証明された
かなり経験的に書いたのだが、ついにボーダーは細く見えるという研究結果が発表されたようだ。
まとめ
- ボーダーのシャツは縦長に見せる効果があり、背が高く見える。これはヘルムホルツ錯視といわれる。
- しかし、太った人が着るとお腹のふくらみが強調され逆効果だ。
- また、背が高い人がこのテクニックを使うと、却って不自然に見えるだろう。
- この他にも縦長に見せるテクニックはいくつかある。例えばミュラー・リヤー錯視などが有名だ。Vゾーンを強調したり、Yの形を作るとよい。
- 洋服が部品化しているので、アイテムやブランドに惑わされず全体を揃えよう。
背を高く見せるためには横縞のシャツ
さて、背を高く見せたいときに、縦縞のTシャツと横縞のTシャツ、どちらを着ればいいのだろうか。服だけを見ると、横縞は横のラインを強調して太って見えると思うかもしれない。一方、縦縞は縦の線が強調される。だが、これは間違っている。
答えは単純。背を高く見せる為には、縦のラインを強調する横縞のシャツを着るべきなのである。理由はいくつかある。
左の図には2つの縞があり、縦縞は横に長く(つまり太って)見える。これをヘルムホルツ錯視と呼ぶ。これををハードウェア(つまり網膜の動き)からは説明できない。脳の学習の結果、錯覚が生じるとされている。いわばソフトウェアの不具合なのだが、なぜこうした違いが生まれるのかはよく分かっていないそうだ。
次にこのコーディネートではパンツからボーダーのシャツまでひとつながりの流れが作られているのがわかる。すると縦の線が強調され、背が高くまとまって見えるのだ。服は全体を構成している。
ただし、ストライプには体の線を際立たせる効果がある。太ってお腹が出ている人が横ストライプのTシャツを着るとふくらみが強調される。このふくらみは横縞の方がより強調されるから、太ったお腹を隠したい人は、横縞のTシャツを着ない方が良い。
だからといって、全体を横縞模様にしても、背が高くは見えない。人間の体は縦に長い長方形だ。長方形では縦ラインを作った方がすっきり見える。つまり正方形のように「一瞬どちらが長いかが分からない」場合には、ヘルムホルム錯視が成立するのだが、明らかに長さが違っている場合には、流れの方が強調されるのである。いずれにせよコーディネートは重要だ。
その他の錯視で縦長ラインを作るには
コーディネートで使える錯視はこれだけではない。ミュラー・リヤーと呼ばれる別の錯視もある。横棒の付き方によって長さが違って見えるという錯視だ。長さや角度によって効果に違いあるそうだ。時々、セーターやシャツの模様としてY型のラインが付いているものがあるが、これはミュラー・リヤー錯視を利用したものだ。このように錯視はデザインの一部として様々に利用されている。
視覚効果を学ぶには
コーディネートを勉強する上で視覚効果を知るのは重要だ。『錯覚の世界 – 古典からCG画像まで』のように錯視を扱った本も出ている。また錯視を特集したウェブサイトもあり、どのような基本的なテクニックがあるかは簡単に調べる事ができる。
ファストファッション全盛だからこそ、テクニックが重要
背を高く見せるテクニックにはいろいろなものがあるが、そもそもこうしたテクニックが必要とされるのはなぜなのだろうか。
かつて、こうしたテクニックは大した意味を持たなかった。例えば、「スーツそのもののシルエット」は選べなかった。かつて、バブルの時代にはみんなゆったり目のスーツを着ていた。今では「なんとなくヘン」な格好だが、当時疑いを持つ人は多くなかったのだ。
ところが、消費者がそれぞれ好きな形を選んで服を着るようになると、さまざまな要素の中から、自分にあった服を選ぶ必要が出てくる。加えて、最近の洋服は体の線を出すようにデザインされているものが多い。こうした背景から、最近のファッション雑誌の中には、錯視などのグラフィック要素を使って体型の補正の仕方を取り上げたものが出始めている。
伝統的なファッション雑誌は、製品に合わせてモデルの体型を変えている。パンツの形をきれいに見せたい場合、足の長いモデルを使うといった具合だ。だから、ファッション雑誌を真似しても「期待通りに見えない」といったことが起こる。
Tシャツの特集などでは、それぞれ体型が異なったモデルが、めまぐるしく変わるいろいろな模様のTシャツを着ている。見ている側は、統一的なルールが分からなくなり「ああ、きれいだな」とか「このモデルたちは格好いいなあ」と思って終わりになる。洋服屋に行っても錯視について知っている店員は少ないので、どんなTシャツに体型を補整する効果があるかどうかは良くわからない。一方、新しいファッション雑誌は、できるだけ読者層に近い体型のモデルを使うようだ。出来上がりが予想できるので、失敗が少ないといえるだろう。
アイテムやブランドに惑わされず、全体を揃えよう
錯視といっても、それをどこの部分にどれくらい使うかによって効果が異なる。つまり、さまざまな錯視を網羅しただけでは、的確なコーディネートは作れない。部分ではなく、全体が大切だということになる。また、幾何学模様は完璧でも、色がバラバラだったり、素材感がめちゃくちゃだったりすると、やはりファッションコーディネートとしては使い物にはならない。部品にだけ着目せず全体を意識するのが重要だ。